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Ep.9

 数日後が経ち、8月の終わり頃になった。

 昼休みが終わる頃、セシリア教団の女信徒に呼び止められ、教団を通じてアルテの元に一通の手紙が届いたと知らせに来た


「私にですか?」

「はい、レクイエデ伯爵様からのようです」


 女信徒は淡々と答えてアルテを聖堂に案内した。周りはアルテが叱られに行くと思っていたのか嗤っていた。


 ☆★☆

 聖堂に入り、隅の椅子に座り彼女が戻って来るのを待った。既に昼食を食べ終わっていたから空腹ではない。

 しばらくすると先程の彼女が手紙を持ってきた。同時に鐘が鳴り昼休みが終わり、午後の授業が始まったのを知らせた。


「教団側が呼び止めたので公欠になりますのでご安心を。こちらが呼んだ時間が悪いので気にせずお読みください」

「あ、はい」

「どうぞ」


 平たい黒い折敷のようなモノを差し出され、乗っていた手紙を受け取った。それも2通…


 封を開けると便箋が1枚ずつ入っており、内容はそれぞれ違った。

 まず上に乗ってた手紙、こちらは大司教セルウィンから手紙を受け取ったとの報告だった。一番最初には『教団を頼れと言ったが大司教様に迷惑をかけるとは何事だ!』と叱る言葉が書かれていた。

 その下には()()謝罪と一度家に帰って来いと書かれていた。


「(帰った所でね…)」


 別に恨みが有るわけでは無いが帰る理由も意味も無い。なんなら帰る必要が無い

 感情を無にして読むアルテ、やれ兄達が謝罪従ってる、やれ母が心配してるから顔を見せてくれなど、言葉任せな内容が綴られてる。まずあり得ない、兄達が謝罪?不要だ、母が顔を見たがってる?不要だ。育ててくれた事には感謝してるが会いたいと思うほど感謝はしてない。


 続けて2通目、こちらはつい最近書いたようで、恐らく1通目を送る日に一緒に出したのだろう。1通目はそれなりに日が経ってるのが感じ取れた、大司教と話をしたのは4ヶ月も前なのに…彼らにとってアルテはその程度なのだろう。謝罪したいなどと結局は言葉だけだ。


 そしてつい最近書いたであろう手紙を読むとそこには…何とアルテに婚約者が出来たとの報告が書かれていた。


「……は?」

「どうなさいました?」

「いえ、何でもありません」


 令嬢らしからぬ、呆気とした低い声が聖堂に響いた。


 貴族の結婚のほとんどが政略結婚、愛など無い。親同士の関係や仕事関係の成り行きでお互いの子供を婚約者にするのがほとんどだ。

 時と場合によっては本人達がいる時、居ないところで進むのどちらかだ。


 アルテの場合は本人の知らない所で行われた…それもつい先日との事。


 相手は『ヴィクトール=クローウェルズ』公爵令息、彼の家から申し込まれたとのこと事だった。

 また、公爵家と繋がれる名誉な事だ、我が家の恥になるような事はするな、婚約破棄されても助けないと書かれていた。


「ヴィクトール=クローウェルズって…」

「ライフォード皇太子の側近の1人では?」

「はぁぁぁ…」

「!?」


 アルテは長い溜め息を吐いた。口から魂が出てるように見えたのか女信徒は驚いた顔をした。


 ヴィクトールの家もキャロラインと同じ帝国で名高い公爵だ。代々皇帝に仕え、彼の影として暗殺や汚れ仕事を行ってる影の一族とも言われてる。

 そんな家が見た目だけの悪役令嬢に婚約を申し込むだなんて…裏が有るとしか考えられない。


「どうしてこんな目に…」


 アルテは悔しくて堪らない、自分は数ヵ月前まで平和な時間を過ごしていたのだ。悪事は一切してないのに何故こんな事に…


 あの時間を返してくれ…と心の中で嘆くアルテ。ガクッと項垂れるアルテの背中を優しく擦る女信徒…

 セシリア教団には既にアルテが信託に無関係だと、自分達のせいで苦労してきたから手を差し出してやれと言われてるのだろう。


 その後、アルテが聖堂を出たのは授業が終わる鐘が鳴った時だった。


 ★☆★☆

 教室に戻ると何時も通り陰口、悪口のオンパレード。


「またサボったよ」

「教団が関わってるって言ってるけど絶対嘘だよ」

「どうせ身体使って何かしたんだろ」

()()身体で?無理無理」

「ギャハハ!」


 容姿だけでなく、とうとう身体まで馬鹿にされた。確かにこの貧相な身体で誘惑は無理だ。そこを見抜いてくれてありがとうと言いたくなったアルテ。


 席に着き6限目の準備をした時、彼女の近くに誰かがやって来た。


「……」


 周りはその人物を見て驚き、更にざわついた。


「えっ!?何で『ヴィクトール』様が悪女の元に?」

「何で!?」

「悪女に脅されてるのか!?」

「うわっ、有りそ~自分の男にならなきゃ家を潰すぞとか言われたのか?」

「ハッ、悪女は伯爵家だぞ、公爵家を潰せる訳ないだろ」

「そうだな ギャハハ!」


「……」


 周りの声がうるさいがどうでも良い、アルテは側に立つ相手を見ず教材を取り出し続ける。

 相手は何も話さない、なら話しかける必要はない。

 私は周りの思い描く悪女じゃないから


 その時だった。


「わざとそういう態度を演じて男を引き寄せてるのか」

「……は?」

「後で庭園に来い、それだけだ」

「…(なに?!私男に興味ありませんってのを演じてると思ったの!?アンタの目は節穴か!)」


 そう叫びなくなったが我慢した。

 彼の嫌みは周りにも聞こえたようで、周りはクスクスと嗤っていた。


「聞いた、フフッ 傑作ね」

「馬鹿な女」


 この学園にアルテの味方等いない…

 あんな殺意しか感じない男が自分の婚約者だなんて信じたく無かった…


 アルテは怒りと悔しさを感じながら6限目を浮けたのだった。

最後までありがとうございました。


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