Ep.31
「何故ここにいる」
同じことを言おうとしたが、先に口を開いたのはロイドだった。アルテは淡々と答えた。
「私用です」
「ソレは見せしめか?オレが言ったから見せつけてるのか?」
「ロイド!」
アルテが何かをすればこのように突っ掛かってくる…私用だと言っただろ。エフィニアはロイドの失言を指摘した、しかしロイドは反省する素振りが無い。
「私用と言ったでしょ」
「っ…」
しかしアルテは強い、どんなに馬鹿にされたり侮辱されても己を貫く。
「元々切る予定だった、でも時間が取れなくて今日になっただけ」
「ぐっ…」
アルテが大人しく「はい、そうです」と言うと思ったら大間違いだ。
チラリとエフィニアを見ると、短くなった黒髪に少し驚いていた。数時間前まではそれなりに長かった髪…ニーナも掴めないだろう。
「アルテ様、よろしければ共に時間を過ごしませんか?」
「なっ!エフィ!?」
ロイドは妻の発言に驚いた。アルテは…答えられなかった、昨日「娘に近づくな」と忠告されたばかりなのに…それを知らないエフィニアは続ける。
「良いじゃないロイド、貴方も仕事に戻るべきよ。ここまでありがとうね」
「っ…だ、ダメだ!エフィ、コイツを隣には居させられない!危険だ!」
「何が危険なの?」
「コイツは厄災をもたらす存在だ!」
「……」
そんな宣言するように叫ばなくても…
やり取りを見ていた周囲の人々全員がアルテを見てヒソヒソと話し出した。
…ロイドにとってアルテは妹ではなく、厄災をもたらす黒蝶でしかないのだ…。しかし実際はそれっぽい見た目を、容姿をして生まれただけの信託とは関係ない人間。それを知らないのか…もしくは両親から言われても信じなかったのか…
生きてる間…和解は無理そうだ。何を言ってもロイドにも、ルイスにも言葉は届かないだろうから。
何処に行っても自分の立場は変わらない、学園だろうが家だろうが、何も変わらないのだ…唯一味方になってくれそうなエフィニアも、ロイドによってアルテに近づく事も出来ない。
それは味方が居ないのと同じ…それなら1人で過ごすのが良い。
「ありがとうございます お義姉様、しかし時間を奪わせる訳にもいきませんので。失礼します」
「待って!アルテ様!」
アルテは頭を下げて速やかに3人から離れて行った。エフィニアが呼ぶのが聞こえるが、母子を笑い者にさせる訳にも行かせない。無視して離れたのだった。
▼△▼△
アルテが去った後、やり取りを見ていた人々も散って行った。
「エフィ…」
「ロイド、どうしてあんな事を言ったの!あれじゃまるで見せしめよ!」
「だが!」
「貴方はアルテ様の何を見て言ってるの!!貴方は信託しか見てない!彼女を見てないわ!」
「っ!!」
妻に痛い所を突かれたのかロイドの顔が険しくなった。
彼女の言う通り…ロイドはアルテを信託の黒蝶としか見てない。意外にもアルテを悪女とは見ていない…
「貴方は仕事に戻るべきよ、ワタシ達は大丈夫だから」
「……」
アルテと衝突?したことにより、3人は目立ってる。エフィニアは娘を抱き直し、微笑んで夫に言った。ロイドは…従うしか無かった。
何故エフィニアとニーナと共にロイドが帝都に居たかと言うと、屋敷にいたエフィニアがロイドの忘れ物を見つけたのだ。屋敷の馬車は使わなかったようだ
彼の仕事場に届けた後、ロイドが帝都まで送ると言ったから仕事中なはずのロイドが帝都に居たのだ。
★☆★☆
今更だが、実はアルテを貶す者達には大きく分けて3種類程いる。
1つはロイドのように『彩雪と黒蝶の信託』の【黒蝶】としか見てない者。
2つ目は何者かが広げてる【悪女】なアルテの情報を鵜呑みした者達…
そして最後は、この2つのどちらも、【黒蝶=悪女アルテ】と思ってる者達。
…どれも悪役令嬢のような容姿をしてるのが原因だ。しかしアルテも好きでこの姿で生まれた訳じゃない。
実のところ、この世界に黒髪の人間は多い。しかしアルテは深紅の瞳をしてるから…尚更 娯楽小説の【悪役令嬢】にそっくりなのだ…だから悪女だと思われてしまってる。
学園の生徒達は3つ目がほとんど、これについては学園内に彩雪の聖女シンシアも居るので尚更…。皇太子ライフォードのように見た目だけでアルテを毛嫌う、嫌う生徒が多い。
しかし、中には下手に彼女に攻撃できない者達もいる。アルテは伯爵令嬢、伯爵より下の子爵、男爵、平民は彼女に攻撃は出来ない。出来ても周りと一緒になって悪口、陰口を言う…一番たちが悪い存在だ。
兄弟には妹と、1人の人間と見られない…婚約者には処刑宣告されてる始末…悪女なアルテの噂を作り広げてる元凶を見つけて問い詰めたいが時間が足りない。
アルテに出来るのは…絶対に偽りの情報を受け入れず、自分を貫いて、自分の好きなように生きていくだけ…
誰にも邪魔させない、否定させない…アルテの意思は硬かった。悪事は一切やってないのだから
最後までありがとうございました。
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