Ep.27
アルテは鞄を持って降り、御者に金貨を払った。馬車は帝都に帰って行った
玄関の扉を明け中に入る、相変わらず出迎えは無し。これが何時も通りだ
彼女は自室に鞄を置き、そのまま父の執務室に向かった。
しかしそこには父ルアンの姿は無く、母エナリアが席に座って執事長と仕事をしていた。
2人は扉を開けたアルテを見て驚いた顔をした。
「ア、アルテ!?お、お帰りなさい? どうして此処に?」
「ただいま戻りました。数日 滞在しますので」
彼女はそれだけ言って扉を閉めようとしたが、エナリアが急いで止めた。ドレスを着てるのによく素早く動けるな
「ま、待って!行かないで!」
「仕事の邪魔になるでしょう、私は自室にいます」
アルテは母の手を軽く弾き執務室を出た。
今更 無償の愛を注がなくて良い、何時ものように程よく冷遇し程よく愛してくれれば良い…アルテには今までの対応の方が気が楽だから
使用人の横を通りすぎても彼女らはアルテに挨拶はしない。でも廊下の隅に立ち頭は下げる。最低限の対応はしてくれる、それで良い。
まだ午前10時、兄達は仕事に行ってるので屋敷には居ないようだ。
何事もなく自室に戻り鞄を開けた。
冬休みの間、パーティーやお茶会が開かれる事がある。幸いにもドレスやアクセサリーは最低限のモノが有るから問題は無い。
また学園に通ってる貴族達のデビュタントは2年生に上級した時(5月)に学園で開かれる。必ず2年時の5月に行われる、その時には1年生が全員16歳になってるから…らしい。
これまでより豪華なデビュタントになりそうだ、皇太子ライフォードが成人(16歳)するのだから…
また来年には第二皇子が帰ってくる、または入学するかもと言われてる
何も起きなければ良いが…
▼△▼△
数時間後、午後3時過ぎ
自室で好きなように過ごしてると廊下を走る使用人達の足音と声が聞こえた。
「急いで!」
「こんなの予定に有ったかしら!?」
「今は準備するしかない!」
「??」
なにやら騒がしい、アルテは外に出ても恥ずかしくない格好をして部屋を出て彼女らの後を追った。
2階からそっと覗くと…玄関に金髪の男性とピンクブロンドの髪をした女性が立っていた。また彼女の腕の中で小さな存在がモゾモゾと動いていた…
「お帰りなさいませロイド様、『エフィニア』様」
「まさかお帰りになられるとは…こちらに」
「ただいま戻った、出迎えありがとう」
「急に訪れてごめんなさい」
「何を言いますか!さぁ、どうぞ」
使用人と執事長、メイド長が丁寧に対応してる。アルテの出迎えとは正反対だ。
「……」
アルテはゆっくりと出した顔を戻し、見つかる前に自室に戻った。
使用人達の態度に腹立たしいが、どうでも良い。それよりもロイドに、兄に見つかったら面倒だ。まさか妻と子供を連れて帰ってくるとは思って無かった。
「結婚したとは言ってたけど、子供が生まれたとは…(…私には知らせないか)」
1人納得したアルテは勉強に戻り机と教科書に向き合った。
勉強してれば時間を忘れられる…たとえ無駄な事だとしても…
★☆★☆
午後6時過ぎ 誰かが扉を叩いた。
「開いてるわよ」
彼女はペンを止めず、教科書から目を離さずに言った。
しばらくすると執事長が入って来た。
「夕食の準備が出来ました。ダイニングホールにご案内します」
「わかった…今行く」
アルテは立ち上がり手を清めてからダイニングホールに向かった。
執事長の後ろを歩いてると、彼がアルテに話しかけた。
「旦那様と奥様、ロイド様のご家族、そしてルイス様がお待ちです」
「(やっぱり居るよね…面倒だなぁ)そう…」
「『ニーナ』様に危害を加えぬように」
「(ニーナ?…さっき見た赤ちゃんの名前かな?)」
名前すら教えてもらってないアルテには『ニーナ』が誰なのかはわからない。執事長の言い方から、ロイドの妻エフィニアが抱えていた赤ん坊の事だろう。
それ以上会話が続く事はなく、アルテはダイニングホールにやって来た。
入ると既にアルテ以外の家族が席に着いていた。ここに居た全員が入って来たアルテを見た。家族も使用人も…
「席に着きなさい」
「はい」
アルテはそのままルイスの隣の席に座った。アルテの正面には小さな席に座った赤ん坊が居た。首は座ってるようだ、何時生まれたのだろう…
その赤ん坊の隣にはエフィニアが座っていた。
「ん~」
「はいはい、どうしたの?」
隣に座る母に声をかけるように声を出す赤ん坊、アルテを危険人物とは感じて無いようだ。声を出したのも偶然だろう
アルテが席に着くと父ルアンが声を発した。同時に料理が運ばれてきた
「では頂こう」
こうしてレクイエデ伯爵家の食事が始まった。食事が始まったのと同時に…兄達はアルテを睨み付けたのだった。
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