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銃と魔法のダンジョン世界でクリアするまで出られないデスゲームが始まりました  作者: 木山碧人
第二章 ガンズオブインフェルノ

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第63話 集金


 娼館。酒屋。草屋。カジノ。冒険者ギルド。


「お願いします、お金を貸してはいただけないでしょうか」


 ありとあらゆる場所を駆け回り、ジェノは頭を下げ続けた。


 気付けば、辺りは暗くなり、日も陰りを見せた頃、カジノ前に集合する。


「……まずいな。まだ、これだけしか集まってないのか」


 集まったヴィータの勘定を終えたパオロは、不安げに言った。


「まだ、目標額の三分の一にも満たないっすね、これじゃあ……」


 各々が奮闘するが、額が膨大すぎる。


 時間と人手が限られている以上、限界があった。


「ごめんね、支配人になり立てだから、信用がないのかも」


 そんな中、一番の功労者であるエレナが、申し訳なさそうに言った。


「いやいや、エレナがいなかったら、そもそもこれだけ集まってないっすよ」


 目標額の三分の一、とはいえ、ここまではエレナの影響力が大きい。


 カジノの支配人が賭けを取り仕切るとなれば、信用してもらいやすいからだ。


「……も、問題は、ば、博打をしない人たちの説得、ですね」


 問題点を、アザミは簡潔に述べる。


 実際に、各所を巡って生じた問題は、全てそこに集約していた。


「説得か……。期限は明朝まで。時間が足りんだろうな」


「一人一人に説得して回るのは、現実的じゃねぇってことか」


 マクシスとルーカスが言う通り、問題は時間。


 動かせる人数も限られているため、どうしても無理があった。


「ん? もしかしたら、前提が間違ってるんじゃないかな、それ」


 そこで、ふと、エレナは何かに気付いたような声をあげる。


「え? どういうことですか?」


 こうなった時の彼女は、かなり頼りになる。


 二次試験の時のように、いいヒントをくれている気がした。


「お金は少しずつ集めるんじゃなくて、賭ける人から限界まで絞ればいいんだよ」


「限界までって、これ以上どうやって――」


 カジノでの集金は、思った以上に上手くいっていた。


 割合で言えば、現在の賭け金の九割以上をカジノで集めている。


 すでに、限界まで絞っているような気がした。これ以上は寿命を削るしか。


「そうか……。タイムローンですね!」


 そこまで考えて、発言の真意をようやく、理解する。


 タイムローンは寿命を削りヴィータに変換できるシステム。


 現在、市場に出回っている以上の額を引き出すことが可能だった。


「そゆこと! タイムローンを使えば、説得できない人の分を補填できる!」


 エレナは人差し指を立て、高らかに言い放つ。やっぱり、頼りになる人だ。


「理論上は可能だろうな。だが、現実問題できるのか、そんなことが」


 だけど、そこに水を差すように口を挟むのは、パオロだった。


「というと?」


「あり金を賭ける度胸はあっても、寿命を賭ける度胸があるとは思えない」


「あ……それは……そうかも」


 確かにそうだった。誰もが死ぬのは怖い。


 命を賭してギャンブルをしてくれるわけがなかった。


「……やはり、必須だぞ。ギャンブラー以外を説得するのは」


「せめて、住民をまとめて説得できる手段があればいいんですけどね」


 この世界は、ネットも、テレビも、ラジオもない。


 情報伝達網が普及していれば、一発で解決しそうなのに。


「……待てよ。ドローンを使うというのは、どうだ」


 場が停滞状態の中、放ったパオロの一言。


「いけるかもしれません。早速、交渉してきますね!」


 それは、現状を打開できるかもしれない、試す価値のある一手だった。


 ◇◇◇


 研究工房、主任室。


「ドローンを貸してもらえませんか?」


「忙しいので、無理です」


 ◇◇◇


 夕暮れ。カジノバグジー前。


「駄目でした」


 あっけなく撃沈したジェノは、事情を知るパオロに報告する。


「お前、ちゃんと事情を説明したのか?」


「あ、手短にしか話してません……。だったら、もう一回」


「いや、いい。元々、ダメ元だったからな。別の手を考えるしかないか……」


 もう一回行っても良かったけど、否定される。


 報告の件を根に持っているのか、早々に見切りをつけていた。


「ん……? 誰に会いに行ってたんすか?」


 そこに、ぽつんと突っ立っていた、メリッサが怪訝な顔をして尋ねてくる。


「えっと、それは……」


 ここは誤魔化した方がいいだろう。母親の件は知られたくないはずだから。


「会ったのは研究所の主任だろ。名前は確か――」


 でも、事情を知らないパオロが、横やりを入れてくる。


「待って、それは」


「――ナガオカ・ミアっすよね」


 止めようとするも、遅い。メリッサの地雷を踏み抜いてしまっていた。


「なんだ、知っていたのか」


「依頼主の名前を見たんですよ、きっと」


「どうして、お前が答える。何か隠してるんじゃないだろうな?」


「い、いや、えーっと」


 駄目だ。上手く嘘が思いつかない。


「ほんと、ジェノさんは嘘が下手っすね。いいんすよ、無理しないで」


「でも、会いたくないんでしょ?」


「……そりゃそうっすけど、今は我がまま言ってる場合じゃないっすからね」


 そう語るメリッサの眼差しは、いつもと違って、凛々しく見えた。


(成長したな、メリッサ……。あの頃とは別人みたいだ)


 かける言葉が見つからない。本人がいいと言うなら、見守るしかなかった。


「何か事情があるようだな。詳しく話を聞かせてもらおうか」


「ナガオカ・ミアはうちの母親なんで、ドローンの交渉は任せて欲しいっす」

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