Ep.11
アルテ(とヴィクトール)は別の雑貨屋に来ていた。
こっちでは壊された筆箱とノート、ペンを買うつもりだ。ヴィクトールはまた何か言おうとしたがアルテの真剣な顔を見て言うのを止めた。言った所でアルテが返すのは侮辱でも罵倒でも無いから。
「……」
アルテは筆箱を見比べてる。使いやすさ重視だがどちらも捨てがたい…
彼女が買い物に夢中な時、ヴィクトールが店内にいた女性客、女性店員に声をかけられていた。
「あ、あの!皇太子殿下と共にいるヴィクトール様ですよね?」
「あぁ…そうだが」
「きゃぁ!本物ですか!?嬉しい!ずっとお話して見たかったのです!」
「……」
アルテは彼を見てすらいない、買うものを決め会計をしていた。
▼△▼△
雑貨屋で必要な物は買い揃えた。後は自由時間だ
「(話題のカフェにも行ってみようかな)」
「……」
アルテの足は女性に人気なカフェに向かう。可愛いの塊のような店、流石のヴィクトールでも男1人で入る勇気は無い…しかし入らないと彼女の監視が出来ない。
彼の足が止まった時、アルテが店の扉を開けながら振り返った。
「何してるの、さっさと入ろうよ」
「!?」
まさかの発言にヴィクトールの思考が止まった。入る?この店に?
…今の彼に悪役令嬢アルテの監視など頭に無く…恐る恐る中に入った。
店内も可愛いでいっぱいだ。小動物を模したミニキャラやぬいぐるみ、ふわふわや可愛いモノで溢れたカフェ。
アルテも少し緊張してるようだったが、彼女の目的はこの店でしか食べれないスイーツだ。
店員に案内され隅の席に座った。
しかし隅の席といえヴィクトールはとても目立つ。可愛いで溢れた空間に不釣り合わせなイケメンが入ってきたのだ、誰も見ない訳無かった。あちこちから視線を感じながらも向かいの席で楽しげにメニュー表を捲るアルテを見た。
「(どれだっけなぁ…確か…)」
「……」
「…先選んで」
アルテはヴィクトールの視線を感じ、メニュー表を渡した。ゆっくり受け取りながらメニューに目を通すヴィクトール。
その間アルテは店内を見渡した、これは確かに話題になるなと納得した。
女性向けに感じるが、中には可愛いモノを好む男性だっているから完全な女性向けって訳ではなさそうだ。
その後、お互い食べるものを決め店員を呼び注文した。
数分後
運ばれてきたのは小さなタルトとコーヒーだった。
コレが此処でしか食べれない『苺の宝冠』のミニタルト。苺の宝冠は苺の品種の中で最高級と扱われる苺だ。その味は他の苺とは比べ物にならない程甘く、酸味とのバランスが完璧と言われてる。
「……」
「(コレが食べたかったのよね~!)」
アルテはタルトに夢中でヴィクトールの事など眼中に無い。
黙々とコーヒーを飲む彼はこれが帝国に厄災をもたらす存在かと疑っていた。無駄な考えなのに…
☆★☆★☆
その後、ヴィクトールが支払おうとしたが横からアルテが2人分払って店を出た。
彼女はヴィクトールを居ないものと扱ってるが根までは悪女じゃないので自分だけ払うなんて最低な行為はしない。
そもそもアルテの用事にヴィクトールが勝手についてきてるのだ。彼女が気を遣う必要は無い。ここで自分のだけ払ったらまた学園で良からぬ噂が広がるだろうから対処したに過ぎない。
だからヴィクトールが文句を言う権利は無い、なんならアルテの私生活に口出しする権利はもっと無い。
満足した様子で修道院に戻るアルテ、最後までヴィクトールを居ないものと扱った。
△▼△▼
2日後、月曜日 今日から9月になった。
アルテはセシリア教団の者に手紙を渡しレクイエデ伯爵家に届けてもらった。教団が学園を管理するのと同時に生徒と修道院の外の者の間に立つ役割も担ってるから。
この日もアルテはヴィクトールに監視されながらキャロラインやマルクス達、シンシアに絡まれた。
婚約者は敵なので守ってくれない、アルテ1人で戦うしか無い。
でもアルテは周りが思ってるよりも強い。自分は信託の黒蝶ではない、噂のような悪事は何もしてない…強い信念を持ち自分を貫く
だからどんなに侮辱 罵倒されても、アルテは弱い姿も涙を見せない。
彼らの言葉を真に受ける必要は無いのだから、悲しむ必要は無い
アルテは冷静に対応する、キャロラインやマルクス達は言うだけ言って去って行く。シンシアに至ってはヴィクトールがアルテを監視してるというのに関わらず彼女の真横で必ず転倒する。
後ろから見れば彼女が足を引っ掻けて無いのはわかるのに彼はアルテを庇う事はしなかった。
シンシアが転び、周りが心配してライフォードがやって来てシンシアを保健室に運ぶ…これがルーティンになった。
なぜシンシアはアルテに執着するのだろう、大司教達はシンシアと同じ力と気配を感じないと言っていたから聖女でもあるシンシアなら彼らのように感じ取れるはずだ。
わかっててアルテに絡んでるって事は…小癪な手を使ってでも悲撃のヒロインになり、アルテは悪役令嬢に仕立て上げる気なのだろう…
最後までありがとうございました。
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