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Ep.10

 6限目が終わった後、帰りのホームルームを終えた後、アルテは言われた通り魔の庭園にやって来た。ホントこの庭園に来ると面倒事しか起きない。


 本当は二度と来たくなかったが、殺意の塊な彼の言葉を無視したら待ってるのは問答無用で死のみ。コレでアルテが殺されてもホントの黒蝶が残ってるので何も解決しない、アルテは無駄死にするだけ、ヴィクトールも帝国の影からただの殺人犯に降格するだけ。

 面倒だが手紙の返事も書かなくてはいけない、近い内帝都に行きレターセットを買わなくては…なんなら今日 買いに行こうとしたのにコレだ。

 やっぱり学園の庭園はアルテに面倒事ばかり起こさせる…まさに魔の庭園だ。


 しばらくすると殺意の塊…失礼、ヴィクトール=クローウェルズがやって来た。

 相変わらず殺意剥き出し、話す為に呼んだのか殺す為に呼んだのか…


「それで、話しとは?」

「……」


 彼は答えずアルテを見下すように睨み付ける。銀髪に金色の瞳…この世の者ではないようなオーラも感じる。

 金色の瞳はアルテを汚らわしいモノを見るかのような目に変わった。


「気色悪い、その態度は止めたらどうだ」

「(何もしてないのに気色悪いって…)」

「まぁ良い、俺もお前みたいなヤツと一緒に居たくないが上からの命令で仕方なくやってる。

 はぁ…何でこんなヤツと…」

「……」


 ホント、この男も皇太子も側近達も性格が悪い…こんな奴らが後に国を動かす者達とは思えない…。

 結局の所、手紙には彼側が申し込んだと言ってるが、結局は上…皇太子の命令でアルテに婚約を申し込んだのだ。

 それもただの婚約ではない…監視と国の影としての暗殺も命じられたのだろう。


 ようするに、この婚約には愛など無い。待ってるのは死のみ


「これだけ言っておく、お前を卒業する前に殺す」

「信託が起きる前に卒業したら?」

「どっちにしろ卒業時に殺す」

「そう…」


 これは死刑宣告か、余命宣告か…この男は婚約者じゃない、帝国に災いをもたらす黒蝶を殺す為の死神であり死刑執行人だ。


「……」

「話はそれだけだ。それとお前の行動は常に監視させてもらう。拒否権は無い」

「わかったよ、勝手にすれば」

「チッ…気色悪い」

「……」


 気持ち悪い、気色悪いの正体はアルテが悪役令嬢のような容姿をしてるのに言うことや行動が全くそれっぽくない…違和感しか無いから出る言葉なのだろう。

 好きでこの見た目に生まれたんじゃないんだが


 …婚約者(死神)を味方につける事は無理そうだ。なんなら自分に未来は無い…信託が起きようとも、起きずに卒業しようがどっちにしろ殺される。


 此処で反論したらきっと問答無用で殺される。「やっぱり悪女だったな」と言われておしまい。

 それなら時間いっぱい自分らしく生きよう、好きな事、やりたい事全部やろう!


 ヴィクトールは言うだけ行って去って行った。監視は明日から始まるようだ…アルテはそのままガクッと膝から崩れ踞った。周りの生徒はクスクスと嗤っていたが今のアルテには効果は無い。


「(平和な時間を返してくれぇぇ!)


 心の底からそう叫んだアルテ(心の中で叫んだ)

 あぁ…信託1つで此処まで人生を狂わせられる人間がいるだろうか…


「…帰ろっ」


 アルテは遠い目をして起き上がり、寮に帰った。


 △▼△▼

 今日を乗りきれば2日間の休日だ。

 朝アルテが寮を出ると…ヴィクトールが居た。一体何時から待機して居たのだろう…怖い通り越して心配だ。


「……おはよ、朝から早いわな」

「チッ…」


 おぉ怖い怖い…アルテは舌打ちを聞かなかった事にして歩き正門に向かった。

 アルテの後ろを歩くヴィクトールは殺意で満ちた目で彼女を睨んでいた。その気になれば何時でも殺せる存在…


 しばらくして教室に入った。アルテはヴィクトールを無視して席に着いて1限目の準備をした。ヴィクトールが同じクラスだと気付いたのは教室に入る時だった。

 アルテが驚いた反応をした時、彼の表情はまさに死神のようだった。今すぐに殺したくなっただろう…


 それから地獄の時間が始まった。

 何をしようが後をつかれ、昼休みも自分だけの場所も使えず魔の庭園で凄し、四六時中監視された。


 そして夕方…思わずアルテは声をかけた。


「どこまでついてくるの?此処『女子寮』だけど」

「っ!…チッ」


 彼はアルテに指摘されたのが気に入らず、謝罪ではなく舌打ちをして去って行った。

 そこは紳士だったか、これで女子寮の中まで入ってきたらイケメンでも変質者扱いだ。


 ☆★☆

 翌日、休日だというのにヴィクトールは寮の門の前で立っていた。


「……」

「……」


 アルテは彼を見なかった事にして帝都に向かった。

 歩くこと数分後、帝都の雑貨屋にいた。


 アルテは真面目な表情でレターセットを選んでいた。選ぶ彼女を貶すようにヴィクトールは発した。


「愛人にでも送るのか?ホント、噂通りの悪女だな」

「黙って」

「……」


 品が有りすぎても無さすぎても、普通すぎてもダメ。シンプルだが高貴な印象なモノを送らないとうるさいだろうから…

 やはり白い手紙と封蝋印(シーリングスタンプ)による無難なモノが良いだろう。これならうるさくないだろう。

 アルテはレターセットと蝋とスタンプを購入した。店員はアルテを睨み付けながらもちゃんとした値段で買わせてくれた。


 帝都を歩けば注目の的、良い意味でも悪い意味でも。アルテの容姿は悪役令嬢そのもので、黒いダリア…信託の黒蝶そのものな姿…平民でも怒りや憎しみ、恐怖を抱く。

 対するヴィクトールは顔の良さもあり多くの女性に囲まれていた。

 アルテはガン無視して帝都を歩き次の目的の店に向かった。

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