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銃と魔法のダンジョン世界でクリアするまで出られないデスゲームが始まりました  作者: 木山碧人
第二章 ガンズオブインフェルノ

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第42話 ガンズオブインフェルノ


「敵は肉無し、文無し、命無し、正真正銘のただの化け物だ」


 パオロは説く。敵の存在を。


「どんな物語も、人間は化け物に勝ってきた。なぜだか、分かるか?」


 パオロは問う。敵に勝てる理由を。


「化け物にはない、理性と知性と神の加護が人間には備わっているからだ」


 パオロは語る。敵と人間との違いを。


「恐れるな、怯えるな、狼狽えるな。人間は強い。食物連鎖の頂点だ」


 パオロは押す。冒険者たちの背中を。


「あの化け物どもに、食物連鎖の頂点が誰か教えてやれ。いいな、野郎ども!!」


 パオロは放つ。冒険者たちを奮い立たたせる言葉の弾丸を。


「「「「「――――うぉぉおおおおおおっ!!!!」」」」」


 パオロ陣営から、空気が震えるほどの熱気と活気が伝わってくる。


「作戦は、今、話した通りです。何か質問はありませんか?」


 一方で、ジェノ陣営は、作戦の説明をちょうど終えたところだった。


 そこには、メリッサ、アザミ、ミザリー、壁にもたれるギリウスの姿。


 さっきの演説がいい影響を与えてくれたのか、表情は引き締まっていた。


「俺からも一つ、皆さんに言いたいことがあります」


 質問もなく、ジェノは締めの一言を添えるため、そう前置く。


「生きて帰って、絶対に終わらせましょう。人の命を軽んじる、このゲームを!」


 そして、ジェノは伝えたいことを一つに絞り、言葉に乗せた。


 目的は、勝ち負けではなく、生きて帰ることだと、強調するために。


「ミザっ!」


「了解っす!」


「承知しました。と言っても、私は一回お休みですが」


 言葉は伝わり、各々が返事をしてくる。


「……」


 アザミも言葉の代わりに頷いて、理解を示してくれていた。


(皆、いい人ばっかりだ。恵まれてるな、仲間に)


 会って間もない人たちばかりだけど、人柄はなんとなく分かる。


(……誰も死なせるわけにはいかない。なんとしてでも、成功させてやる)


 そう心に固く誓い、前を向く。


 すると、演説を終えたパオロが目の前に立っていた。


「こっちの準備はできた、いつでもいいぞ」


「分かりました。開戦の合図は手筈通り、こちらで行います」


「よろしく頼む。――くれぐれも失敗するなよ。こっちも命懸けなんだ」


「ええ、任せてください」


 短い討論の末、作戦を立て、盤石な体制をもって、舞台は整った。


 ただ、同時に、これだけの人数を動かす責任が心と体にのしかかってくる。


「メリッサ、準備はいい?」


 でも、怖気づくわけにはいかない。


「もちろん、いつでもいいっすよ」


 目の前には頼れる仲間たちがいるんだから。


「――開戦!」


 その合図を皮切りに、敵だった陣営同士の、共闘が今、始まった。


「開けっす!」


 手筈通り、黒い影が解かれ、目の前には、予想通り、黒い骸骨の群れがいた。


「全員、構え」


 パオロが、手を上げ、指揮を取る。


 冒険者たちは、軍隊のように横一列に並んでいる。


 その手には、二次試験の報酬である、様々な銃火器を持ち、構えていた。


『『『『――――ガガガ』』』』


 声に反応した黒の軍勢は一斉にこちらに向かい、走り出した。


「焦るな、逸るな、先走るな」


 彼我の距離は、まだ百メートルほど。


「弾薬は限られている。無駄弾は打てない」


 銃は遠距離武器とはいえ、有効な射程距離が存在する。


「だから、虎視眈々とその時を待て。獲物を狙う獣のように」


 銃の力を余すことなく発揮するための距離――約十メートル。


「まだだ、まだ、引きつけろ」


 そのボーダーラインが今、越えられようとしていた。


「――今だ、放てっ!!!」


 パオロは、上げた手を振り下ろし、合図を送り、放たれる。


 拳銃、狙撃銃、突撃銃、散弾銃などの多種多様な銃声が、鳴り響く。


 放たれた弾丸は、黒い骸骨たちの頭蓋をことごとく貫き、沈黙させていった。


「す、すごい……」


 思わず、感嘆の声が漏れる。


 地獄で荒れ狂う銃たち。――ガンズオブインフェルノ。


 皮肉にも、このゲームのタイトルさながらの状況が繰り広げられていた。


「止め! 第二陣、前へ!」


 道中で入手したのであろう、呪文書を持った集団が入れ替わるように前に出る。


「詠唱開始! 即時、放て!!」


 ここは銃だけの世界じゃない。銃と――魔法の世界。


 それを体現するように、炎が、氷が、雷が、次々と放たれていく。


 まるで、二重奏。銃と魔法、その両者が競い合い、高め合い、せめぎ合う。


「そこまで!」


 パオロの指揮とともに、フィナーレを迎え、銃と魔法の音色は鳴り止んだ。

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