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Ep.16

 伯爵の執務室に案内された。


「だ、旦那様っ。失礼いたしますっ」


 執事長は慌てた様子で中に入って行った。アルテは何時もの光景だなと思いながら待っていたが、ヴィクトールには不快感しか無かった。


「どういう事だ…お前は溺愛されて育った令嬢じゃ無かったのか?」

「は?誰がそんな事言ったの?」

「そ、それは…」


 そんな噂は広がっていない、誰も言われなかった。しかし皆が当たり前にそう思っていた。


 何せ悪役令嬢な容姿だけで判断した周りの妄言に過ぎない。つまり、偏見が生んだ情報だ。


「(流行りの物語の悪役令嬢ってそういう環境で育ったとかばっかりだもんね)」


 中には冷遇され性格が歪み悪行に身を染める悪役令嬢の物語も有る。

 しかし帝国の若者に受け、流行ったのはそのような物語ではなく、家族に溺愛され育ったワガママ娘な悪役令嬢ばかり、ようは王道系ばかりだ。


 だからヴィクトールを含め、学園、帝国の人々はアルテも伯爵家で溺愛され育ったワガママ娘で、悪行や男遊び等を平気で行い家族を困らせる悪女だと思っていた。

 だが現実は違う…アルテは溺愛されて育った令嬢じゃない。程よく冷遇され、程よく大切に育てられた。執事長が適当に対応していたが存在の無視や侮辱するような発言をしなかったのが何よりの証拠だ。


「……!」


 ヴィクトールが何か言おうとした時、執務室の扉が開かれ執事長が入るよう言った。その顔は焦ってるようだった。


 ★☆★☆

 アルテとヴィクトールが執務室に入ると彼女の父である『ルアン=レクイエデ』伯爵が口を開いた。


「おもてなしが出来ず申し訳ありませんクローウェルズ殿」

「いや…何の連絡もせずに来たのは自分の方です」

「少々散らかって居るがそこに座ってください」

「お気遣い感謝します」


 ソファーとテーブルは綺麗にされてる。確か昔から父の客人は此処に案内されてたなと思い出しながら座るアルテと不安しかないヴィクトール。

 年は伯爵が上と言え、爵位はヴィクトールが上だから彼に敬語で話す伯爵。アルテには違和感しか無かった。


 しばらくすると向かいの席に伯爵が座った。彼はチラッとアルテを見た後ヴィクトールを見た。


「公爵令息である貴殿がこんな辺鄙な場所に足を運ぶとは、何か用があったのですか?」

「いや……その、急に婚約を申し込んでおいて伯爵様やご家族の皆様に挨拶をしてなかったので…」

「なんと、わざわざありがとうございます。娘は不束者ですがよろしくお願いします」

「いえ、それは自分も同じです。こちらこそよろしくお願いします」


 しばらくするとアルテの母、『エナリア=レクイエデ』伯爵夫人がやって来た。


「まぁアルテ、帰ってきたのね。顔を見れて嬉しいわ」

「お久しぶりです、お母様」


 夫人は伯爵の隣に座りヴィクトールに自己紹介をした。


 おっとりとした人で愛する者には無償の愛を注ぎ、愛さぬ者には手を差し出すのみ…。それは家族にも対して行われる

 アルテの兄達は前者で彼女は後者だ。口では顔が見れて嬉しいと言ってるが、心ではそう思ってない…。アルテにはわかってる…だから彼女も表面だけの笑みで返す。


「えっとヴィクトールさんとお呼びしても?」

「はい、構いません」

「ありがとうございます。ヴィクトールさん、娘は…アルテはご迷惑をかけていませんか?」

「…いえ。そんなことはありません」

「そうですか?。ですが、わたくし少し心配で…余計なお世話かも知れませんが、もし娘に耐えきれなくなったら何時でも婚約を破棄して構いませんわ」

「っ!」


 仮にも娘の目の前でとんでもない発言をしたエナリア夫人。しかし彼女の言ってることはある意味正しい…。

 伯爵は妻の失言を止める事はせず、続くように口を開いた。


「妻の言う通りだクローウェルズ殿。娘は問題を起すばかり…後から婚約を白紙にしたいと言っても遅いですよ。きっと暴れて貴方に迷惑をかける。貴方にはもっと相応しい人がいる…」

「……」


 2人の言ってる事は冷たいが間違ってはいない。アルテは冷静だ、悲しんでる様子は無い。


 なんなら心の中で笑ってる


 両親は敢えて彼の目の前で娘を貶すような事を言ってるのだ。

 何故かって?それは既に両親に自分が信託の黒蝶ではないこと、信託とは無関係だと伝えてあるから。伯爵に頼んだ訳では無いがアルテを貶すような事を言いながらもアルテが信託と関わってない事実を隠してくれてるのだ。


 誰かが広げた悪評、悪い噂を上手く利用したモノだな


 当然ヴィクトールはその事に気付かない。娘の目の前で娘を傷付ける言葉を平気で言う毒親に見えるだろうが演技だ。これで情けをかけられたら困るが


 ヴィクトールは返答に困った顔をして「…わかりました」と答えたのだった。

最後までありがとうございました。


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