Ep.17
数分後、時刻は昼の2時過ぎ。アルテ達が来たのは1時前だったのでそれなりに話をしてたようだ。
アルテ達が帰ろうとした時、伯爵はヴィクトールにのみ馬車を用意させた。彼は驚きアルテを見るが彼女が彼を見ることは無かった。彼はそのまま執事長に連れられ屋敷を出て修道院に帰って行った。
アルテはと言うと両親がまだ話したいと言ったので屋敷に残った。
★☆★☆
伯爵の執務室 アルテと両親だけとなった。
「改めて、お帰りなさいアルテ。顔が見れて嬉しいわ。本当よ」
「…ご協力感謝いたします」
「アルテ…」
今更 謝罪も愛もいらない。アルテが欲しいのは時が来るまで自分の秘密を守ってくれる人達だ。
「まずは…謝らせて欲しい。すまなかった。わたし達はお前を容姿だけで信託の黒蝶だと決めつけ傷付けた。本当にすまなかった…」
「…謝らないでください、お父様」
「アルテ…本当にごめんなさい。母なのに、貴女を守るとごろか周りと同じように扱ってしまった。謝って済む事じゃないのはわかってるわ…ごめんなさいっ…」
「もう良いです お母様、大司教様の手紙を読んでくれただけで良いです」
「「……」」
沢山傷付けた娘は怒るどころか「もう良い」とだけ言った。その顔は腹を立ててる様子も悲しんでる様子も無く、呆れたような顔をしていた。
「大司教セルウィン様の手紙の通り、私は『彩雪と黒蝶の信託』に関係ない人間でした。入学時、大司教様と教団の方が私に話してくれたのです。
彩雪の信託を受けた者と同じ力を感じない事から、私はこの信託に連なる信託が下された日に偶然生まれただけの子供だと教えられました」
「そうだったのね…」
「そうか…」
2人はそう言うと一通の手紙を差し出した。アルテが出した手紙よりも豪華でセシリア教団の封蝋印が押されていた。
大司教セルウィンが伯爵宛に出した手紙なのがわかる。
「大司教様からどこまで教えられたかはわからないけど…貴女も読むべきだと思うの」
「わたし達は誰にも話すつもりは無い…今更信用してくれとは言わない…。だが、わたし達はお前の為ならなんだってする…」
「そんな事言わなくても良いのに…」
アルテはボソッと呟きながら大司教からの手紙を開けた。
「……っ!」
アルテに話した内容をそのまま書かれていたが、下には彼女の知らない情報が書かれていた。
『我々の行動が疎かだった故にご令嬢を危険な目に遇わせてしまった事をお詫び申し上げます。全て大司教である私の失態です。
(省略)
現在『黒蝶の信託を受けた者』を探しています。(以下略)』
「黒蝶を探してるって…」
これは知らなかった。ということは…
「遅かれ早かれアルテが信託とは無関係だとセシリア教団から発表されるだろう」
「……」
アルテは何とも言えない気持ちになった。喜ぶべきなのだろうがどうも喜べない…
この違和感は何だろう…
「あの子達にはわたくし達から言うわ。アルテは学園の事だけを考えて」
母はそう言って微笑むがどうも胸元のモヤモヤが取れない…。
…これに関しても情報が少なすぎる、今深く考えても何もわからない。コレも頭の隅に入れて置くことにした。
その後、アルテは両親と短い会話をして屋敷を出た。伯爵家の馬車が用意されており、それに乗って修道院に帰る事にした。
「また顔を見せに来てくれ」
「何時でも待ってるから…」
「…その気になったら来ます」
アルテが家族の元に再び顔を見せるのは当分先だろう…下手したら卒業するまで見せに来ないかも知れない。
アルテは淡々と答えたが、両親は優しく微笑んで見送った。
△▼△▼
帰りの馬車
アルテは1人、壁に肘を付いて窓を眺めていた。時刻は午後3時頃、まだ太陽は昇ってる。この時期の夕暮れは早い、帰りが少しでも遅くなれば外は暗い。
セシリア教団が動いてくれてるのは嬉しい事だがどうも喜べない。何故だろう
何もわからない中、唯一ハッキリとしてるのは、意外にもシンシアが関わってないって事のみ。
彼女はアルテを利用して悲撃のヒロインになりたいだけだ、聖女であり悪女に虐められる悲撃のヒロイン…これだけも十分ライフォードと従者達、生徒達の興味と心を惹けるだろう。
また、彼女もアルテの悪評を利用してるようにも見える。広げながら利用する等、完璧な自作自演が出来たら天才だろうが、シンシアに出来たのはアルテの真横で転倒するという低レベルの自作自演。
それにアルテとヴィクトールを婚約破棄させようと騒ぎを起こした時も、低レベルの嘘を付いてヴィクトールの反感を買った。
やはり彼女は犯人ではない
色々気になるしわからない事だらけだが、アルテの学園生活に大きく影響する訳では無い。
噂が広がってる元凶も気にかけながらも、自分らしく生きていこう。やりたい事は全部やろう…
何時まで生きられるかわからないから
最後までありがとうございました。
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