Ep.14
この国に皇子は2人いる。1人はアルテ達の同期生でもあるライフォード=メルデナ第一皇子、年子の弟『オーティス=メルデナ』第二皇子。皇帝は先に聖女と親しくなれたか、もしくは婚約者が出来た方を皇太子にすると言った。結果、オーティス皇子より先にライフォード皇子が聖女シンシアと親しくなった。それによりライフォードが皇太子となった。
しかし彼がシンシアと親しくなった頃から、ある噂が広がった。
立太子する前まではとても真面目で誰にでも優しく、弟との関係も良かったライフォードだったが、シンシアと親しくなってから人が変わったように弟を貶すような発言をしたり、役に立たないと判断すると解雇するかその場で処刑を命じるなど、暴君な姿を露にしたと…。
シンシアの前では紳士な男を演じてるが、その本性は暴君…この男が後の皇帝だと思うとゾッとすると皆が口を揃えて言う。
皇帝はライフォードが豹変したのを目にしてるが見て見ぬふり、親子揃って聖女に夢中になってた。
純粋に信託を真に受け、国に厄災をもたらす黒蝶のみを毛嫌うのならまだ良いし納得する。しかし彼は黒蝶の人物ではなく信託とは無関係な城の騎士や使用人に当たり散らしてるのが問題視されてる。
オーティス皇子も変わり果てた兄と父に呆れ、他国に留学してしまった。
この国の未来を変えられるであろう唯一の存在に見切られてしまった帝国…黒蝶がもたらす厄災は既に始まってるのだろうか…
それとも彩雪の祝福では悪しきモノから守れない…白蝶でもある黒蝶の【奇跡】が必要なのか…
いや…信託等関係なく、帝国の崩壊は既に始まってる。この崩壊は黒蝶によるモノではなく、人間達の愚かな行動によって起きた崩壊だ。
△▼△▼△
9月の半ば、学園では試験が行われてた。この日は流石に真横に来ることも睨み付ける事も出来なかったヴィクトールは渋々試験を受けていた。アルテはというとスラスラ解いたり悩む様子があった。筆記以外にも実技の試験もあり、中にはこの試験の結果次第で今後の授業が変わる事もある。
数日後、試験の結果が張り出された。
総合結果での1位はライフォード皇太子、これには誰もが「そうだよな」と納得していた。何なら試験前から1位は彼だろと思われていた。
2位は彼の従者であるマルクスとカルヴァン、流石皇太子の側近なだけある。その下にはキャロラインをはじめとした幼い頃から教育された貴族の生徒の名前が並んでる。
ヴィクトールは10位と、狙ったかのような順位だった。
一方アルテはまずまずと25位、良くも悪くもない。1年生は3クラス20人と分けてるので全部で60人程、その中で25位は普通だろう。シンシアは30位、アルテと対して変わらなかった。
アルテの順位を見て周りは笑った。
「悪いことや男遊びばっかりしてるから馬鹿なんだね」クスクス
「ワタシより下だよ」クスクス
「授業で調子乗ってたクセに試験はコレって見かけ倒しにも程があるでしょ」
アルテが馬鹿なのではない、全体的にレベルが高いのだ。アルテより上の順位の生徒のほとんどが名高い貴族の家の者ばかり、皆が幼い頃から厳しく育てられ、教育されて来た生徒ばかりだから。しかしアルテは家庭教師に学んだ基礎と授業だけでここまで結果を出した。
だから良くも悪くもない順位、本人は満足してるようだった。
「(英才教育されてた人達に比べたら劣るけど、これはこれで悪くもないね。これから先、順位を落とさないようにしなきゃ)」
今は良くても今後は更に難しくなる。なるべく今の順位を保たなくては。
アルテが教室に戻ろうとした時、ライフォードとシンシアが絡んできた。
「フンッ、やはり良からぬ事ばかりしてるお前は悪行を思い付くのは天才だが根は馬鹿だったようだな」
「ライフォード様っ、そんな事言ってはいけません」
「シンシアは優しいね…。シンシア、今は悪女が上だけど本当は君の方が優れてるんだ、あんな奴に負けてはいけないよ」
「はいっ、頑張ります」
「(勝手にしてくれ)」
絡んできたと思ったらイチャ付きを見せつけにきただけみたいだ。アルテは呆れた様子で去っていった。2人はそれに気付く事は無かった
「……」
離れたところでキャロラインは3人のやり取りを見ていた。本当の敵がわかった彼女はライフォードとシンシアを見て険しい顔をしていた。
「キャロライン様、流石です!」
「上位5位以内…お見事です!」
「ありがとうお二人とも、でも殿下の側近お二人には敵いませんわ」
険しい顔から淑女の顔に戻して取り巻き2人に礼を言った。
「にしても、レクイエデさんも聖女様がこの程度だなんて…皇太子殿下の婚約者候補になる気は有るのでしょうか」
「さぁ?レクイエデさんに至ってはその気は全く無いみたいだけど…聖女様はね…」
「??」
「行きますわよ」
「「はい!」」
キャロラインは顔をしかめてシンシアを見ながらそう言い、取り巻きの令嬢2人と共に自分の教室に戻って行った。
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