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第7話 意外な言葉

 フリムド様と話している私の前に、クーテイン家の面々が集まってきた。

 カルニラ様達が、私とフリムド様を引き離そうとしている中、カルード様はコーリエ様に説教を始めていた。

 その唐突な行動に、他の者達は固まっている。何故、このタイミングでそんな話をするのかと、カルニラ様達辺りは思っているのではないだろうか。

 だが、カルード様の行動はそこまで不可解なものではないのかもしれない。この場で起こったことは、私とフリムド様が会ったということだけではなく、コーリエ様が木から落ちそうになったという事実である。

 カルード様は、もしかしたらこの場で唯一コーリエ様の心配をしていたのかもしれない。私とフリムド様が会ったことなどどうでもよく、単に妹の心配をしていただけなのではないだろうか。

 そんな考えが、浮かんできたが、私はそれを否定する。カルード様が、妹を心配するような人だとは思えない。単純に、軽率な行動を咎めているだけと考える方が自然な気がする。


「ケルヴィル」

「は、はい……」

「お前の行動も、間違っていた。兄であるお前が冷静に考えて行動していれば、妹が危機に晒されなかったということを自覚しろ」

「すみませんでした……」


 次に、カルード様はケルヴィル様に説教を始めた。

 コーリエ様の時より、カルード様は語気を強めている。兄でありながら、何もできなかったケルヴィル様の方が、より間違えていると判断したからだろう。


「ナルネア」

「え? あ、はい」


 そこで、カルード様は私に話しかけてきた。

 急に話を振られて、私は大いに動揺する。

 カルード様が、私に話を振ってくるとは思っていなかった。

 だが、考えてみれば、私は今回の騒動の当事者である。別に、話しかけられてもそこまでおかしな存在ではない。


「今回はお前の行動により、二つの命が救われた。そのことに、俺から礼を言っておこう。感謝する」

「え?」


 カルード様の言葉に、私は思わず固まってしまった。

 感謝する。その一言だけで、私は震えてしまう。その言葉が、カルード様から出ることに私は動揺を隠せない。

 そんな私に対して、カルード様は一切表情を変えなかった。そのことで、私は理解する。彼にとって、この感謝は些細なことなのだと。

 そういえば、カルード様は私以外の人にも厳しいような人である。つまり、誰かによって態度を変える義母や姉達と違い、私への態度は通常のものなのだ。

 だから、カルード様は感謝することに躊躇いなどないのだろう。私が正しいことをすれば、評価するし、間違ったことをすれば怒る。そのような単純な話だったのだ。

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