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銃と魔法のダンジョン世界でクリアするまで出られないデスゲームが始まりました  作者: 木山碧人
第二章 ガンズオブインフェルノ

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第46話 逆転の一手


『奥で洞窟男とメリッサが戦ってる……っ!?』


 ジェノは、呆然と瓦礫の方を見つめ、動揺しながら言った。


 その首輪にはケーブルが接続されている。ケーブルの先にいるのは。


『は、はい……な、生身じゃ、倒せない相手って』


 ミザリーの手を握る、アザミだった。


『…………分かりました。奥の戦いは、メリッサに任せます』


 恐らく、考えがあっての行動だろう。


 わざわざ道を塞いだのには理由があるはずだ。


『助けなくても、よろしいのですか?』

 

 そこに意見を挟むのは、同じくケーブルに繋がれたギリウスだった。

 

『ええ。メリッサなら、勝ってくれるはずです。それより――』


 目を凝らすと見えてくる。


 卵を抱えた中年の男と、金髪の少年が。


『先にやるべきことを済ませましょう。助けるのはそれからです』


 ケーブルを外し、ジェノは全ての意識をその相手へと向けた。


「一人仲間が欠けてるようだな。奥に何を隠している」


「用件はなんですか?」


「無視か。……まぁいい。卵と引き換えに見逃してくれないか?」


 すると、パオロは当然のように取引を持ちかけてくる。


 味方だったはずの冒険者から侮蔑の視線を向けられながら。


「それは他の皆さんの総意じゃないですよね」


 勝った後の卵の所有権はパオロたちにあった。

 

 理由は、命を懸ける人数と、物資を使う量の多さから。

 

 それなのに、パオロは私利私欲のために利用しようとしている。


「そうだ、そうだ。身の程をわきまえろ」


「卵は俺たちの所有物だ。勝手に決めてんじゃねぇよ」


「知らんな。僕がリーダーである以上、誰も逆らうことはできない」


 冒険者から反感の声が上がる中、パオロは気にせず続ける。

 

 自分の優位は揺るがないという油断。だからこそ、付け入る隙ができた。


「本当にそうですか?」


「何が言いたい。ハッタリなら僕には――」


「あなたのマスターカードは黒。味方のカードは黒のはずですよね?」


 前回と同じような手口だった。それを対策してないわけがない。


「……それがどうした?」


「俺のマスターカードは白。あなたについた味方はもういない!」


 懐から取り出すのは、自身が持つ白色のマスターカード。


 そして、周りの冒険者が持つメンバーカードは白に染まっている。


「……っ!? そうか。上書きしたのか、リーダーをっ!」


 察しのいいパオロはすぐに気付く。


 メンバーカードはリーダーの上書きが可能ということに。


「ええ。あなたの負けです。卵を置いて投降してください」


 状況は完全にひっくり返った。負ける要素なんかない。


 それなのに、不安でいっぱいだった。もう一波乱あるんじゃないかって。


「――いいや、まだ負けてない。僕は知っているぞ、お前の過去を」


 パオロの顔つきが変わる。


 獲物を狩る狩人のような目つきをしていた。


「俺の、過去……?」


 急激に体温が下がっていくのを感じる。


 一つだけ心当たりがあった。頼む、ハッタリであってくれ。


「こいつは、半年前に起きた、死刑囚大量虐殺事件の犯人なんだよ!」


 そう願いながらも、嫌な予感は当たってしまう。


(こっちが本命か……っ!)


 卵で交渉を持ち掛け、無理なら前世を暴露する、二段構え。


 意識を卵とリーダー権に割いてしまったせいで、予想の上をいかれていた。


(でも、なんで……。誰にも話した覚えなんて)


『それより、早く、教えてくれよ。あんたの前世を』


『国家反逆罪に、殺人罪で死刑と、裁判ではそう判決されました』


『…………やるな、あんた! あまりに前世が凄すぎるもんで、驚いちまった』


 思い出すのは、この世界で初めて出会った人との会話だった。


(あの、時か……っ)


 歯をぐっと食いしばり、自然と目に入る。口端を上げるルーカスの姿が。


「どういうことだ。まさか、あの……?」


「こんな年端もいかない餓鬼が……」


「確か、少年の犯行だって……」


 すると、冒険者たちの動揺の声が聞こえてくる。


 情報が遮断された地下でも、動揺を生むほどの大犯罪。


 着実に声は広がり、場は混乱の渦に包まれようとしていた。


「――静かにしろ! また不確かな情報に踊らされるつもりか!」


 そこに、隻腕の男が、ぴしゃりと言い放つ。


 すると、反論の余地のない正論に、騒ぎは収まっていく。


「さっきの話、本当なのか……?」


 嬉しいと思う反面、不安に思っていると、優しく声をかけてくれる。


 あくまで、本人の口から出た言葉を信じる。そう間接的に伝えているように。


(嘘をつけば、信じてもらえるんだろうな……)


 この人の賛同を得られれば、冒険者の人たちの旗色は、確実に変わる。


「関係がなかったとは、とても言えません」


 でも、それだけはできなかった。


 二人で困難を乗り越えた、あの熱量と感覚と経験。


 それが、たった一つの嘘で、全て消えてしまうような気がしたから。


「……う、嘘、ですよね?」


 ただ、その発言のせいで、真っ先に不信感をあらわにしたのは、アザミだった。


「……」


 肯定すれば、嘘だと言えば、恐らく、全部解決するだろう。


 だとしても、できなかった。自分の気持ちに、嘘はつきたくない。


「あなたは心優しい方だとばかり思っておりましたが……」


 次はギリウス。今まで積み上げてきたものが全て、崩れていく音がした。


「嘘じゃ、ないんだな」


 次に隻腕の男からは、同情するような声色で、肩に手を置かれる。


「否定は、できません」


 受け入れてくれるかもしれない。そんな淡い期待を込めて、恐れず言った。


「そうか。よく言ってくれたな」


 すると、すっと肩から手を放し、片手で抱擁してくれる。


(良かった……。受け入れてくれたんだ……)


 冷え切った心が、ほんの少しだけ、温かくなっていくのを感じる。


「――このクズ野郎がっ!!!」


 でも、違った。罵声と共に、振るわれるのは、左手の拳。


「…………ぐ――っ!」


 頬に強烈な痛みが走ると、体は転がり、摩擦して、止まる。


 擦り切れて痛む体、殴られて腫れる頬、出血して鉄の味で満ちる口内。


「……どうして」


 ただ、それらを差し置いても、強い疑問だけが残り、思わず口にした。


「私の兄が……そこにはいたんだぞっ!」


 拳を強く握り込み、憤りを吐き出すように、男は言う。


 場は静まり返り、冷たい視線が、こちらに向いていた。


「お前のせいで……お前の……せいで――っ!!」


 詰め寄る男は馬乗りになって、殴ろうとしてくる。


 目を閉じて、受け入れるしかなかった。気持ちは痛いほど分かるから。


「っ!?」


 しかし、聞こえてくるのは殴れる音じゃない。


(殴られ、ない? なにが……?)


 覚悟をしたはずなのに、誰かが助けてくれたのかもしれない。


 そんなありもしない幻想を頭に思い浮かべながら、ゆっくりと目を開いた。


「――ミ、ザっ!!」


 目の前には、白いワンピースを着た少女――ミザリーの姿。


 ミザリーは、殴ろうとした腕に、ギザ歯を食い込ませていた。


「この、離れろっ!」


 片腕をぶんぶんと振り回す男。だけど、離れない。


 隻腕の男の腕力より、ミザリーの咬合力の方が、上回っていた。


「……なんで、俺なんかを」


 不思議な気持ちだった。嬉しさと同時に疑問が込み上げてくる。


 本当なら、助けてくれる理由なんてないし、言葉も通じないはずなのに。


「――」


 そんな複雑な胸中で事態を眺めていると、突如、銃声が鳴り響いた。


「――ッ!?」


「むざっ!?」


 空砲だった。だけど、二人を止めるには、効果があったみたいだ。


「――そこまでにしておけ。殺されたいなら、話は別だがな」


 銃声を鳴らした張本人――パオロが銃口を向け、静かに言い放つ。


「なぜ、お前に従わなければならない」


「そいつを切るなら、僕の下につくしかないからだ」


「またリーダー権か……。従うほかないだろうよ。不服だがな」


 隻腕の男は眉をひそめがらも、引き下がる。


「――んざ」


 ミザリーもまた、意図を察したのか、口を放していった。


(……いつつ。ひとまず、助かった、のか?)


 生きた心地がしないながらも、体中の痛みが生を実感させる。


 この後、どんな扱いを受けるかは、正直、不安で仕方なかったけど。


「助けてくれて、ありがとうございます。ミザリーさん」


 ただ、見えない末来を不安がるよりも感謝が先だ。


 体を起こし、横にいたミザリーの頭をなでながら、そう言った。


「ミザミザ~」


 すると、何も知らないミザリーは嬉しがっている。


(……そうか。言葉が分からないからなんだな。俺を守ってくれたのは)


 そこで、理解した。言葉が通じ合わないからこそ、仲間でいられたんだって。


「僕のマスターカードに全員触れろ。こいつにつきたくないならな」


 だけど、冒険者たちのメンバーカードは続々と黒に染まっていく。


(駄目だ……浮かばない。ここから、逆転する策が……)


 頭は回しっぱなしだった。だけど、何も浮かんでこない。勝てるイメージが。


「……これで形勢逆転だ。話してもらうぞ。奥で何が起きているかを」


 見渡す限り、メンバーカードは黒一色に染まっている。


 しかも、その中には、仲間だったギリウスとアザミも含まれていた。


(どうしよう、メリッサ……。もう、打つ手がないよ……)


 終わりだった。用意した策以上のものなんてない。


 今はただ、数少ない味方に思いを馳せることしかできなかった。

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