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銃と魔法のダンジョン世界でクリアするまで出られないデスゲームが始まりました  作者: 木山碧人
第二章 ガンズオブインフェルノ

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第62話 世界を変える大博打


 広場にある時計は午後五時を指している。


「時間だ」


 どうやら、討論が終わる時間は午後五時みたいだ。


 神父は、懐からタブレット端末を取り出し、そう告げてくる。


「事前に渡してある端末を使い、三分以内に投票を行ってもらう」


 端末には首輪のケーブルを接続でき、そこから各自投票という形となっていた。


「……」


 ジェノは投票を行わず、ある項目を探していた。


(ユーザー管理情報。あった、これだ)


 明日の投票まで、寿命がもつかの確認は計画上、必須。


 そのため、投票をすぐには行わず、時間の確認を優先していた。


『寿命――残り24時間3分12秒』


 項目を選ぶと表示されるのは、残りの寿命。


(時間、ギリギリだな……。確認しておかないと)


 間に合う気がするけど、ここは確実に不安を消しておきたい。


「寿命の減算って、ゲームが終わった時点で止まりますか?」


「ゲームの決着がついたと判断した瞬間に、停止させるつもりだ」


 ただ、それも問題なさそうだ。後は――。


「3、2、1、そこまでだ」


 確認作業をしつつ、画面を操作すると、あっという間に一分が経過する。


『――集計終了。結果、棄権6票。犠牲者なし』


 と、端末には表示されている。ここまでは予定通り。


「本日は以上だ。村人以外の者は夜、端末を確認しておけ」


 神父は端末を静かにそう言って、立ち去ろうとしている。


「待ってください。――俺と賭けをしてくれませんか?」」


 逃がすわけにはいかなかった。ここからが、本当の討論の始まりなんだから。


「私になんのメリットがある。賭けなど受けるわけが」


 神父が賭けに乗ってくれるかどうか。これで、勝敗は大きく左右される。


「――お金。町中のヴィータをかき集めて、それを賭け金にします」


「流通するヴィータの総数はおよそ、1万2000枚。それを全て集めると?」


 具体的な数字。それを出すことで、怖気づかせるつもりなんだろう。


「できます。……いいえ、必ずやってみせます」


 関係ない。やってやる。


 ジェノは、静かに神父を見つめていた。


 サングラスの奥にある瞳を、心の奥深くを見透かすように。


「勝てば黒貨を総取りか。悪くはない。だが、お前は勝った先に何を求める」


 ただ、相手も甘くない。今度はこちらが見透かされているように問われた。


「俺……いや、俺たちがあなたに要求するのは、二つです」


「聞いてやる。言ってみろ」


「首輪の撤廃と司法制度の導入。平和と秩序を世界にもたらしてもらう!」


 それは、平等を求めた革命ではない。対等を求めた――改革。


 円卓会議の末、導き出した、この世界を救済する一つの答えだった。


「どちらか一つでも成し遂げられれば、まさに偉業だな。……勝敗の条件は?」


「最終試験において、俺たち全員が生存した状態で、人狼が死んだ場合、こちらの勝ち。俺たちから死者が一人でも出れば、そちらの勝ち。制限時間は、明日の投票が終わり、結果が出るまで。でいかかでしょうか」


「条件も悪くはないが……負ければ、全員、死ぬ覚悟があるのか」


 神父は真顔のまま視線を合わせ、そう問うてくる。


 目が合ったサングラス越しの瞳からは、見えないのに怪しく輝いて見えた。


(……負けて死ぬのは、俺だけじゃ、ない)


 そこまでは考えていなかった。


 失敗すれば、自分が死ねばいいと思っていた。


 唐突に襲い来る不安。決めたはずの覚悟が簡単に揺らいでしまう。


「構わないっす」


「構わない」


「構わねぇ」


「構わん」


「か、構いません」


 風が吹いた。


「「「「「負けたら、命なんてくれてやる(っす)」」」」」


 背中を強く押してくれる、突風が。


「……これが、俺たちの覚悟です。引き受けてくれますか、勝負を」


 もう、不安はない。後は神父の返事を待つだけだ。


「――その勝負受けて立とう。私に勝てば、賭け金二倍払いのおまけ付きでな」


 神父は、サングラスをかけ直し、告げる。


 こうして、勝負が成立した。想定以上の最高の条件で。


「よっし!!」


「やったっすねジェノさん!」


 自然と拳を握り込み、メリッサは抱き着いてくる。

 

「ただし、明朝までに賭け金を用意できなければ、その時点で全員死んでもらう」


 ただ、甘くはない。越えなければいけない壁がいくつもあった。


「望むところです。首を洗って待っていてください」


 でも、越えてやる。この忌々しい首輪と、腐った世界を正してやるために。

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