クリスマスの日
もうすぐ、クリスマスがやってきます。
ふだんはのんびりしている神父ですが、この季節はいそがしくなります。
ミサの用意に、かざりつけ、村のみんなにふるまう料理もかんがえなければなりません。
子どももいやがらずにせっせと手伝ってくれたおかげで、とくに困ることもなく、どうにかクリスマスをむかえられそうでしたが、さいごまで気をぬくことはできません。
ところが。
ミサをする日まであとすこしになったとき、子どもがとつぜんいなくなりました。
いつもどおり、オートミールのおかゆを食べ、いつもどおり神父があんであげた毛糸のくつ下をはいて、たのしそうにかざりつけをしていたのに……。
ふと気づけばどこにもいないのです。
神父ははじめ、村のほかの子どもたちとあそんでいるものだと思っていましたが、夜になっても帰ってこない子どもに、不安になって外へさがしに出かけました。
しかし、子どもは見つかりません。
はじめてであった日よりも、つよいふぶきの日でした。
足あとはすぐに消えてしまいます。
ふきつける風はつめたく、神父の上着は雪にぬれてすぐにびしょびしょになりました。
さむくてさむくて、コートの前をかきあわせます。
年をとった神父は、山にわけいることも、森のふかくまでさがすこともできません。
村の大人たちもさがしてくれましたが、クリスマス前のこんなにいそがしいときに、長いじかんをつかうわけにもいきません。
何日かたつと、子どもをあきらめるしかありませんでした。
神父は神さまに子どものぶじをお祈りしました。
なんどもなんども、とびらをノックする音がきこえたように思っては、とびらをあけてみます。
しかし、そこにはだれもいません。
不安な夜がいくつかすぎ、やがてクリスマスのミサの日になりました。
神父は笑顔で村のひとたちをむかえ、しきたり通りミサをすすめますが、気が気ではありません。
もしも今、子どもが外で迷子になっていたらどうしよう。
森でおおかみにおいかけられていたらどうしよう。おなかをすかせて、雪の中でうずくまっていたらどうしよう……。
ミサがおわりました。
閉祭の歌を、みんなで歌うじかんです。
神父がオルガンをひくために、けんばんに指をおいたときでした!
神父のうしろで、どよめきがおきました。
「あれはだれだ?」「まだおいわいがあったのか?」と、さわぐ人々の声に神父はあわててうしろをむきます。
「あれは……!」
クリスマスまであと少しですね!
お話はもう一話で完結するはず。今日中に投稿します。