Ep.39
【エレサエムの花】
婚約者とその浮気相手に嵌められ冤罪をかけられ、死刑を言い渡されてしまった女主人公。彼女は両親や親友の協力を得て処刑が行われる前に逃げる事が出来た。しかし罪人な事に変わり無く、彼女の処刑を担当する執行人自らが女主人公を追ってきて…
しかし後に2人の関係は罪人と死刑執行人ではなくなり…愛し合う関係に…
バイオレンスと甘い恋愛を描いた娯楽小説…との事。
内容を聞いてもアルテには響かなかった。対するキャロラインや令嬢達はキャー!キャー!と盛り上がってる。
「はぁ~『カーフィス(死刑執行人)』が『エレサ(女主人公)』に惚れるシーンは堪りませんわ!」
「その後の2人の──」
「キャー!!」
…過激な表現とはバイオレンスなシーンだけでなく、そっち系のシーンも含めてるようだ。
…あくまでも娯楽小説なので深く考えてはいけない…
「しかし、死刑執行人と冤罪をかけられた罪人の恋愛物語だなんてよく思いつきますわね」
「この本を書いた方は少し変わった組み合わせの恋愛を書くのが得意みたいですよ」
「もしや!それは死神と天使の恋愛物語を書いた御方では!?」
「はい!その方ですよ!
これまた変わった組み合わせだな…天使と悪魔のような王道じゃつまらない、だから悪魔ではなく死神と天使の恋愛なのか…。
…ここでも【王道】がありきたりでつまらないから受けないのがわかる…。
今彼女達が盛り上がってるその死刑執行人と罪人の恋もかなり捻られてる。確かに冤罪をかけられた女主人公の物語はそれなりにあるが、死刑執行人自らが追い恋に落ちる物語は聞いたこと無い。
よくある話ならそこは執行人ではなく騎士や元婚約者の弟や兄とか…
…ありきたりはつまらない、だから普通では思い付かない、考えられない内容にするのだろう…これは作家も大変だな。
★☆★
アルテだけが小説の話題について行けてなかった。悲しいことに、彼女らの感想を聞いてもアルテの心には響かなかった…
「最初は殺す気満々だったカーフィスがエレサに惚れて己の役目と心に葛藤するシーンは読んでるこっちの胸が締め付けられましたわ…」
「ワタシはもうそのシーンの後、告白するシーンで大号泣ですわ」
「でも甘い恋愛物語だけでなく、エレサに冤罪をかけたクズ男と愛人が断罪されてスカッとしました」
「わたくしもそのシーンは好きよ」
「まぁキャロライン様もですか!」
もうお茶会ではなく読書感想会のような空気になっていた。アルテを除いてほぼ全員が同じ話題で盛り上がってた。
これは勉強ばかりして流行を取り入れなかったアルテが悪い。
…罪人と死刑執行人の恋愛と聞いて…思うことが有った…
「(殺される側が殺す側に惚れるって有なの!?)」
現に殺される側…冤罪をかけられた女主人公と似た立場にいるアルテにはとても信じられない話だった。
…普通なら絶対あり得ない!普通なら死にたくない一心で相手から逃げ続けるはずだ。
相手に惚れるなどまずあり得ない
しかし娯楽小説とはそういう物だ。
【非現実的】だからこそ人々に受けこのように話題になる。
しかし多くの作家がその【非現実的】な話を書けばそれは後に【王道】の一種になる。難しい世界だ…
だが…夢見るのは良いが…現実は小説のように甘くも優しくない…待ってるのは残酷な現実だけ。
バイオレンスな恋愛など小説の中だからそう描かれてるだけ、現実は違う。
アルテなんか婚約者の皮を被った死刑執行人で死神に「卒業時に殺す」と宣言され、強制的に未来を奪われた…更には第三者が雇った(新人)暗殺者に殺されかけた始末…災難過ぎる…
だから現在進行形で自分のやりたい事を全部やってるのだ…
アルテは遠い目をしながら紅茶と菓子を口にした。
△▼△▼
「失礼、流行の話で盛り上がってしまって忘れてしまいましたわ」
キャロラインは咳払いをして真剣な表情になって口を開いた。周りの令嬢達も真剣な表情になって聞いた。
「わたくし、ライフォード皇太子殿下の婚約者候補を降り、オーティス皇子殿下の婚約者候補に立候補いたしました」
「「……えぇ!?!?」」
「!?」
沈黙の後、彼女の発言を理解したこの場にいた全員が驚いた反応をした。
一番最初に言うべきだっただろ…状況が状況だったし、言う気にも慣れなかったのだろう。
「…(あんなに「婚約者候補のわたくしを差し置くなんて!」とか言ってたのに降りちゃったんだ…)」
二学期が始まった頃は威嚇する猫のように敵意剥き出しだったキャロラインが…あんなに想いを向けていたライフォードの婚約者候補を自ら降りてしまうとは…
…聖女でもあるシンシアしか頭にない男なら自ら降りた方がマシか
「数ヶ月後…2学年に上がった頃に行われるデビュタントにて殿下は婚約者を発表するでしょう。正直な話…このまま婚約者に選ばれても殿下と未来を築ける気が1ミリもしないのです…
皇帝陛下、皇后陛下と何度か話をした結果、皇太子殿下の婚約者候補を降り、オーティス皇子殿下の婚約者候補になる事にしました。」
「な、なるほど~」
これ以上何を言えば良いのか正しいのかわからない…
…キャロラインは未来を見据えてライフォードの婚約者候補を降りる事を選んだ…。
未来が無いアルテとは対照的に…キャロラインは未来が有る、だからこそ考えたり選ぶ事が出来る…
「(羨ましいなぁ…)」
アルテの心に大きな穴が開いた気がした…
時刻は午前10時過ぎ、ソルファージュ邸でのお茶会は続く…
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