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銃と魔法のダンジョン世界でクリアするまで出られないデスゲームが始まりました  作者: 木山碧人
第二章 ガンズオブインフェルノ

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第10話 勘違い①


「そんな、嘘っすよね……」


 信じられないものを見る目で、メリッサは呆然と呟く。


「いいえ、本当よ。ご主人様は私たちを救ってくださったわ」


 それは、最後のキャスト。赤と黒のドレスを着た七色髪の娼婦の発言だった。


「じゃあ、皆さんはプレイヤーから身を守るために、望んで働いていたんですね」


 今までの発言をまとめると。


 キャストを維持するには、毎月納税が必要。


 でも、外でお金を稼いだら、プレイヤーに狙われてしまう。


 だから、安全に働ける娼館が、彼女たちにとっては助かるみたいだった。


「そういうこと。嫌々、やってるわけじゃないから。好きで全員ここにいる」

 

 肯定と否定。その返答には、人としての中身が詰まっているような気がした。


「だったら、どうして、無理やり体を……」

 

 だけど、服を無理矢理脱がされたのが頭にちらつく。


「身体検査は主様のような事業者ワーカーの義務。それに仕事は風俗だけじゃないからね」

 

 娼婦は黙るカモラの代弁をする。


 従業員の中には、用心棒みたいな人もいた。


 仕事を選べたんだ。その話をされる前に早とちりして。


「勘違い、だったんですね……ごめんなさい」


「許してやる。あの状況下ではお前にも同情の余地があるからな」


 素直に謝罪すると、カモラはそれを受け入れる。


 思っていたよりも、悪い人じゃなかったのかもしれない。


「なんで、この子を隠していたんすか? やましいことがあったんすよね」


 それでも、諦めないメリッサは、粗探しをするように、質問を重ねていった。


「……半年前に起きた、集団忘却事件を知っているか?」


「当時の自警団全員の記憶が消えた事件っすよね。それがなんすか?」


「元の名はエリーゼ・アンダーソン。この世界に風紀を作った自警団の創設者だ」


(やっぱり、妹だったんだ。でも、記憶がないのか……)


 嬉しさ半面、悲しさ半面だったけど、顔色は出さないようにした。

 

 ここで素性を明かしてもメリットはない。事実を受け入れるしかなかった。


「へぇ……この子が。でも、隠していた理由にはならないっすよね」


「こいつの存在が知られれば、犯人は間違いなく消しに来る。不用意に人前に見せるわけにはいかなかったんだ。……それに、前世に一度、こいつには命を助けられたこともあるからな。受けた恩ぐらいは返してやりたい」


「じゃあ、ここで見たことは見なかったことにしろってとこっすかね」


「ああ。形骸化しつつある今の自警団には黙っておいてくれ」


「分かったっすよ。この件は解決したことにしておくっす。――ただ」


 しかし、メリッサは、冷たく言い放ち、手を軽く握る。


「うぐっ!?」


 ぎちぎちと糸が締め上げる音が鳴り、か細い声がこぼれる。


「こいつはここで殺させてもらうっす」


 締め上げられているのは、カモラ、ではなく、サーラだった。


「……え? なんで」


 分からない。ここまで話を聞いておいて、サーラを狙う意味が。


「なぜ、サーラを! 金ならいくらでもくれてやる、だから、やめてくれ!」


 一方で、冷や汗を浮かべるカモラは、訴えかけるように叫んだ。


「事情なんて、もう、どうだっていいんすよ」


「だったら、どうして――」


「許せないんすよ。うちを一度殺した、こいつがっ!!」


 殺してきた人間が憎い。ただ、それだけ。


 今、メリッサを突き動しているのは、正義感じゃない。

 

 ――純粋な殺意だった。


 もし、このまま見過ごせば、サーラは、妹は八つ裂きにされてしまう。


(動けるのは、俺しかいない。どうする……どうするっ!)


 キャストは全員、糸の拘束を受け、動けない。


 この場で動けるのは、助けられるのは、一人。ジェノだけだった。


(考えろ、考えろ、考えろ!! このままだと妹が、死ぬんだぞ!!)


 そんな精神への負担が全身の神経を刺激し、気付かせる。


(……この手袋、確かっ!)


 手に汗を握った先にある、感触。手を覆う、白い手袋。


『蜘蛛の糸で編まれた防刃、防弾用の超特注生地っす』


 妹を救える術は、この手にあることを。


「これで、死んでもらうっすよっ!!」


 その間にも、メリッサは手繰り、糸を張る。


(糸対糸。失敗したら、手首ごと……)


 頭によぎるは、拘束具をたちまち切断した糸の切れ味。


 失敗すれば、自身の右手はたちまち糸で切断されてしまうだろう。


(いや、関係ない。妹を救えないなら、死んだ方がマシだ。俺が、やるんだっ!)


 意を決し、妹と、メリッサを繋ぐ糸に、狙いを定め、全神経を集中させる。


「――切れろっ!」

 

 願いを込めて、振るうは右の手刀。


 糸の性能と己を信じ、全力で振りきった。


「なっ!」


 メリッサの驚く声と同時に、ぷつん、と糸が切れる音が聞こえる。


 縛り上げられていたサーラ、だけでなく、ここにいた全員が、解放されていた。

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