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銃と魔法のダンジョン世界でクリアするまで出られないデスゲームが始まりました  作者: 木山碧人
第二章 ガンズオブインフェルノ

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第50話 地獄絵図


 赤青黄の特殊弾薬の薬莢が、地面に転がっている。


「……う、ぐっ」


 弾薬を全て使い切るも、抵抗虚しく、ジェノは膝を折っていた。


「息巻いていた割には、実にあっけない結末でしたね」


 勝負を決めたのは、たったの一撃。短剣の柄による、腹部への打突だった。


「……ま、まだ……終わって、ない……」


「ええ。確かに、まだ終わってはいない。――さぁ、こちらを召し上がれ」


 すると、セバスは懐から黄色い草を取り出し、無理やり口に突っ込まれる。


「んぐっ!?」


 独特の酸味が口一杯に広がり、体が反射的に吐き出そうとする。


「いけませんよ。頂いたものを吐き出しては。よく噛んでお食べ下さいませ」


 でも、手で口を抑え込まれ、顎を上下に動かされ、無理やり飲まされてしまう。


「――んんんっ!」


 ごくんと喉が鳴り、異物が胃に流れ込んでいく。


「…………………………ッッ!!!!」


 その直後だった。目の前が眩み、体全体が痺れて動けなくなったのは。


「そちらは、痺れ草。神経機能を一時的に、麻痺させる代物です」


 聞いてもいないことを、セバスは懇切丁寧に説明する。


「では、私はこれで――」


 そのまま、セバスは解説を終えた背を向け、去ろうとしている。


「……ま、て」


 痺れる顎を必死で動かし、なんとか声を絞り出す。


 今は、何がなんでもセバスを止める。それしか考えられない。


「……」


 だけど、声は届かない。遠い背中を、黙って見つめることしかできなかった。


 ◇◇◇


(怖い、帰りたい、死にたく……ない)


 アザミは戦場の隅で、刀を抱えて震えていた。


『『『ガガ、ギ』』』


 そこに、命を脅かしてくる、三匹の骸骨が現れる。


「ひぅ……、こ、こ、こないで……」


 刀を握る手が、震える。一人で相手できる数じゃない。


「……っ」


 だから、背を向けて、逃げ出した。震える足を無理に動かして。


(何をしたらいいの……どうすれば、助かるの……)


 走りながらも、必死で助かる方法を考える。


 でも、分からない。考えられない。決められない。


 頭が真っ白になって、心がぐちゃぐちゃになりそうだった。


「――あっ」


 すると、考えていたせいか、転んでしまう。何もない平坦な地面で。


『『『ガガガ、ギ』』』


 それを嘲笑うように、骸骨の群れが骨を鳴らして、目の前まで追ってくる。


「……っ」


 助けを呼べば助かるかもしれない。そう思うけど、喉が縮こまって、声も出ない。


(なにか、ないの……なにか……)


 辺りを見渡して、何か使えそうなものを探す。


 だけど、そう都合よく見つかるわけもない。


(これさえ、抜けば……。多分、勝てる……)


 最後に目に入るには、ひと振りの刀。脅威への解決策。


(駄目……。自分のためだけに、力を使いたくなんか、ない……)


『『『ギ、ギ、ギ』』』


 そう迷ってる間にも、骸骨たちの魔の手がこちらへ伸びてくる。


(平穏な毎日を、静かに過ごしたかっただけ、なのに……)


 もう間に合わない。ぐっと目を閉じて、瞼の裏に広がるのは、身勝手な夢。


(もっと、平和な世界で、生まれたかったな……)


 怖いことも争いごともない世界。


 妄想するくらいはいいよね。もう叶わないんだとしても。


「アザミに……手を、出すなっす!」


 そんな時、突然、聞こえてきたのは、耳馴染みのある声。


『『『………グ   ギ    ?』』』


それと、骨が砕けたような音と、その断末魔のような鳴き声だった。


(この声、もしかして!)


「――っ!?」


 意を決し、目を開く。すると、そこには、黒い鎧と、骸骨の残骸があった。


「無事、っすか……」


 苦しそうな声だった。でも、分かる。聞こえる。理解できる。


(やっぱり、メリッサさんだ! メリッサさんが、助けて、くれたんだ……)


「……あ、あ、あ、あの」


 お礼を言わないと。そう思い、勇気を振り絞って、声をかける。


「――」


 だけど、目の前にいる鎧は、こっちへいきなりもたれかかってくる。


「っと。……え、えと、えと?」


体は受け止めたけど、頭は事態を受け止めきれず、あたふたしてしまう。


「ちょっち、力を使い過ぎたかもしれないっす」


 すると、ぐったりとした様子だったけど、聞きたかったことを教えてくれる。


「……お、お体は、だ、だいじょうぶ、なんですか?」


 返事をするだけで、精一杯だった。お礼を言いたい。そう思っているのに。


「しばらくは、動けそうにないっすね。力を維持するだけで精一杯っす」


「……な、なにか、手伝える、こと、あります?」


「だったら、一つ頼まれてくれないっすか。お願いしたいことがあるんすよ」


 断れるわけがない。後でちゃんとお礼を言わないと。


 そんな思いを胸に秘め、メリッサのお願いに真剣に耳を傾けていった。

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