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Ep.1

 メルデナ修道院は今日も生徒で賑わってる。しかしある人物の登場で賑やかな空間は一変し、ざわつきに変わった。


 黒い髪に紅い瞳をした女子生徒が廊下を歩いている。周りの目は憧れや期待の目ではなく、正反対の怒りと憎しみ、負の感情で満ちた瞳だった。

 しかし向けられてる本人は全く気にせず歩いていた。


 彼女の名は『アルテ=レクイエデ』伯爵令嬢。美しい黒髪に深紅の瞳、この世の者ではないような容姿をした修道女兼生徒だ。背もあまり高くないし胸も無い。物語に登場する妖艶な悪女、悪役令嬢とは容姿が似てるが身体は全く違う。そんな彼女の目は曇っておらず、真剣な表情ので前を見ていた。


「レクイエデさんだわ」ヒソヒソ

「相変わらず怖い人」ヒソヒソ

「黒蝶なんだよな?からかってみるか?」

「バカ!止めとけ!何をされるかわかんねぇぞ」


 どうしてこんな事に、彼女は見た目は悪役令嬢そのものだが、これまで悪さは一切してない。しかしこれを言ったところで誰も信じないだろう。


 周りからの陰口すら気にせず歩くアルテ。その時、正面からプラチナブロンドの髪に翠の瞳をした女子生徒と金髪に紫色の瞳をした男子生徒が歩いてきた。彼女は男子生徒の腕に抱きついて歩いてる。

 そして彼らも目の前からアルテが来たと気付くと、男子生徒と彼女を睨み付け、女子生徒は()()()ような顔をした。


 しかし2人の横を通り過ぎたアルテは何もしなかった。でも周りはやれ足を踏んだ、やれ舌打ちをした等…してもない事を言う。


 これは帝国に下された神託に巻き込まれた者達の物語。


 今から15年前、帝国に2人の子供が生まれた。1人はアルテ、もう1人は先程アルテとすれ違った女子生徒『シンシア=ラ=ウィステリア』。


 生まれた家は違うが、2人の誕生は国に大きな影響与えた。

 彼女らが生まれる直前、新たな神託が下されたそうだ。これまで全く動きがなかった『彩雪(さいせつ)黒蝶(こくちょう)の神託』だが、突如 皇帝と大司教の元に『神託を受けた2人が生まれる』と告げられた…。その言葉の後、アルテとシンシアが生まれた。


 この国を滅ぼす厄災をもたらす黒蝶、国に祝福をもたらす救済の象徴である彩雪…

 それを意味するかのような容姿を持って2人は誕生した。

 アルテはレクイエデ伯爵家、シンシアは平民の生まれ。


 当然、帝国の全ての民に神託は知られてる。そるによりアルテはレクイエデ伯爵家の者ではあるが冷遇に近い扱いを受けて育った。

 暴力を振るわれたり食事を抜かれたりは無かった。ただ居ない者と扱われていた…正確に言えば誰も彼女と話そうとしなかった。

 両親や祖父母、兄達は最低限の会話はしてくれる。しかし会話が続く事はない。


 要するに災いをもたらす存在かもしれない子に最低限の衣食住は与えていたのだ。彼女が本が欲しいと言えば無視するか「役に立たないだろ」と答えるが、アルテが居ない時間に用意して部屋に置いてくれる…最低限の衣食住と必要なモノは与えていたのだ。


 粗末に扱えば一番最初に狙われる…そう思っての行動なのだろう。

 兄達に至っては最初は嫌がらせでゴミを投げたり動物の死体を部屋に置く等の嫌がらせをしてきたが、後にそれはしなくなった。両親が止めるよう言ったのだろう。


 程よく冷遇され、程よく大切に扱われたのが正しかったのか、アルテがグレたり物語の悪役令嬢のようにはならなかった。

 ある意味この育て方が正解だったのだろう。無償の愛を注ぎ過ぎれば我が儘娘に、冷遇すれば性格がねじ曲がった面倒な悪女になっていた…

 悪女を生み出さない為に注目しなくてはいけないのは環境なのだろう。


 対する彩雪の神託を受けたシンシアだが、生まれたのは平民の家。貧しくも豊かでもない…ごく普通の家で生まれ育った。アルテと違い、両親や周りから沢山の愛情を注がれて育った。彼女の周りには多くの人間がいて、多くの味方がいた。

 そしてシンシアは、セシリア教団が探していた『彩雪の聖女』にも選ばれた。

 大司教自らがシンシアの家族の元を訪れ、自分の養子にしたいと話をして引き取った。


 全く異なる環境で生まれ育った2人は…15年後、此処【メルデナ修道院】で出会った。


 シンシアに至っては入学する前から聖女になっていた。入学したら修道院内の学園で、生徒・教師等からの期待と憧れの目は凄まじかった。学園で初めて会ったにも関わらず、自然と誰もが彼女を支持するようになった。


 対するアルテは正反対だ。シンシアが皆から支持されるが、アルテはその逆…周りからシンシアの敵と見なされ険悪な目を向けられていた。

 物語に出てくるような悪役令嬢のような容姿をしていたからもあるが、誰も彼女に付こうとする者は居なかった。


 でもアルテは全く気にしていなかった。常に無表情だが心の中は豊かで、常に自分を貫いて生きていこうと意識していた。

 彼女の両親は一応アルテに神託が下されたのだと話してくれた。

 しかしアルテには全く頭に入らなかった。困った顔をして話を聞いていた。尋ねれば教えてくれる、まだわからなければセシリア教団で書類をもらえと言った。


 確かに生徒・教師は無理だが、教団の者なら見た目は悪役令嬢、これでも神託を受けた者だから話は聞いてくれるかもしれない。



 周りは敵だらけ、見た目だけで悪役令嬢と仕立て上げられたアルテの物語が始まる。


最後までありがとうございました。


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