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銃と魔法のダンジョン世界でクリアするまで出られないデスゲームが始まりました  作者: 木山碧人
第二章 ガンズオブインフェルノ

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第57話 一か八か


 冒険者ギルド。


 カウンターの前には人だかりができている。


 そこには、死闘を共にした十二人の仲間たちが待っていた。


「遅いぞ。何をやっていた」


 遅れて足を踏み入れたジェノに対し、声をかけてきたのはパオロだった。


「大事な野暮用があったので、終わらせてきました」


「ふん。なんでもいいが、本命はこっちだ。しくじるなよ」


「分かってますよ。お望みの条件は、俺が勝ち取ってみせますから」


 二人の視線の先。カウンター内。


「さぁ、報告してもらえる? どちらのパーティが勝ったのか」

 

 そこには、腕を組みながら待ち構えるマスターは問う。


 問いかけに対し、ジェノは懐から白のマスターカードを取り出す。


「答えはそのどちらでもありません。――俺たち全員の勝利になります」


 その動きに呼応して、冒険者たちがカウンターに置いたカード。


 それらは、ジェノが持つマスターカードと同じ、白に染まっていた。


「……へぇ、考えたわね。カードのシステムを利用したってわけ」


 マスターは、置かれたカードを入念に確認していく。


 メンバーカードを持つ一般冒険者は、リーダーの変更が可能。


 リーダーが変わっても、三次試験の依頼を達成すれば合格になるはずだ。


「依頼は達成しました。合格を認めてもらえますか?」


「……認めるしかなさそうね――そこにいる仲間外れ以外はね」


 そして、確認の終えたマスターは、諦めたように告げる。


 黒いマスターカードの所持者――パオロを除いた全員の合格を。


「報告はまだ終わっていません。結果は、その後に決めてもらえませんか?」


 ここまでは予定通り。


「何か考えがあるみたいね。……いいわ、聞いてあげる」


 ――本題はここからだ。


「パオロさん、準備はいいですね」


 手に握るのは、白のマスターカード。


「……ああ。失敗しても、文句言うなよ」


 振りかざされるのは、黒のマスターカード。


 白か黒か。勝つか負けるか。この一手で、決まる。


「待つっす……! 一体、何をするつもりっすか」


 その接触を、パオロの腕を掴んで止めたのは、メリッサだった。


「……このっ、放せ」


 腕を振りほどこうとしても、びくともしていない。本気で止める気みたいだ。


「マスターカード同士を干渉させて、白に染める。それだけだよ」


 反対されると思ったから、黙っていた。

 

 でも、話すしかなさそうだ。納得させるためにも。


「……もし、失敗したらどうするんすか?」


「俺が試験を諦めて、他全員を黒に染めてもらう予定」


 失敗しても、他の人は全員合格させる。それが条件。


 だから、敵だった二人は納得し、パオロとも手を組めた。


「……はぁ!? 見捨てればいいじゃないっすか、こんなやつ!」


「目的のためでも手段は選べ。夜助さんに教わったんだ。背く気はないよ」


 誰かを見捨てて勝つのは卑怯だ。


 それが裏切ってきた相手でも変わらない。


「あのくそじじい。余計なことを……」


「それより、放してあげて。もうやるって決めたんだ」


「分かったっす。……その代わり、失敗したら、うちは合格を見送るっす」

 

 そこで出てきたのは、妥協案だった。


 再試験できたとしても、削られた寿命じゃ足りない。


 恐らく、首輪による死を、目の前で見届けてくれるつもりなんだろう。


「……うん。メリッサなら、また再起できるもんね」


 それで納得したのか、メリッサは手を放す。今度こそ止める者はいなくなった。


「準備はいいな?」


「お願いします!」


 白か黒。どちらの色が生き残るのか。ただそれだけ。


「今度は止めるなよ!」


 そうして、白と黒のマスターカードは接触した。変化を求めて。


(頼む……上手くいってくれっ!)


 後は心の底からうまくいくことを願うしかなかった。うまくいくことを。


「……っ」


 しかし、変化はない。


 互いに独立した存在が、己の色を主張し続けるだけだった。


「……無理、だったか」


「……そんな。嘘っすよね」


 当事者の二人は早々に諦めようとしている。


「もう少し、続けてください。まだ、分かりません」


 そんな中で、一人。ジェノだけが諦めずにいた。


「少しだけだぞ」


 その姿勢に感化されたのか、パオロはカードを当て続ける。


「くっ……」


「気持ちは分かるが、これ以上は……」


 それでも、やっぱり変化は起きない。


(もう、諦めるしか――)


 そう思い、カードを放そうとした、その時。


「いや、待つっす。確か、メンバーカードの説明で、意思に反応するって」


 口を挟んだのは、神妙な面持ちで語るメリッサだった。


「意思に反応? どういう意味だ?」


「リーダーと認めた相手じゃないと、色は変化しないって」


「心のどこかで認めていない、ということなのか? いや……」


「試してくれませんか! 認めてもらうのは難しいかもしれませんが」


「馬鹿馬鹿しいが……最後に試す価値ぐらいはありそうだな」


 文句を言いながらも、パオロは目を閉じた。


(きっと、これが最後のチャンスだ。いけ、いってくれ!!)


「……これ、は」


「まじ、すか……」


 すると、染まる。黒のマスターカードが白に染まっていく。


 奇跡が起ころうとしていた。でも、まだ完全じゃない。気は抜けなかった。


「なんだ、何が起きている」


 目をつぶるパオロは事態を把握し切れていない。


「後少しです。頑張ってください!」


「……そういう、ことかっ!」


「変われ、変わるっす!!」


「変わって、お願い!!」


 思いの丈を乗せて叫ぶ。それしかできない。


「……われ。変われ」


 すると、そこに、か細い声ながらもアザミが声を張り、


「「「「「「「「変われ! 変われ! 変われ! 変われ!」」」」」」」」


 気付けば周りの冒険者も加わり、場の一体感は高まっていく。


「――変われっ!!!」


 そして、最後にはパオロも声をあげ、全員が一体となり、変化を願った。


「…………」


 同時に、異様な静けさが場に満ちていく。


「……なんだ、急に静まり返って。一体、何が起きた!」


 その中でただ一人、目をつぶるパオロだけが事態を把握できていなかった。


「……目を、開けてください」


 そう言ってあげるしかなかった。――だって。


「……っ!?」


 実現したんだから。黒いマスターカードを白く染める、そんな無茶な願いが。


「――報告は以上です。認めてくれますか? 俺たち全員の合格を」


 そして、伝えたいことを簡潔に告げた。


 恐らくこれが、リーダーとしての最後の役割だ。


「おめでとう。全員合格よ! 酒代はアタシが持つからガンガン飲みなさい!」


 返ってきた粋な回答に、静まり返った場は最高潮に盛り上がっていった。


【寿命――残り44時間】

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