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銃と魔法のダンジョン世界でクリアするまで出られないデスゲームが始まりました  作者: 木山碧人
第二章 ガンズオブインフェルノ

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第32話 身体検査


 マーレボルジェ、中央広場南、虚大樹前。


 そこで、黒いローブにフードを深く被った怪しげな男がいた。


「……ちょいと、そこで止まってくれやせんか。ひひっ」


 フードからは白い髪を覗かせ、不敵な笑みを浮かべている。


 完全な初対面だったが、何か危ない薬でもやっていそうな人だった。


「気持ち悪いっすねぇ。なんすか、あんた」


 すると、メリッサは漠然と考えていたことを、毒気増し増しで口に出していた。


「――ちょ、ちょっと。失礼だよ、メリッサ」


「これでも、角が立たないように言ったつもりなんすけど」


「いや、角が立つどころか、尖りまくってるから、それ。謝った方がいいよ」


 フードの人に怒られるんじゃないかと、内心ひやひやしながら注意する。


「気にしないで結構でごぜえやす。なにせ、本当のことですから。ひっ、ひひっ」


 だけど、その人は自嘲気味に笑っていた。余計な心配だったのかもしれない。


「良かった。それならいいんですけど、あなたは……?」


「あっしは、グレゴリ。ここの監視者ウォッチャーをやらせてもらってやす」


監視者ウォッチャー……見張りみたいなものですか?」


「ええ。言葉通り、ここの出入りを監視してる者でやす」


「じゃあ、さっさと通してもらえるっすか? こっちは急いでるっすから」


 寿命がないのを知っているのは、メリッサだけ。

 

 恐らく、彼女なりに、気にしてくれているのだろう。


「それは、待ってくれやせんか。検査をしやすんで」


「け、け、け、検査? お、お、男の、男の人に?」


 真っ先にそのワードに反応したのは、メリッサではなくアザミだった。


「もしかして、アザミさん。男の人、苦手だったりします?」


 頭によぎるのは、酒場での出来事だった。


 露骨に怖がられていたのは、男性が苦手だったら説明がつく。


「――うぅ、は、はいぃ……」


 小さくこくりと頷き、アザミは肯定する。予想は合っていたみたいだ。


「吃音症の次は、男性恐怖症っすか。我慢すりゃあいいだけじゃないっすか」


「む、む、むり、です……」


 首を横に振りながら、アザミは言う。本当に、無理そうだった。


(うーん、困ったな。無理してもらうわけにもいかないし……)


「心配無用でごぜえやす。こちらをかざせば、触れずとも済みますんで」

 

 などと考えていると、グレゴリは小ぶりの杖を取り出し、言った。


「ふ、触れられない? ……そ、それならだいじょぶです」


 ただ、それも杞憂で済んだみたいだ。どういう仕組みなんだろう。


「お世話になります。グレゴリ様」


 ほっと安堵していると、見知った様子で、ギリウスは頭を下げていた。


「お久しぶりでございやすね。今日はどういう風の吹き回しで?」


「一人で冒険するのも少し、飽きてしまいましたからね」


「飽きた、でやすか。ひひっ。やはり面白いお人だ」


「……検査をお願いしてもよろしいですか?」


「あぁ、そうでやした。では失礼して――」


 二人の仲はいいのか、悪いのか、いまいち掴めない中、検査が始まった。


 ◇◇◇


「――次の方、お願いしやす」


 検査は順調に進み、五人目、ジェノの番となる。


「最後は、俺、ですね。――お願いします」


 おでこをよく見せるようにして、目の前に立った。


「失礼しやす」


 グレゴリは杖を近付け、全身をなぞるように動かしていく。


 すると、ピーッ、というアラームのような機械的な音が鳴り響いた。


「……この反応、異物でやすね。三次試験の注意事項は覚えておいででやすか?」


「依頼の報告はリーダーのみで、二次試験の報酬以外の持ち込み禁止ですよね」


 注意事項の二つ目。余分なアイテムの持ち込み禁止。

 

 自分で口にして、気付く。たぶん、引っかかったのはこれだ。


「念のため、持ち物を確認させてもらってもよろしいでやすか?」


「分かりました。ちょっと待っててくださいね……って、これか」


 がさごそと懐を探っていると、出てくるのは紫色の草。確か、変化草だ。


 よく考えれば、これは二次試験の報酬じゃない。好意でもらったものだった。


「いったん、あちらへ預けてもらえやすか?」


 グレゴリが向ける視線の先。大きめの倉庫があった。


「了解です。ぱぱっと、預けてきますね」


 さっき利用したとこだから、扱い方は分かる。ぱぱっと向かった。


 ◇◇◇


 倉庫の中は広く、大小様々な箱が棚に置かれている。


 ここにある箱は全て、首輪のケーブルが鍵代わりになる仕様だ。


「ここにこれを差し込んでっと」

 

 小さめの箱を見つけ、鍵穴に首輪のケーブルをそっと差し込む。


 がちゃりと音を立てて解錠され、そこに、変化草を入れようとする。


「その草、どこで、手に入れられましたか?」


 そこで、背後から急に声をかけられる。


「――わっとと」


 びっくりして、持っていた草を落としそうになってしまう。


「……っと、危ない」


 落ちかけた草を手でキャッチしたのは、見知った人物だった。


「びっくりさせないでくださいよ。ギリウスさん」


 盗まれるんじゃないかと一瞬、ヒヤッとしたけど、知ってる人で良かった。


「申し訳ありません、驚かせてしまったようですね」


 謝罪したギリウスは、掴んだ草をそっと添えるように渡してくれる。


「ほんとですよ。でも、拾ってくれて、ありがとうございます」


「いえ、とんでもありません。それより、質問にお答えいただけませんか?」


 流されてもおかしくない話題だったけど、ギリウスはすぐにそれを引き戻した。


(なんだろう。なんとなくだけど、ギリウスさんの自我を感じる)


 何を考えているか表に出さない人だったけど、そう思うほどの何かがあった。


「商店街の草屋です。二次試験の試験官だった店主さんにもらいました」


「灯台下暗し、というわけですか……」


「これ、もしかして、欲しかったんですか?」


「いえ、忘れてください。それより一つ注意があります」


「……なんです? 改まって」


「草は、強い衝撃でも作用してしまいます。扱いには、十分お気をつけください」


 ただ、ギリウスは話題を逸らすように、為になることを言い残した。


 ◇◇◇


「――問題ありやせん。これで、検査終了となりやす」


 全員の検査が終わり、虚大樹の根元に立つ。


「では、お持ちのマスターカードをこちらに触れてもらえやすか?」


「は、はい」


 言われた通り、虚大樹の根に、マスターカードを当てていく。


 すると、エレベーターのように両開きの扉が横へスライドしていった。


「では、お乗りくだせえ。このグレゴリが、地獄へと案内させていただきやす」


 準備は整い、グレゴリの案内の元、ダンジョンへの冒険がいよいよ始まった。


【寿命――残り52時間】

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