Ep.2
遡ること2ヶ月前 4月
アルテは15歳、この日は学園の入学式兼入会式が行われる。生徒は全員が寮で暮らす事になってる。
程よく冷遇され、程よく大切に扱われて育ったアルテは両親に「問題を起こすな」や「何かあったら自分達ではなく教団を頼れ」と言って金貨の入った小包を渡した。
問題を起こしても自分達は助けない、自分で対処するか教団に頼めって事か
そんな事を言ってる割には見送りをしてくれてる両親…優しいのか冷たいのか
その後、少ない荷物を運び終えたアルテは馬車でメルデナ修道院に向かった。
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メルデナ修道院に着き、荷物を持って降りると御者は速やかに去って行った。
アルテは黙々と荷物を運び寮に向かって手続きをした。
寮母もアルテの名前を見て眉をしかめたが、手短に答え早く去れと言うように鍵を渡した。
アルテに与えられた部屋は聖堂に近い位置にある角部屋、おまけに1人部屋だ。シンシアも近い位置にある1人部屋、セシリア教団が監視もする為に聖堂に近い位置にさせたのだろう。
この寮の裏口は聖堂に繋がる道がある。夜な夜なお祈りがしたい生徒もいるだろうと、セシリア教団からの指示で作られた通路らしい。
非常階段も近い位置にあるが、頻繁に使ったら怪しまれるだろう。
荷造りを終え、荒らされるのを防ぐために鍵を閉めて制服の懐のポケットにしまった。
そしてそのまま聖堂に向かった。入学式兼入会式は聖堂で行われる。自分達はこれから生徒兼修道士(女)だ。相応しくない行いは気を付けなくては…すぐ近くに神とこの国の第二のトップが見ているから…
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聖堂に向かうとまだ誰も来ていない。皆手続きに手こずってるようだ。
アルテは席に着いて辺りを見渡した。神秘的で幻想的な空間…生徒は彼女1人だが、既に教徒達兼教師達は待機していた。
その時、アルテがステンドグラスを見てる時 隣から声をかけられた。
「アルテ=レクイエデさんですか?」
「!…そうですが」
アルテは声をかけられ、一瞬驚いたがすぐに真面目な顔に戻った。彼女に話しかけたのは周りの教徒達よりも豪華な服と装飾を身に付けた中性的な顔立ちをした男性だった。
「ワタシはセシリア教団 大司教補佐をしている『エレタージュ』と申します」
「大司教補佐…えっと、アルテ=レクイエデです。レクイエデ伯爵家の者です」
アルテが改めて名乗るとエレタージュと名乗った男は笑った。
「式までまだ時間があります。ちょっとだけワタシとお話しませか?」
「話すも何も…私、セシリア教団について何も知りませんし」
「フフッ そう考えなくても大丈夫です。簡単なお話ですよ。
入学式の後、大司教様がアルテさんを呼ぶでしょう…いや呼びます。式が終わりましたらワタシが再び声をかけるので着いてきてください」
「(事前に伝えておくってことを言いに来てくれたんだ)わかりました」
アルテが思ってたよりも難しくない話だった。確かに式が終わった後いきなり声をかけられたら周りに目立つし変に見られる。だから事前に呼ぶよと伝えてくれたのだ。
「人混みに紛れて呼びますので、目立つ事は無いでしょう。
また式の後、教室にて学園生活に関する話や授業等に関しての話がされると思います。その時にも説明されるのですが、大司教様やワタシ等の教団の者と共にいる時間帯は公欠になり、欠席にはなりませんのでご安心を」
それはありがたい話だ。普通の学園ならうるさいだろうが、ここは皇帝によって作られたがセシリア教団の監視と協力があってこそ成り立ってる学園兼修道院。教団側が優先されるのは当然だ。
彼と話を終えた頃、続々と新入生が入ってきた。エレタージュはニコリと笑い、また後ほどと言って去って行った。
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既に席に座ってるアルテを見て皆が怯えたり、初めて会ったにも関わらず睨み付けてきた。これでもアルテが本当に物語に出てくるような悪役令嬢だったら騒ぎになってたぞ
でもアルテは見た目だけの悪役令嬢、絶対周りの思い通りにならないし、自ら暴れ騒ぎを起こす事は無い。
それに、父はアルテが1人で生きていけるよう講師を呼び剣術や体術、更には魔法術の基礎を習わせた。大切にしてるのか見捨てる気満々なのか…相変わらずわからない人だ。
だから暴力を振るわれても避けたり防ぐ事も出来る。
そんな事を考えてると、聖堂が騒がしくなった。
アルテが入り口を見ると、そこにはこの国の皇太子『ライフォード』とプラチナブロンドの髪に翠眼をした美しく女子生徒…彩雪の聖女でもある『シンシア=ラ=ウィステリア』が彼の手を取って入ってきた。
アルテはどうでも良さそうな表情をしてその光景を見ていた。
遠い目をして見ていると、アルテはそんな気は無かったのだが、シンシアと目が合った。
本当に偶然だ、何ならシンシアの方がアルテが見る前から凝視し、何時目が合っても良いようにしていた…。
この時は何の反応は無かった。隣にいるライフォードも2人が目が合ってしまった事に気付いて居なかった。
2人は席について前を見た。アルテからはかなり離れてる位置にいる、だからアルテが2人の方を向かない限り再び目が合うことは無い。
式が始まるまで、シンシアが再びアルテを凝視していた事に…アルテは気付かなかった。
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