彼と彼の人
「あれは……!」
そこには、大きな銀色のつばさを生やし、うつくしい衣に身をつつんだ青年の天使がいました。
神父にはわかりました。
あの天使は、いなくなったあの子どもです。
大きくなったけれど、くりんとした金のひとみのかしこそうなさまも、ひたいにかかる巻毛をのける手つきも、神父には見おぼえのあるものでした。
「神父さん」
天使はきれいな高い声で神父をよび、しずかにあゆみよって、その手をとりました。
手はひんやりとしましたが、冬のさむさのように、いやな感じのするキンとはりつめたつめたさではなく、もっとやさしく、けだかい温度でした。
「わかりますか?ぼくは神父さんがたすけてくださった、あの子どもです」
わかる、わかるとも!
神父はむちゅうでうなずきました。
目の前の天使がほんものだということも、信心ぶかい神父にはすぐにわかりました。
いったいどういうわけであの子が天使になったのか、それとももともと天使だったのか、そんなことは問題ではありません。
とにかくあの子がいるのです。
「ぼくがつばさにけがをして、地面におちてくるしんでいたところを、あなたはたすけてくださったのです。あなたがいなければ、もっと大変なことになるところでした。ほんとうにありがとう」
天使はそっと神父の手をにぎりしめます。
「つばさがなおったので、すぐに神さまのもとへもどらなければならず、あなたにだまっていなくなってしまいました。ごめんなさい」
「そんなことはいいよ……いいのです。天使さまがぶじでよかった」
神父はおそれおおく思いながら、すこしだけ天使の手をにぎりかえしました。
「ほんとうは、天使が人のまえにすがたをあらわしてはいけないのですが、今日はとくべつです。クリスマスの日ですから。神さまがあなたにお礼をいってくるようにと、ゆるしてくださいました」
それをきいて、神父はうれしいのとさびしいので、目をぱちぱちとまたたきました。
ということは、もうあえないということでしょう。
子どもは神父と何のつながりもありませんが、子どものことをほんとうのわが子のようにかわいがっていた神父には、すこしさびしいことでした。
「では……もうおすがたをみることはないのですね」
「そんなことはありません」
天使はわらいます。
「いつでもぼくは、みなさんのそばにいます。目をつむって、神さまにいのってください。ぼくはいつもそのとなりにいます。あなたがたのおねがいを神さまにとどけるのがおやくめですから」
もうじき、かえらなければなりません。
天使はそういうと、神父のほおにさようならの口づけをおとしました。
「村のみなさんも、ごしんせつをありがとうございます。こころばかりのお礼をさしあげます」
天使の白いうでがすっとさしのべられます。
まだもう少し続きます!
終わる終わるといって全然終わらせられずすみません。
本日中に最終話投稿したいです