きみとぼくによるクロミズム
初投稿なので誤字脱字、変なところがあると思いますがよろしくお願いします。
「近寄らないで!」
「気味が悪い...」
「この化け物め!!」
こんな言葉を僕は過去に何回聞いただろう。
もう数え切れないほど言われた罵倒の数々は、僕にトラウマとして刻み込まれている。
ーーー
「はぁ…はぁ…はぁ…」
ある町の商店街。
少し肌寒い空気の中、黄緑色の髪の女子中学生が元気に走っている。
何故かその髪色は髪からこぼれるように床や壁に跳ねて黄緑色に染まっていく。
だが、跳ねたその色はすぐに薄く消えていった。
そんな姿を見ていた八百屋の店主のおじいちゃんが優しい声で女の子に言う。
「お〜い、彩楓ちゃ〜ん。色漏れてるよ〜」
「あ!ごめんなさーい!」
店主の言葉に反応し、彩楓という女の子は立ち止まった後、少し深呼吸をする。
すると、さっきまで黄緑色だった彩楓の髪色が黒色に変化していった。
「どうしたんだい?そんなに楽しみなことがあるのかい?」
八百屋の店主はその異様な光景に触れもせず話し始めた。
「今日、転校生が来るの!転校生って初めてですごくうれしいんだ!」
彩楓は本当に楽しそうに言った。
「あ!早く行かないと!」
「そうかい。じゃあ、行ってらっしゃい」
「うん!じゃあね!」
彼女はそう言い、走り去る。
その様子に店主や他の商店街の人はとても微笑ましそうにし、彩楓を見送った。
彩楓の髪色は少し黄緑色になっていた。
ーーー
ガララララララ...
彩楓の教室の3年1組に入ると、クラスメイトの皆は転校生の話で持ち切りだった。
「彩楓!」
友達が彩楓を呼ぶ。
「何?」
「今日来る転校生!男の子なんだって!」
「そうなんだ〜。どんな子だろうね!」
「イケメンだといいな〜」
「いい子だったらなんでもいいよ〜」
ガララララララ...
「はーい、皆席に付いてー」
先生が教室のドアを開け、それと同時にクラスが静かになり席に座る。
先生が口を開く。
「今日は皆が知っての通り転校生が来る。転校生を怖がらせないように優しく接しろよ」
何か意味深なことを先生は言い、転校生を教室へ入らせた。
入ってきたのは黒髪短髪で色白い、どこにでもいそうな男の子だった。
「では、自己紹介を」
先生が転校生に向かって言う。
それに続けてその転校生が話し始めた。
「…五十川 庸です…よろしくお願いします」
転校生はとても端的な自己紹介をした。
クラスの皆は少し落胆している様子だった。
「じゃあ…五十川くんはあそこの席に座ってくれ」
先生は彩楓の隣の席に指を指しながらそう言った。
彼はそれに何も言わずに移動し始めた。
庸が席に座ると彩楓が口を開く。
「おはよう!」
「…」
庸はあまり彩楓に興味が無さそうに無言でコクッと頷いた。
「ムー…」
彩楓は庸の態度に少し頬を膨らませる。
そんなことをしていると先生が彩楓に向かって話し始めた。
「あぁ、そうだ、彩楓」
「はい?」
「お前に五十川の学校案内を任せた」
先生は少し胸を張りながら言う。
「え?」
彩楓は自分に人差し指を立てて、なんで自分が?と疑問を浮かべた。
「まぁ…いずれ分かるよ」
「はぁ…」
先生に軽くあしらわれてしまった。
いずれ分かるとはどういうことなのだろう?
そんな疑問が彩楓の中に残りながら、朝のホームルームが終わる。
庸は少し顔が下を向いていた。
ーーー
放課後になり、空が赤みがかっていた黄昏時の教室で1人になっていた庸は、
自分の席で小声でブツブツと独り言を呟いていた。
「まだバレてないはずだ」
トントン
庸の肩を誰かが叩く。
庸は少し驚き、バッと後ろを向いた。
そこには庸の学校案内役である彩楓がいた。
彼女は庸が急に後ろを向いたことに少し驚いた顔をしたが、すぐに笑顔になり口を開く。
「大丈夫?」
少し輝いて見える。
「だ、大丈夫」
庸は彩楓の顔を見ずに答えた。
彼女は笑顔を絶やさすことなく話し始めた。
「そっか。そろそろ学校を案内しようと思うんだけどいいかな?」
「分かった」
庸は頷きながら言った。
それからは彼女に学校の色んな施設を案内された。
音楽室、美術室、図書室、視聴覚室、体育館などいろいろなところを紹介される。
辺りはすっかり暗くなっていた。
「じゃあ…最後に保健室の場所、確認しに行こ!それに、今の時間ならまだ保健の先生もいるだろうし挨拶しよう!」
「うん」
校舎と体育館の間にある渡り廊下で歩きながら、そんな会話をした。
少し沈黙した時間が流れ、鈴虫の鳴き声がよく聞こえる。
すると、彩楓が話し始めた。
「ねぇ、前の学校はどんな感じだったの?」
「え?」
彼女にとってはたわいもない話題なのだろう。
けれど庸には身体が震え出すほどの話だった。
庸は思わず立ち止まってしまった。
「ん?どうしたの?」
彼女が庸の顔を心配そうに覗く。
庸の震えは止まらない。
「あ、あまり人にい、言いたくないんだ…」
庸は彩楓から顔を逸らし、少し過呼吸気味に言う。
庸のその様子を見て彼女は察したのかそれ以上のことは詮索してこなかった。
少し静かな時間が流れ、彼女が口を開いた。
「そっか。ごめんね…」
彩楓は庸を見つめ、悲しげな表情で続けて話した。
「でも、もし話したくなったら言ってね。…辛さも、少し和らぐかもしれない。それに何か出来るかもしれないから」
彼女は励ましのつもりで言ったのかもしれない。
だけ庸にはあまり良いように聞こえなかった。
彼女は自分とは違う、普通の生活を送っているんだ。だからそんな気楽なことが言えるのだと、ひねくれた思考が頭をよぎり、妬みという感情が溢れ出てくる。
「…辛さが和らぐ?…何か出来るかも?」
「え?」
「そんなことができるなら僕はここまで苦しんでない!」
身体が熱い。
「僕は君とは違う!」
どんどん熱くなる。
「君に僕は分からない!」
渡り廊下の木製の柱が黒く焦げてきた。
「僕は…」
涙が出てくる。
「僕は…!」
その涙は蒸発していく。
「僕は普通じゃないんだ!!!」
体は熱くなるばかりだ。
「…はっ!」
正気に戻った。
柱や床を見てみる。
黒くなっていた。
焦げの匂いが辺り充満している。
彼女は大丈夫か!?
庸は過呼吸になりながら前を見た。
「……」
彩楓は驚いた顔をしながら立ち尽くしていた。
左手を押さえている。
怪我をさせてしまった。
そして見られてしまった。
僕の化け物を見られてしまった。
庸は頭を抱え、自分の髪を掴み震えていた。
『近寄るな!』
僕のトラウマが頭をよぎる。
すると彼女が口を開こうとする。
庸は目をギュッと閉じ、身構える。
「大丈夫。」
思わず目を見開いたが視界は床を見ていた。
聞き間違い?
そう疑わずにはいられなかった。
「落ち着いて。」
彼女の言葉は聞き間違いでも嘘でもない。
ただ優しい声色が僕の中に響いていた。
僕は恐る恐る正面を見る。
彼女は僕に手を差し伸べ、本当に優しく微笑んでいた。
彼女の髪色は水色になっていた。
「とりあえず、保健室に行こうか」
僕たちの表情は変わらないままだ。
ーーー
ここは保健室。
医薬品の独特なにおいが鼻をつついていた。
僕の目の前では彼女が保険の先生に左腕を差し出し、手当てをされていた。
僕はその光景を無言で見ていた。
大丈夫だろうか。
僕のせいでけがをしてしまった彼女を、心配することしかできなかった。
すると彼女がこっちに顔を向けて、治療されながら先生に話し始めた。
「彼の周り、温度が変わってました」
「えぇ、だからあなたに案内役を任したの。似た境遇のあなたに」
似た境遇...
確かに彼女はさっき、髪の色が水色になっていた。
まさか僕のほかに同じような体質の人がいるなんて。
彼女は先生に体を向け直し、口を開く。
「とりあえず、事情は分かりました。何をするかは帰ってから考えて、明日行動してみます」
「分かったわ。もう暗いから気を付けて帰ってね」
先生はそう言うと同時に彼女の腕の治療を終わらした。
そのあとは彼女と一緒に靴箱まで行き、そのまま別れた。
その間、会話は一つもなく、目も合わなかったが別れ際に彼女が一言言った。
「五十川君。明日も学校来てね」
彼女はさっきと同じように優しく微笑んでいた。
ーーー
翌日、僕は学校に来ていた。
何かが変わるかもしれない。
そんな期待が僕の足を動かしていた。
自分の教室に入る。
「ん?おはよー」
彩楓さんが僕の顔を見た後、笑顔で声をかけてきた。
まるで昨日のことなんてなかったかのように、普通に挨拶をしてきた。
「今日の放課後、予定ある?」
「...いや、何もないけど」
昨日言って事だろうか。
何をするかわからないけど、何もしないよりかはマシかもしれない。
「じゃあ放課後、隣の教室に来てね」
俺はその言葉にうなずいた。
ーーー
放課後になり、僕は彼女の言った通り隣のクラスに行こうとし、その教室の前まで来ていた。
ドアの取っ手に手を置き、恐る恐る開ける。
「お、きたきた」
すると彩楓さんが待ってましたと言わんばかりの声色で僕を迎えた。
教室の中には彼女のほかに三人の人がいた。
「今日は紹介したい人がいるんだ」
そういうと彼女は紹介をし始めた。
「まずそこのサイドテールの子、浪風 水鳥ちゃん。とても気さくで、いつもみんなと楽しくお話してるの!家は漁業をしているんだって」
「どうも~!」
水鳥さんは満面の笑みで言った。
顔は見たことある。
同じクラスの子だ。
「次にこの髪がボサボサの男は、東 太陽君。こんな見た目だけど案外ノリがいいやつだからね。あとパソコンとか得意!」
「結構ひどいこと言ってね?」
太陽君はジト目で言った。
これ何の時間なんだ?
「最後にこのストレートロングの子は、晴乃 朔良ちゃん。強くてかっこいい!頼れるお姉さん!バイクも乗れるんだよ」
「そこまでたいそうなことじゃないけどな~」
朔良さんは苦笑いで言った。
彩楓さんは一体何をしたいんだろう。
そんなことを思っていると、彩楓さんが話し始める。
「いつもこの四人でつるんでるんだけど、庸君、君とみんなで今からお友達になります!」
「...は?」
はてなしか浮かばなかった。
何考えてるんだ?
「とりあえず、しばらくはこの五人で遊んでみようよ」
「え...いや...」
まったく状況がつかめない。
どうしよう。
まずこの人たちは僕の化け物を知っているのだろうか?
すると彩楓さんが近くに来て小声で言ってきた。
「君の体質については何も言ってないよ」
「え?」
もしかして超能力者か?
そう思うぐらい頭の中を読まれた。
「君の了承なしで言うのはどうかと思ったからね」
「何の話してんの?」
「なんでもな~い」
彩楓さんは水鳥さんをごまかし、そのまま話し始める。
「ま、とりあえず。君にここを慣れてもらうために一緒に行こう!ってことなんだけど。大丈夫?」
彩楓さんは僕に問う。
正直怖い...
けど知りたい。
どうやって彩楓さんは自分の体質を乗り越えて、みんなと対等に接し合っているのかを。
「...分かった。とりあえず今は、一緒にいるよ」
「マジ?やった!」
「うっし!よろしく!」
「男一人しかいなかったから助かる~」
「よろしく~」
本当にこれでよかったかはわからないけど、とりあえず頑張ってみよう。
そう決意した。
「じゃあ早速...」
「...え?」
ーーー
「わー!かわいい!」
「似合うよ水鳥」
僕は今、学校近くのショッピングモールに来ていた。
というか連れてこられた。
今は、モール二階の服屋で水鳥さんと朔良さんが服を吟味している。
僕と彩楓さんと太陽君は服屋の前で二人を待っていた。
「ふふ…庸君、どう?ショッピングモール。」
「いきなり連れられてきてどうも何もないよ...」
「そりゃあそうだ。」
「そっか...」
そんな会話をしていると、中の二人が服の袋を手に持ちながら出てきた。
「買った買った~」
「次どこ行く?」
「ゲーセン行こうぜー」
三人は今日初めて会ったのに、それがまるでいつも通りなのかと思うくらいにラフだった。
ーーー
「〜♪」
「咲良歌うま〜い!」
次の週、僕たちは学校帰りにカラオケに来ていた。
まさか転校してから一週間で人とカラオケに行こうとは...
「曲入れた?」
太陽君が僕に話しかけてきた。
「...ううん」
こんな状況で歌えたらその人を素直に称賛したい。
すると太陽君は頭の後ろに手を組みながら言った。
「...ま、そうだよな~。こんな状況で歌えたら称賛するわ」
「…え?」
自分が考えたこととまんま同じことを言われて少し焦った。
「まぁ…アンタの気持ち、少し分かる気がするんだ」
「…」
僕の気持ちが分かる?
何を言ってるんだ?
「何言ってんだって顔だな」
太陽君は上半身を前に倒し、僕の目をしっかりと見て言う。
…この学校には超能力者しかいないのか?
僕は少し驚き、そんなことを思った。
そして彼は、ゆっくりと体勢を崩しながら、
「ま、いつか分かるかもな」
そう言った。
「…いつかって、いつ?」
自分で言って驚いた。
つい興味本位で口走ってしまった。
すると彼は柔らかい笑顔でこう言う。
「それは…お前次第だよ」
それ以上会話は続かなかった。
ただ、
大きな歌声に包まれているこの空間で、僕にだけはその言葉が頭の中で響きわたっていた。
ーーー
それからも学校の放課後や休みの日にどこかに連れていかれた。
映画館や水族館にカフェ、水鳥さんの実家で釣りもした。
転校してから一か月、今までに体験したことない友達との交流に、少し楽しさが芽生えた。
けれど僕の化け物については、まだ言えてない。
まだ、僕の中にはトラウマが残っている。
「今日は遊園地!」
彩楓さんが遊園地の入り口の前で大声を上げていた。
それに太陽君が注意する。
「彩楓、恥ずかしいからやめよ?」
それに続いて朔良さんも口を開く。
「そうだよ。公共の場だよ?」
「えへへ~。ごめ~ん」
「注意されてやんの~」
僕はこんな会話に慣れきっていた。
「とりあえず行こう!」
彩楓さんがそう言い、僕を含めた四人はそれについていった。
遊園地に入るや否やメリーゴーランドやバイキング、お化け屋敷などいろんなアトラクションを堪能した。
初めて遊園地に来たわけじゃないが、すごく楽しい時間だった。
僕の周りはとても暖かい。
「今度あれ!あれ乗ろう!」
「オッケー!」
「ちょ、待ってー」
水鳥さんはジェットコースターを指さし、僕たちを誘った。
それに朔良さんが答え、太陽君が二人に追いつこうとしていた。
あの三人は元気だな。
僕は少し疲れを感じ走ることができなくなっていた。
「庸君、大丈夫?」
彩楓さんが僕の様子を見て心配しに来てくれた。
髪色が少し水色がかっていた。
「うん。大丈夫。少し休憩するよ。気にせず楽しんでて」
「そう...?じゃあ、待っててね」
そういうと髪色が元に戻り、ほかの三人のところへ行っていた。
ーーー
「ふぅー」
僕はジェットコースターの入り口前にあるベンチに腰を掛け、リラックスしていた。
もう夕方だ。
楽しいけど...本当に今までいいのかな。
みんなに打ち明けないといけないよね。
そんなことを思っていると、声が聞こえてきた。
「あれ?あいつどこかで...」
その声には聞き覚えがあった。
僕は冷や汗が止まらなくなり、身体が震え始めた。
「あ!やっぱり!」
なんでこいつがここに...
「よう。”化け物”」
その瞬間、僕の頭の中に走馬灯のように記憶がなだれ込んできた。
ーーー
『よう。化け物。』
『やめてよ...僕は化け物なんかじゃ...』
僕が俯き、相手は笑っていた。
僕の周りは少し凍っている。
『いや現に化け物じゃん。感情で温度が変わるとか。みんな怖いよな?』
『う...うん』
『ちょっと怖い...かなぁ...』
周りのやつらはこいつに賛同していた。
『ほら...みんな同じ』
僕をいじめているこいつの名前は、田中 竜洋。
こいつの親は権力を持っていた。
その中でも高い地位を築いており、周りはその力に何もできなかった。
『襲われないよう、みんなでこいつを孤独にさせよう!』
『え?』
『そうだなぁ...こいつに話しかけたり、情けをかけようとしたら...まぁ何かしらの罰を与えよう』
みんな怯えていた。
時代にそぐわない悪口の書いた手紙なども家に来た。
それからの学校生活は孤独そのものだった。
『近寄らないで!』
『気味が悪い...』
みんなから言われた。
そして田中からは...
『この化け物め!!』
笑いながら言っていた。
これは僕が中学生の時の記憶だ。
ーーー
まずい。
動機が荒い。
最悪な奴に会ってしまった。
怖い。
周りが凍ってきていた。
「何か言えよ化け物」
彼の顔が見れない。
僕は俯きながら後ろを向き、そそくさ逃げようとした。
早くこの場所から逃げたかった。
走り出したその瞬間、僕の腕を誰かが掴んだ。
「大丈夫。」
僕はその声を聴き、パッと掴んできた人の顔を見た。
「君は一人じゃない。」
彩楓さんだ。
助けに来てくれた?
「うーん?誰?お前?」
「そっちこそ誰ですか?」
彩楓さんの髪の毛が赤になっていた。
怒っているんだろう。
表情も険しくなっており、田中を睨んでいた。
「あれ?化け物って二人いたんだ」
「化け物って...あなた、庸君をいじめて何がしたいの?」
「何か理由が必要?」
田中はヘラヘラしながら言った。
「...折角庸君も馴染めてきて、みんなと仲良くなってきて、とってもいい感じだったのに」
彩楓さんの髪の毛から赤が垂れてきている。
「あっそ、まぁ俺には関係ないね」
「...」
彩楓さんは大きく息を吸い口を開く。
「彼は大事な”友達”なの...。これ以上彼に何かあったら...許さない...!」
「はぁ〜?」
彼女の怒りのオーラが伝わってくる。
それはもう殺しそうな勢いだ。
すると、遠くから人が近寄って来て僕を庇う。
あの三人だ。
「大丈夫!?」
「何があったんだ?」
「彩楓、落ち着いて」
みんな心配して来てくれた。
とても暖かい感覚だ。
「チッ。まぁいいや。またな化け物共」
「...ッ!またアイツ...!」
人数不利になったからか田中は逃げていった。
助かった。
「みんな...ありがとう」
みんなの目を見てはっきりと感謝を述べた。
「ごめんね、遅くなって」
「水鳥さん…来てくれただけでも有り難いよ」
本当に有難かった。
「まさかこの世界に彩楓みたいなやつがいるとは」
太陽君が僕の周りの凍った部分を見ながら言う。
そういえば僕の体質見られちゃった。
「まぁ、いいでしょ。兎に角無事でよかった」
でも大丈夫そうだ。
さっきまで悩んでたのが馬鹿らしくなるほどすぐに受け入れてしまっていた。
「どうする庸君?帰ろうか?」
髪色が戻っていた彩楓さんが僕に提案する。
「いや、僕、ジェットコースター、みんなで乗りたいな」
人生で一番素直になれた気がした。
そんな僕を見て、彩楓さんは微笑みながら言う。
「...オッケー!じゃあ乗ろう!」
「しゃ来た!」
「マジ?俺ヘトヘトなんだけ―――」
「いいから行くよ」
僕の我儘にみんなついてきてくれた。
こんな光景見られるとは思っていなかった。
僕は今、とても恵まれている。
少し微笑みながらそう思った。
「彩楓...ねぇ」
誰かが物陰で庸たちを見ながらが言う。
でもそんなことは庸たちには聞こえもしなかった。
ーーー
帰りのバス。
一番後ろの席を五人で使い、僕は窓側に座り、その隣に彩楓さんが座った。
他の三人は、疲れたか寝てしまっていた。
あたりはすっかり真っ暗だ。
「ねぇ、彩楓さん」
「ん?」
僕は少し疑問に思ったことを彼女に質問する。
「”友達”ってどういうものなの?」
「え?う~ん...」
彼女は少し悩んだ後に答えた。
「自分の悩みを聞いてくれたり、協力してくれたりしてくれる人...じゃないかな?」
それを聞いてもう一つ疑問が思い浮かんだ。
「それって、親と何が違うの?」
彩楓さんは少し考え込んで答える。
「親は...子供の成長を支えたり、我儘を聞いてあげる人だと思うよ」
「...そっか」
友達って、結構重要なんだなぁ。
彼女の答えを聞いて、友達のありがたみが少し強く感じれた。
「明日は学校だし、早く帰ってゆっくり休もう!」
「...うん」
僕もさっきのみんなみたいに”友達”を助ける存在になりたい。
そんな、今まで思ったこともないことが頭の中に浮かんできた。
ーーー
「隼がこの学校を退学するそうだ」
「...え?」
急なことだった。
いつも通りの朝のホームルームで先生が言った。
一週間前まで一緒に遊園地に行って、学校にも通っていたのに。
どうしてそんな。
僕は水鳥さんの方を見る。
いつも明るい水鳥さんでも今回のことは動揺しているようだ。
さすがにそうか。
まず、みんなと話し合わないと。
ホームルームが終わり、水鳥さんと一緒に隣の教室に行こうとすると、廊下で太陽君、朔良さんが待っていた。
どうやら彩楓さんの退学はもう知っているようだ。
「どうしていきなり...」
「分からない...けどあまりにも急すぎる」
僕ろ太陽君はそのまま廊下で話し合い、ほかの二人も口を開いた。
「退学した理由を知りたいよね」
「先生に聞けばいいんじゃない?」
「いや、さっき聞いたけど何故か先生みんなはぐらかしてきた」
はぐらかしてきた?
太陽君の口から変な言葉が出てきた。
「先生でも話せないこと?」
「それか、先生たちも知らないんじゃないかな」
謎しか残らない。
そんな中、水鳥さんが不安そうに話し始めた。
「ねぇ、これからどうしよう...。彩楓ちゃんにまた会えるかな?」
「...」
無言の時間が続いた。
僕はその沈黙を破り言う。
「分からない。けどやれることはある」
みんなが僕の方を向く。
「それって...?」
朔良さんがそう疑問を投げかける。
「...彩楓さんの家に行こう...!」
僕はそう答え、決心した。
ーーー
その日の放課後。
僕たちは夕日で赤く照らされていた彩楓さんの家の前にいた。
彼女の家は、和風な雰囲気を持っている二階建ての一軒家だった。
「本当にここでいいの?」
「うん。前に来たことあるから間違いないよ。ね!」
「うん。そうだよ」
水鳥さんと朔良さんが知っていてよかった。
「じゃあ...」
そういいながら僕は家のベルを鳴らす。
「はーい...」
中から女性の声が聞こえてきた。
声的に彩楓さんではなかった。
するとドアが開き、人が出てくる。
「どちら様ですか?」
彩楓さんの母親だろうか。
心なしか目の周りが赤く見えた。
水鳥さんが口を開く。
「あの、お久しぶりです。水鳥です」
「ん?...ああ!水鳥ちゃん!それに朔良ちゃんも!久しぶり」
水鳥さんと朔良さんはあったことあるみたいだ。
次に朔良さんが話し始めた。
「突然すみません。彩楓ちゃんは...?」
「...」
その瞬間彩楓さんのお母さんは俯いてしまった。
「あ、あの...」
「...ここじゃなんだから、中で話しましょう。入って」
ーーー
異変があったのは、あの子が5歳の時でした。
あの時は、ママ!ママ!って甘えてきてくれていました。
あの子、お皿を洗うのを手伝ってくれていたんです。
でも、その途中でお皿を一枚割ってしまって…。
そのお皿は私がお気に入りのものだったので、怒られると思ったのでしょう、それはもう大泣きで、必死に謝ってきたんです。
「うぅ…、ママ…ごめんなさい…」
親心か、私はそんな娘も愛おしくて、頭を撫でながら慰めました。
「大丈夫、大丈夫。ママ、怒ってないから」
その時、私の手に違和感を感じました。
そっと確認すると、手のひらが淡い青で染められていたんです。
彩楓に視線を移すと、髪が手のひらと同じ淡い青色に変化しており、娘の周りの床にはその色と全く同じ色が散らばっていました。
この日から全てが変わりました。
幼稚園ではこの髪のことをいじられ虐められ、メディアに偶然にも発見され家に押し寄せられ、夫は周りの目線が怖くなり逃げてしまいました。
「ママ、大丈夫?」
正直、限界でした。
全てを投げ出したくなるようなことが幾つも続けて起こったのですから。
ですが小学生になった娘は、こんな状況でも私の心配をしてくれました。
私は、そんな言葉に泣き、膝から崩れ落ちてしまいました。
「大丈夫、大丈夫。きっと全部上手くいくよ!」
娘は私を抱きしめながら、なんの根拠も無い言葉を言いました。
ですがそれは私を救い、今までこの言葉を励みに生きてきました。
ーーー
リビングに着くと彩楓さんの母親は、僕たちの目的がわかっているのか彩楓さんの過去の話をしてくれた。
その内容は僕たちが思うよりも残酷で凄惨なものだった。
「私は、あの子に背負わせすぎた…。甘えてしまっていたんです」
机を挟んで目の前には、彩楓さんの母親の後悔して光を失っている目があった。
そしてその目の周りは赤く腫れていているのがわかる。
「あの…彩楓ちゃんは…?」
重苦しい空気が続く中、最初に口を開いたのは水鳥さんだった。
「彩楓は…」
彩楓さんの母親は少し言葉を詰まらせながらも、深呼吸し言う。
「彩楓はここにはいません」
「え?」
水鳥さんから素っ頓狂な声が漏れる。
「いなくなってしまったんです」
「……」
空気が重くなるのを感じる。
「もしかしたら、私に愛想をつかして出ていって―――」
「それは違うと思います!」
反射だった。
咄嗟に出た自分の声に驚きながらも、僕は言葉を並べた。
「親ならわかるはずです!彩楓さんはそんなことはしないと思います!」
僕は後ろにいるみんなに目を配らせた。
みんな頷いているようだ。
僕は彩楓さんの母親の方に顔を向き戻し、話し始める。
「家を出ていったのはなにか理由があるはず…、親には言えないことがあると思うんです」
「…」
彩楓さんの母親は真剣に話を聞いてくれている。
「親は子供の成長を支えたり、我儘を聞いてあげる人だと思います。そして友達は、自分の悩みを聞いてくれたり、協力してくれたりしてくれる人だと思います」
「…!」
彩楓さんの母親はなにか聞き覚えがありそうな反応を見せた。
僕はそれを感じながら話を続ける。
「親に解決できないときは友達がなんとかします。」
一息置いて言う。
「彩楓さんを任せてもらってもいいですか。」
自分史上最大の勇気を出した瞬間だったと思う。
彩楓さんの母親は一瞬固まったがすぐに口を開き、震えながら発言する。
「…よろしくお願いします」
その決心の一言を。
ーーー
「さて、どうしようか」
あのあと、僕らはどう彩楓さんを助けるか話し合っていた。
すると2階からドタバタと降りてくる音がする。
「ねぇ!彩楓ちゃんの部屋からこんなものが…」
降りてきたのは水鳥さんだった。
2階には彩楓さんの部屋があるらしく、水鳥さんの手には白い手紙が握られていた。
中身には
「倉庫で待っている」
とだけ書かれていた。
「こんな時代に手紙?しかも端的…」
この時代に手紙を使う人…
僕には心当たりが合った。
「田中くんだ…」
「え?」
「この前遊園地で会った人だよ」
「あ!あの人?」
きっとこれも僕への嫌がらせ。
「僕がケリを付けなきゃ」
「でもお前…」
太陽君が心配してくれているみたいだ。
でも…
「大丈夫。友達のためだもん」
太陽君を少し驚いたあと、そうかと頷いた。
「ならまずその倉庫に行こう」
太陽君はその場を仕切りながらスマホを開く。
咲良さんは少し眉をひそめて尋ねる。
「でもあんな端的な文じゃどこの倉庫か分からないんじゃない?」
僕もそう思っていた。
だが太陽君はその質問が来るのをわかっていたのか、自信に満ちた顔をしながら手に持っているスマホをこちら側に向けてきた。
「アイツほど探しやすい人間なんて、全世界探してもお前ぐらいだろうな」
スマホの画面にはSNSの写真付きの投稿が写っており、その写真には黒色のペンキのようなものが壁や床に飛び散っている様子が収められていた。
それを見て僕たちは一瞬で彩楓さんの色だとわかった。
さらにこの投稿には、この写真が撮られた場所などが書かれており、その場所がこの近くであることがわかった。
「同じなんだ」
太陽君が突然言うその言葉に疑問を浮かべる。
同じ?いったい何と同じなんだ?
太陽君はその答え合わせをしてくれた。
「俺もアイツに救われた」
ーーー
俺は子供の頃からパソコンが好きだった。
それはもう夢中だった。
学校でもずっとひとりで機械いじり…
いつしか俺の周りに人はいなかった。
なんなら避けられてすらいた。
でも俺は特に気にしなかった。
必要ないと思ったから。
自分の好きなことができていればそれでいいと思っていたんだ。
でもある日…
「よしっ!サイコーのプログラムができた!」
・・・
放課後、完成間近のプログラムを終わらせようと学校に残っていた。
ついにできたこの文字列に素直に歓喜し、つい口にも喜びを出してしまった。
けれど、周りには誰もいない。
教室には俺の声が反発するだけだった。
「…」
あたりを見回す。
頑張って作ったプログラムも人がいなければ見せられない。
初めて虚しい気持ちになった。
いや、もしかしたら初めてではないのかもしれない。
ずっと前から、俺は寂しかったんだ。
「ねぇ」
自分以外には誰もいなかったはずの教室から声が聞こえてきた。
「うわぁ!」
急な出来事に、ドタンと尻もちをつきながら驚いてしまった。
いつからいたんだ?
そんな疑問が頭の中で回っていると、彼女は話し始めた。
「急に話しかけてごめんね。大丈夫?」
彼女は申し訳なさそうに言う。
そうだ、思い出した。
この人は髪色が変わるで有名な隼さんだ。
「いや大丈夫。」
俺は埃を払いながら立ち上がり、彼女に自分の疑問を訪ねてみた。
「あの…いつからいたんですか?」
「あぁいや、今来たところだよ。友達が部活で帰るの遅くなるって言うから、それ待つために教室に戻ってきたって感じ」
そうか…。
じゃあさっきの独り言は聞かれていないか。
そう思っていると彼女が話しかける。
「きみは何してたの?」
ドキッとする。
俺が何をしていたかなど、話しても多分彼女には理解できないだろう。
そう思い、うまく言葉が出ずにいると彼女が口を開いた。
「別に理解されなくてもいいんだよ」
「え?」
どういうことだ?
理解されなくてもいい?
「たとえ、君がしていたことが他の人がわからないことでも…」
彼女は少し微笑みながら、
「自分の好きなことを話すって、楽しくない?」
目を見開いた。
その言葉は、俺にとってとても衝撃的だった。
「で…でも、そんな自己的でいいのかな」
「いいんだよ」
彼女の目はまっすぐこちらを見ていた。
「好きなことには素直にならなくちゃ!」
ーーー
「それから、俺と彩楓と水鳥の三人で遊ぶことが多くなった」
そんなことがあったのか。
周りと違う…
周りと馴染めない…
気持ちは、とても分かる。
「俺もお前もあいつに救われた。」
太陽君は両手をバッと広げ、続けて言う
「俺達だけじゃない。ここにいるみんなあいつに救われた。」
あぁ、わかってる。
「だから今度は、僕達が救う番だ」
そういうと太陽君はニコッと笑って、
「頼むぞ」
そう言った。
ーーー
ブーン…
あの後、咲良さんがバイクを取りに行ってくれた。
「乗って」
バイクに乗っている姿は初めて見た
様になってるな、なんて考えつつ、僕は急いで咲良さんの後ろに乗りヘルメットをもらう。
「じゃあ、行ってくる」
後ろにいた太陽君と水鳥さんにそう言った後、ヘルメットを被る。
「後で合流するから!」
水鳥さんの元気な言葉を聞きながら、バイクは走り出した。
ーーー
しばらく太陽君が特定してくれた場所を確認しながら走っていたが、その間会話はなかった。
そういえばこの一か月、咲良さんと二人きりで話したことがない。
別に変な理由はない。機会がなかっただけだ。
彼女の事は何も知らない。けれど、
……何故か無性に気になる。
前までの僕だったら気になるなんて考えなかっただろう。
聞きたいけど失礼じゃないかな。
うーん…と悩んでいると咲良さんが話しかけてきた。
「私、かっこいい物が好きなの」
「え?」
「私の事、知りたいんじゃないの?」
驚いた。最近よく心の中を見透かされている気がする。
僕ってそんなに分かりやすいのかな。
「うん、知りたい」
僕がそう言うと咲良さんは自分のことを話してくれた。
「私は昔からかっこいいものが好きで、いいなって思うものは全部男物だった。そのせいで、親とかクラスメイトとか色んな人から変って言われてた」
ヘルメット越しでも分かるほど彼女から哀愁が漂っていた。
「自ずと自分も変だって思ってきて、一時期好きなものを我慢してた、けどそんなとき彩楓達と出会ったんだ」
少し声色が柔らかくなった気がする。
「言ってくれたんだ。『変じゃない』って。その言葉のお陰で今は我慢せず、自分の好きな物に素直になってる」
暖かいオーラが彼女を包んでいる。
そうか、例え特殊な身体じゃなくてもみんな悩むことは同じなんだ。
みんな周りと違うことに悩んでる。
「さっさと救って、またみんなで遊ぼう」
咲良さんはふっと笑って言う。
「うん。急ごう!」
ーーー
倉庫…
手紙で呼ばれた場所だ。
辺りはもう真っ暗だ。
自分の髪から白い色が漏れ出ているのが分かる。
呼び出した奴は想像できる。
倉庫の中に入るとその張本人に向こうの壁から声をかけられた。
「彩楓ちゃ〜ん。色、漏れてるよ〜」
苛つかせるような口調のそいつを睨む。
「おいおい、そんなに睨むなよ。人から化け物を遠ざけるためにお前を退学にしてやったんだぜ?」
「やっぱりあんたがやったんだ」
不敵な笑みをするそいつをさらに睨む。
「なんでこんなことするの」
「なんでって…、そんなのお前らが俺等と違うからだよ」
煽るように言われる。
「お前らみたいな化け物が気持ち悪くてたまらない。だから避けるんだ」
「…」
今まで何回言われたことか。
もう慣れたと思ってた。
「お前が友達だと思っている人も、親も、心の中ではお前を避けてるよ」
「…」
そうなのかもしれない。
気持ちが下がっているせいか、ネガティブな思考が頭を回りどんどん顔が下を向く。
「なぁ…そろそろ分かったろ?お前はこの世界に必要ーーー」
「あるよ」
「!」
ーーー
間に合った!
彩楓さんの髪や周りが白くなっている。
そんな彩楓さんの前に立ちあいつの方へ向く。
「相変わらず、人をあざ笑うのが好きだね。わざわざこんなところに呼び出してまで」
「なんでお前がいるんだよ」
驚いている様子のあいつを睨みつけ、呼吸を整える。
すると後ろからか細い声が聞こえる。
「庸君…」
こんな彩楓さんの声は初めて聞いた。
僕は彼女を安心させるよう、彼女が僕にしてくれたように言う。
「大丈夫。」
彩楓さんはどこか聞いたことある言葉に目を見張る。
「おい!無視すんなよ化け物ども!」
遠くからあいつの声が聞こえる。
あいつにぶつけなければ。
僕の気持ちを。
「田中くん。君は僕達を普通とは違う化け物だと言うけど、じゃあ普通って何なんだ」
「は?」
あいつは僕の急な言葉に疑問符を浮かべる。
僕は気にせず話を続ける。
「ある人はほかと趣味が合わず、ある人は周りに理解されない嗜好を持っている。でもその人にとってはそれが普通だ。常識だったんだ。」
これはもちろん僕の友達二人の話だ。
この話を聞いてようやく分かったんだ。
「普通っていうのは人それぞれなんだ。だからーーー」
周りが熱くなるのを感じる。
片手を自分、もう片方自分の周りに指して言う
「これが僕の普通だ!」
自分でも出したことない大声をあいつに浴びせる。
「そうかよ…、でもそんなの関係ねぇ。その気になればお前も退学に…いや二度と社会に出られないようにーーー」
「おーい!」
反撃しようとしてきたあいつの言葉を遮ったのは水鳥さんだった。
その後ろからぞろぞろと人が倉庫に入ってくる。
「とりあえず商店街の人に声かけたりしてきたよ!」
「彩楓ちゃん!大丈夫かい?」
「おじいちゃん…」
彩楓さんは顔が広い。
商店街の人たち全員が心配の声を上げている。
その中にはいつもの三人もいる。
「チッ」
人が多くなり、あいつも余裕がなくなってきた。
僕はそいつに言う。
「もし君が僕になにかしようとしても、今の僕にはみんながいる。もう一人じゃないから乗り越えられる」
「…」
僕はさらに追い打ちをかけるように言う。
「でも君は一人だ。これまでもずっと一人だった」
「っ……!」
心当たりがあるのだろう。
明らかに動揺したそいつに言葉を紡ぐ。
「君が一人なら、僕は負けないぞ」
すると、あいつはクッと言い背を向けながら走り倉庫を出ていった。
「ふぅ…」
僕は一呼吸し、安堵で崩れ落ちる。
「彩楓!」
「水鳥ちゃん…」
後ろを向くと名前を呼びながら彩楓さんに飛んでいく水鳥さんがおり、その後ろから他の二人や商店街の人達が集まっていった。
彩楓さんの髪色は緑色になっていた。
ーーー
あれから10分程経ち、商店街の人達やあの三人と話していくうちに彩楓さんも落ち着いてきた。
すると急いできたのだろうか、少し息切れしている彩楓さんの母親が来て彩楓さんの近くに寄る。
「あ、彩楓…」
「お母さん…」
お互いに目を逸らし、彩楓さんの髪色は少し灰色になっていたが、彩楓さんの母親が口を開く。
「彩楓…私はーー」
「お母さん。」
彩楓さんは母親の言葉を遮る。
「勝手にいなくなってごめんなさい」
「…!そんな、あなたは何も…」
「でももう大丈夫だよ」
母親は目を見張り、少し涙目になる。
「だってボクにはこんなに素敵な友だちがいるんだもん」
母親は無言で彩楓さんを抱きしめ、彩楓さんもそれを抱き返す。
その光景を見ていた水鳥さんは涙腺の決壊が起こりそうだった。
しばらく抱いた後、彩楓さんはゆっくりこちらに向かってくる。
「ありがとう。助けてくれて。一生分の恩ができちゃったな」
「いや、彩楓さんのお陰で立ち向かえたんだ。こちらこそありがとう」
お互いにお礼を言い合う異様な光景に少し笑いながらさっき思ったことを言う。
「というか、彩楓さんって一人称ボクなんだ」
「あれ?知らなかった?」
「聞いたことなかったよ」
「じゃあ覚えておいてね」
彼女は僕に手を差し伸べ、本当に優しく微笑んでいた。
「これがボクの普通だからね!」
ーーーーー
快晴。
今日は久しぶりに五人全員が揃って出かける日だ。
俺は待ち合わせ時間ぴったりに駅を降り、待ち合わせ場所に向かっている。
「太陽!」
ん?と呼ばれた方へ顔を向かせると、そこには水鳥と咲良がいた。
「よう。お前らもいま来たのか?」
「うん!そうだよ!」
「あとはあの二人だけだね」
そう言いながら咲良が辺り見渡すと少し微笑む。
「やっぱりわかりやすいね。あの二人は」
「ん?あぁ、そうだな」
咲良が見た方を見ると、そこには人混みの中でも分かるオレンジ色の暖かさを放っていた。
小説って本当に難しい…
書いている間に期間が空いているので少し違和感があると思いますが気にしないでください。
これからもちょくちょく書きます。
次は連載だーーー!




