Ep.30
夜の9時頃、アルテはロイドに見つからないよう時間を調整して入浴をしていた。
「……」
アルテに仕える使用人はいないので自分でやるしかない。
彼女は己の髪を見た特別長くは無いが短くも無い。束ねればニーナが掴む事は無かっただろう、これは自分の落ち度だ。
「結べなくは無いね…染める事が出来たら良いんだけどね」
黒髪の上から染めるのは簡単、でも勝つのは黒。また色抜きをして髪染めをしても黒髪は生えてくる
しかしいざ染めたり髪を短くしたらまた変な噂が広がるだけ、やれ失恋した、やれ誰かの真似をしただの…なにかする度に噂が生まれる。
アルテは入浴を終え、速やかに自室に戻った。
風魔法で髪を乾かしてから椅子に座り勉強を再開させた。
その時、扉を叩かれた。こんな時間に来る人間なんて1人しかいない…アルテに敵意を向ける男、兄ロイドだ。
「開いてますよ」
「……」
ロイドは冷たい目でアルテを見る。仮にも血の繋がってる妹だぞ…。いや、きっと妹とは思ってないだろう。
「これ以上娘に近づくな」
「……」
彼はアルテを睨みながらそう言った。彼女から近付いた訳では無いのに…娘を守りたい気持ちはわからなくもない、でもだからと言ってやって無いことをやったと決めつけて忠告するのはどうかと思うぞ
アルテがニーナに近付いたんじゃない、ニーナがアルテに興味を持って懐いたのだ。
「わかりました」
「それと、エフィにも近づくな。お前に幸せを壊されたくないからな」
「(気持ちはわからなくもないよ…見た目が厄災をもたらす黒蝶だからね)」
「それと、その汚らわしいモノをニーナに触らせるな。髪を切ろ」
「わかりました(これで何か言われたらアンタのせいだからね!)」
ロイドは言うだけ言ってバンッ!と乱暴に扉を閉めて去って言った。
アルテは怒りを我慢しながらベットに横になり眠った。
△▼△▼
翌日 午前8時
ロイドは既に仕事に行ったようだ、ホールに行くとエフィニアとニーナがいた。
「おはようございます、アルテ様」
「おはようございますお義姉様」
エフィニアはニーナにパン粥を食べさせていた。嫌がらず笑顔で食べる赤ん坊…可愛い
「良い子ね、フフッ」
「ん~」
エフィニアは初めての子守りのはずなのに手慣れた手付きでニーナに食事を与える。
「随分と慣れてますね…」
「実は赤ちゃんの相手はニーナが初めてではないのです。数年前、従姉妹に子供が生まれ、その時に従姉妹の手伝いをしながら伯母様に色々教わったのです」
「なるほど、そうでしたか」
それなら納得だ。
相当細かく教えられたのだろう。赤ん坊に与えてはいけない食べ物、してはいけない抱き方、赤ん坊が落ち着く抱き方等を手伝いをながら学んだ。
それもエフィニアがアルテと同じ年の頃、15歳頃に子供の育て方を学んだそうだ…
「まぁどちらかと言ったら、学んだと言うよりは自分からお手伝いをしたいと言って学んだのですけどね」
エフィニアはニーナの口回りをナプキンで優しく拭い微笑んでそう言った。
「ん~!あぶ!」
「はいはい」
ニーナはまだ足りないと母親に訴えるように泣く。エフィニアは笑ってスプーンを掬う。ニーナはご機嫌に笑う
2人の時間を邪魔する訳にはいかないのでアルテは朝食を食べ終え席を立った。
「では失礼します、お義姉様、ニーナ」
「はい、また後で」
「エヘヘ」
エフィニアは微笑み、ニーナはご機嫌に笑った。
★☆★☆★
アルテは身支度をして屋敷を出た。馬車に乗り帝都に向かった。
別にロイドに言われたから切るのではなく、元々切るつもりだった。学園にいた時から「近い内切ろうかな」と思っていた、痛んでボロボロな令嬢としてどうかと思われる状態、しかし監視やシンシア達に絡まれて自分の時間が作れず結局冬休みになってしまった。
行きつけのサロンを訪れ、髪を短くして欲しいと頼みカットをしてもらった。
元は肩くらいまでの長さ、首までの長さしてもらう。短い方が動きやすいし、真っ黒で長いと重く見える。アルテはドレスよりも動きやすい服装を好むので短い方が似合う。
しかし令嬢としてダメ、髪は女の命で結婚にも鋭気するとかどうとか…そんな古くさい仕来たりは今も残ってる。
2時間後、アルテの髪は短くなっていた。悪女と噂なアルテといえ、スタイリストは悪さをせず丁寧に、真剣に対応した。髪は艶があり短いが品がある、令嬢てしての雰囲気を壊していなかった。そして支払額もぼったくる事もなく、ちゃんとした金額だった。
悪女アルテといえ、彼女は伯爵令嬢…スタイリスト達より立場は上、変な事は出来ないだろう。
アルテは礼を言って店を出て行った。
時刻は午前10時過ぎ、帝都を歩いてると騎士の制服を着たロイドとエフィニアとニーナと鉢合わせた。
ロイドは嫌そうな顔をした、対するエフィニアは微笑み、ニーナはアルテを見てキャッキャッと笑った。
仕事中のロイドが何故2人といるのだろう…
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