Ep.12
9月に入りもう一週間経った。
古代文字·魔法陣解読 授業中
アルテの席の右隣にはヴィクトールが座って彼女を凝視していた。左からは離れた所でライフォードが睨み付けていた。
彼女は両サイドから視線を感じながらも授業に集中していた。
黙々と文字を解読し、教師とは別で講師をしてくれる解読者に確認してもらっていた。
「現代語訳としては正解です。しかしこちらが書かれたのは500年程前の時代なので古文に訳してみるとより理解が深まると思いますよ」
「はい!やってみます」
アルテは本職の人間からアドバイスをもらい、一応正解したがアルテは再び解読に取り組んだ。
あちこちから「わからない」「読めないよ」等の唸り声も聞こえる。
ライフォードも舌打ちをし、アルテを敵視しながら解読に取り組む。
基礎だけでも難しいのに、それに加えて時代に合わせて解読しなくてはいけない、かなり難しい授業だ。解読とは時間をかけて解き古の謎や書物を読み解くのが基本なのだ。
短時間で完璧にするなんて天才しか出来ない、悩み続け白紙で提出するのは当たり前。
授業の説明時でも教師と解読者が説明していた。(教師1人の他に解読者2人が講師をしてくれる。アルテの答えを見て助言をくれたのは女性解読者)
「この授業で出す課題等は1限で終わらすことはまず不可能、その為学年が上がるまでに最低【現代語訳】で解読し正解すれば良い。
古代文字と魔法陣は今でなお謎に包まれてる。古の民が残した文字や仕組みで作られたモノを現代の力と技術で解読する…それが解読者の仕事だ。
しかしそれらを紐解くには長い年月が必要だ…下手したら100年程かかる事もある、弟子や部下達に後を託して眠りについた学者達は沢山いる…。解読とはそういうものだ」
「皆さんの学年が上がるまでに解いていただくのは古の時代の人が古代文字で書かいた短歌です。まずは現代語訳し、その後時代に合わせた文で再度 訳してみましょう」
古代文字を解くにはまず一文字一文字の読み書きを覚える所から始まる。渡された短歌は1行のみだが、その文字を全て解読しないと短歌の解読は始まらない。
分厚い辞典と短歌の古代文字を交互に見比べ一文字一文字調べる地道な授業、しかしコレは必要な知識と授業、解読の仕組みを押さえれば他の文字を解読するのにも役立つ。
生徒が文句を言いながらも取り組むのはそれが理由だ。
数分後、授業が終わった。長時間頭を使い疲れて机に伏せる生徒達。アルテは教材を片付け自分の教室に向かった。その後ろをヴィクトールが歩いていた。
▼△▼△
アルテの自由な時間は1秒もない、常にヴィクトールに監視されてる。
彼女は黙々と何時もの購買のサンドイッチを食べていた。ヴィクトールは「悪女のクセに貧相な昼食だな」と思ってるのか馬鹿にしたような目をしていた。
しばらくして食べ終えた頃…魔の庭園は本当に面倒事しか起こさない。
アルテの元にシンシアがやって来た。
「酷いわアルテさんっ、ヴィクトールを無理やり自分の婚約者にするだなんてっ、殿下が言ってたわっ…彼を脅して自分の婚約者になれと言ったと…クスンッ」
「は?」
「……」
シンシアは涙を流しヴィクトールに抱きつく。
「可哀想なヴィクトール、何をされたのっ、聖女のワタシが慰めてあげるわっ」
「っ……」
ヴィクトールは何かに衝撃を受けたのかドン引きしていた…自分から命じたくせにイカれた嘘をつくライフォード…シンシアはライフォードの嘘を鵜呑みしてる。
彼の腕に豊かな胸を押し付けるシンシア、普通の男なら喜んだりするだろうが、主の嘘にドン引きしてる彼には効果は無かった。
シンシアはヴィクトールの腕に抱きつきアルテを睨み付けた。
「本当に酷い人っ!ヴィクトールを利用してライフォード様に近づくなんて!最低よ!」
「「……」」
シンシアは周りに聞こえるように叫ぶ。周りは疑うこと無くシンシアの言葉を信じる。
「えっ?今のホント?」
「そんなに皇太子妃になりたいのかよ…」
「クローウェルズ、可哀想だな」
「最低だな、やっぱり存在自体が厄災だな」
「ホント…最低」
何時もそうだ、アルテは何もしてないのに悪と決めつけられる。こうしてるのは必ずシンシア…自分が有利になる事しかしない… キャロラインのような婚約者候補達を差し置いてライフォードに近づいてるのはアルテではなくシンシアなのに…彼女が聖女だから皆何も言わないのだろうか…
シンシアは知らないが、この婚約は婚約の皮を被った死神の到来だ。これを言ってやりたいが言ったらヴィクトールがキレてその場でアルテの処刑が行われるだけ。
アルテは何時通り冷静を保つ。何を言ったところでシンシアはヒステリックに叫ぶだけ、ここはアルテが何も言わないのが正解だ。
アルテは冷静を保ちながら何も言わず、時間過ぎるのを待つ。周りの馬鹿にする声が頭に響くが心には響かない。
「事実だから反論出来ないんだ」
「言えよ、そうですって!」
「そうよ!ヴィクトール様を巻き込むな!」
「(あぁ…うるさい…ホント、この庭園 私に面倒事しか起こさない!!腹立つわ!)」
アルテが庭園に腹を立ててる時だった。
「誰がそう言った」
「へ?」
圧と怒りを感じる低い声が響いたあと、呆気とした声が庭園に響いた。低い声に驚き、恐怖を抱いたのが野次馬が大人しくなった。
最後までありがとうございました。
面白かった、面白くないからもっと努力してと思っていたら下の星、評価をお願いします。
星1つでも嬉しいです!
作者の励みにもなります!
次の更新も気長にお待ちください