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銃と魔法のダンジョン世界でクリアするまで出られないデスゲームが始まりました  作者: 木山碧人
第二章 ガンズオブインフェルノ

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第59話 悪魔の証明


「これから話すのは、俺の発言に嘘がない前提の話です。どうか信じてください」


 性悪説ではなく、性善説。


 人を疑うのではなく、人を信じる。


 ジェノのやり方は、パオロの思考と全くの真逆。


 だから、思いつけた。狼だと疑いたくなかったから、見つけ出した。


 ――唯一の突破口を。


「上手く、いくんだろうな」


「上手くいかなかったら、死ぬだけです」


「……ならいい、さっさとしろ。できるだけ手短にな」


 勝てる見込みがあるなら、会話の主導権を渡す。


 という、合理的に物事を考えるパオロらしい判断だった。


「感謝します。じゃあ、本題に入らせてもらいますね」


 頭に浮かんでいるのは、一つの仮説。


「皆さんに質問です。ルールで指定された役職以外の人はいますか?」


 それをジェノは、そのままぶつけていった。


「……何かと思えば、あり得ない、あり得るわけがないだろ、そんな詭弁が」


 確かに、あり得ない質問だった。


 だけど、手が上がる。しかも、二人も。


「……は? 嘘だろ」


「役職を答えてもらってもいいですか?」


「うちは賭博師っす。ジェノさんは知ってたと思うっすけど」


「私は戦士と言い渡された。正直に言うか、ちょうど迷っていたところだ」


 メリッサ――賭博師。マクシス――戦士。


 やっぱり思った通りだ。このゲーム、前提がおかしい。


「ありがとうございます。これで一つ話が進みました」


「……知ったところでどうなる」


「今の役職、ルール説明にないんです。おかしいですよね」


「確かにおかしいが、だからなんなんだ?」


「人狼がいるというルール自体が、嘘である可能性があるんですよ」


「「「「「……っ!!」」」」」


 空気が引き締まっていくのを感じる。


 さっき言った時とは、まるで手応えが違っていた。


「ただ、これだけだと弱い。もう一点、致命的なルールの矛盾が必要です」


「それを証明するっていうんだな。これから」


「ええ。その前準備として、前世と役職に関係があるか確認させてもらいます」


「ここで前世か……。ただ、実際、どうするつもりなんだ」


「今までのやり取りを参考に、残り三人の役職を言い当てます。いいですね?」


 三人に目線を合わせながら言い、


「「「……」」」


 それぞれが緊張した面持ちで頷く。


「アザミさんは狩人。ルーカスさんは盗賊。パオロさんは村人で合ってますか?」


 ここは正直、全部当たっている保証はない。


 だけど、半分ぐらいは当たっている自信はあった。


「……は、はい」


「お、よく分かったな」


 アザミと、ルーカスは素直に認め、


「……どうして分かった。大して話していないはずだぞ。僕の前世は」


 パオロは怪訝そうにしながらも、認めた。


 アザミ――狩人。ルーカス――盗賊。パオロ――村人。


 良かった。これで、全員の役職が分かった。後は、掘り下げるだけだ。


「じゃあ、まずはパオロさんから説明させてもらいますね」


「ああ……」


 外れたら一気に風当たりは厳しくなるだろうな。


 だけど、今さら引き下がれない。言うしか、ないんだ。


「村人に選んだのは、前世が王子ではなく、落とし子だと思っているからです」


 落とし子――王が妻以外の女性に産ませた子。


 妻との子でない以上、王にも王子にもなれない。つまり。


 ただの一般人。役職が前世に影響されるなら、村人以外なかった。


「……冗談にしては笑えないな」


「でも、辻褄が合うんです。落ちた意味も村人である理由も」


「……大した妄想だな。妹を探しに来た件はどう説明するつもりだ」


「落ちてから気付いたんじゃないですか。同じ落とし子の妹がいるって」


「つまり、僕は偽の王子様で、目的も後付けってわけか」


「ええ。妹思いの王子という肩書きは大変、役に立つと思いますから」


 一瞬、ルーカスの方に視線を向け、言い放つ。


「……ぷっ、はははっ。そうか。僕は虎の威を借りる狐か。その冗談は笑えるな」


 すると、パオロは腹を抱えて突然、笑いだした。


 間違っていたのかもしれない。唐突に、不安に襲われる。


「笑ってもらえたのは光栄ですが、答えを聞かせてもらえますか」


 だけど、突っ張るしかなかった。もう賽は投げられてしまったのだから。


「妄想にしては度が過ぎているし、地上なら不敬罪だろうな」


「……駄目、でしたか?」


「いや、その逆だ。正解だよ。少しお前を試させてもらった」


「良かった……やっぱり前世と役職の因果関係はあったんですね」


「ああ。だが、まだ途中なんだろ。残り二人の理由も説明してもらうぞ」


 そうだった。なんで、気を緩めようとしていたんだ。


 人狼がいないことを証明するには、まだ足りてない。


 役職を当てた理由を、納得させてからが勝負なんだ。


 ◇◇◇


「あ、合ってます」


「間違いねぇよ、よく分かったな」


 証明は進み、アザミは狩人。ルーカスは盗賊で確定する。


「……偶然にしては出来過ぎているな。異論のあるやつはいるか?」


 パオロは、そう促すが、手をあげる人は誰もいなかった。


 これで条件は揃った。後は、このゲームを壊してやるだけだ。


「全員賛同のようだな。話を続けてくれ」


「俺が初めにした前世の話を覚えていますか?」


「確か、盗みとジャンク屋で生計を立てていたと言っていたな」


「はい。そして、このゲームには役職が重複しないというルールがあります」


「前世で盗みを働いていたなら……そうか。お前の、役職は……っ!」


「俺の役職は盗賊です。この中に盗賊が二人もいるのは、ルールの矛盾ですよね」


 それが、もう一つの矛盾。ルールの欠陥。


「つまり――初めから、存在していないんです。人狼なんて」

 

 この下らないゲームを終わらせる口実だった。


「あり得る。これだけ証拠が揃えば十分……」


 パオロの言葉を皮切りに、人狼がいない方向に傾こうとしていた。


「――いや、あり得ないっす、それ」


 しかし、それはあっけなく否定される。


 一番信じてほしかった人。メリッサの発言によって。


「……え? どういうこと?」

 

 今までの不審な言動はもしかしたら。なんて、嫌な予感が走る。


 勘違いに決まってる。根拠のない妄想を振り払い、慎重に聞き返した。


「だって、うちが人狼なんすから」


 でも、予感は当たってしまう。一番言っちゃいけないタイミングをもってして。

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