表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銃と魔法のダンジョン世界でクリアするまで出られないデスゲームが始まりました  作者: 木山碧人
第二章 ガンズオブインフェルノ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/74

第69話 合否発表


「次に、最終試験の結果を言い渡す」


 喜んでいる暇はなさそうだ。


 神父の一言に、場は再び緊張感に満ちていく。


(どうなったんだろう。予想がつかない)


 勝負が引き分けで終わっても、試験はまた別物だ。


 過程で評価すると言われたけど、全く予想できなかった。


(全員、合格してくれてたらいいんだけど……)


 言いようのない不安を覚えつつ、結果の報告を静かに待った。


「合格者は五名。不合格者は一名だ」


 そして、なんの気なしに語られる神父の言葉に、全員の表情が凍る。


(誰かが、落ちた……)


 全員が合格してくれたらいいな。なんて幻想はいともたやすく砕け散った。


「一体、誰なんすか。その落ちた人ってのは……」


 そんな中、恐る恐るメリッサは結果を尋ねていく。


「お前だ、メリッサ」


 ただ、皮肉にも、不合格を言い渡されたのは、その本人だった。


「どうして、っすか……」


 各々が顔を見合わせる中、メリッサは、疑問を口にする。


「人狼という役割を無視し、正体を明かした。よって不合格とする」


「……待ってください。それなら、俺も、正体を明かしたはずです」


 人狼であることを明かしたのは、同じ。


 メリッサが不合格なら、自分も不合格としか思えなかった。


「お前は盗賊という役割を全うし、人側を引き分けに導いた。よって合格とする」


 役割。その言葉には聞き覚えがあった。


『期限は一か月。与えられた役割を全うし、どんな手を使っても勝ち残れ』


 それは、この世界へ来る直前に言われた言葉だった。


(役割を全うしろって、そういう……。もっと早くに気付いていれば……っ!)


 そこで、ようやく理解する。今回も神父の方が、一枚上手だったことに。


「うちは、この後どうなるんすか?」


 そう考えているうちに、メリッサは質問を重ねていく。


「虚大樹の地下にあるダンジョン――コキュートスの最下層攻略をしてもらう」


 軽い問答の末、神父が言い渡したのは、あまりにも重すぎる罰。


「「「「「……っ!?」」」」」


 全員が揃って息を呑む程度には、理解していた。ダンジョンの恐ろしさを。


「……地獄送りってわけっすか」


 その中で一人、事態を冷静に受け止めていたのは、他でもないメリッサだった。


「不満か?」


「いや、うちみたいな化け物には、うってつけの場所じゃないっすか」


 メリッサは自嘲気味にそう言って、話を進めようとしていく。


 大事なことなのに、冗談で流すような反応に、感情が抑えられない。


「……それなら、俺も、志願させてもらえませんか」


 気付けば、そう口走っていた。強がっているのが、目に見えて分かったからだ。


「許可しない。お前には、やるべきことがあるはずだ」


「それは……」


「心配しなくても、いつか、また会えるっすよ。うちは死なないっすからね」


 言葉に詰まっていると、メリッサは何でもないように笑顔でそう語る。


「でも、それじゃあ、あんまり、だよ……」


 見ていられなかった。


 メリッサは死ぬのを怖がっていた。


 本来なら、笑えるわけがないんだ。こんな状況で。


「何か成果があれば、戻ってこれるんすよね?」


「ああ。最下層からリターンを獲得すれば、帰してやる」


「ほら、聞いたっすよね。気にしなくても大丈夫ってことっすよ」


 うん、そうだね。って軽く聞き流せば話はきっと終わる。


 頑張って。なんて当たり障りのない言葉で見送ることもできる。


 だけど。――だけど。


「恩赦で、メリッサを、地上に戻せますか」


 できるわけないだろ。そんな無責任なことが。


「可能だ。それ相応の成果を出さなければ、当然、認めないが」


「ほら、聞いたよね、メリッサ。俺が、いつか、きっと助けるから」


「ジェノさん……。もし、そうなったら、責任、取ってくださいっすね」


 それが愛の告白とでも思ったのか、メリッサは軽く頬を染め、囁く。


「ごめん、それは、無理」


「あぅ」


 無責任なことはしないけど、責任は取れない。それが、いい落としどころだった。


「……次に、合格者の配属先を告げる」


 すると、神父は二人のやり取りを歯牙にもかけず、話を進めていった。


「チバ・アザミ、代理者エージェント


「は、はい」


「パオロ・アーサー、代理者エージェント


「ああ」


「ルーカス・グローリー、監視者ウォッチャー


「へい」


「マクシス・クズネツォフ、殲滅者エリミネーター


「……」


「最後に、ジェノ・アンダーソン、代理者エージェント


「はい」


「以上だ。各種諸事項は追って知らせる。それまで各自、この町で待機していろ」


 そう言い残すと、神父は足音を立てず、病室から去っていった。


 ◇◇◇


 研究工房、主任室。


 長机と丸椅子が等間隔に並び、正面中央には黒板。


 黒板は複数のモニターになっていて、向き合うのは一人の女性。


「首尾はどうでしたか?」


 ナガオカは机に表示される電子キーボードを叩きながら、振り返らず言った。


「上々だ。報酬を与えると言えば、納得していた」


 背後には、黒い司祭服にサングラスをかけた神父が立ち、質問に答える。


「相変わらず悪辣ですね、あなたは」


「……それより、例の件の進捗はどうなっている」


「上々です。面白い戦闘データのおかげで、さらなる進化を遂げられそうです」


 ナガオカはエンターキーを押すと、複数あるモニターが一画面になる。


「具体的には、どう改良される」


 神父は、モニターに表示された『黒い腕輪』を目にしながら、尋ねた。


「有線から無線になり、秘匿通信を可能とし、催眠暗示機能を追加しました」


「……聖遺物レリック技術の科学的応用というやつか」


「はい。思念はフェンリルから、催眠暗示は忘却騒動の聖遺物レリックからですね」


 淡々と、ナガオカは機能を説明する。


 首輪の代替品な上に、更なるアップデートまで施されている。


「相変わらず優秀だなお前は」


「いえ、局長ほどではありませんよ」


 謙遜か、皮肉か、ナガオカは世辞を述べる。


 肯定するのも、否定するのも時間の無駄だろう。


「納期はどれぐらいだ」


「四週間もすれば、配給は可能でしょう」


 遅くはないが、早くもない。


「三週間で仕上げろ」


 可能なラインを見極め、要望を伝える。


「そう伝えておきます。嫌われ役は得意ですからね」


 無茶な要望には慣れているのか、ナガオカは快く引き受けた。


「名称は決まっているのか?」


 最後に残る問題はこれだ。今まで通りなら、嫌な予感しかない。


「――腕輪です」


 すると、返ってきた回答は、思った通りというべきか、素直すぎる名称。


「センスの欠片もないな。もう少しマシな名をつけろ」


 どうせ、まともな回答は返ってこない。


 そう思いながら、過度な期待はせずに再案を要求した。


「でしたら、人と人を繋げる装置――リンカーというのはいかがでしょうか」


 そこで出てきたのは、悪くはない案。皮肉が効いている点が高評価だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ