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第5話 王子との遭遇

 コーリエ様と子猫を助けた私の前に現れたのは、クーテイン家を訪れていた第三王子のフリムド様だった。

 フリムド様と私が会うのは、かなりまずいことである。なぜなら、私はカルード様に部屋に籠っているように言われていたからだ。

 妾の子である私は、外部の人間と会うことを許されていない。クーテイン家の恥だとされているため、誰にも会ってはいけないときつく注意されているのだ。

 そんな私が、第三王子のフリムド様と会ったのは不運である。ケルヴィル様やコーリエ様までならまだ許されていたかもしれないが、この人は駄目だ。王族という地位にある人に、恥である私が会う。そんなことを、クーテイン家の人々が許す訳がない。


「……大丈夫ですか? なんだか怯えているようですが」

「え? あ、えっと……」

「緊張しなくても大丈夫ですよ。落ち着いてください」


 動揺している私に、フリムド様は落ち着いた声で話しかけてくれた。

 フリムド様は、穏やかな人のようだ。普段から敵意を向けられる私にとって、こういう人はとても好印象である。

 だが、何故こんな所に来てしまったのだろう。この人と会ったことで、私はすごく怒られるのだ。そこは、少し恨んでしまう。


「あなたが、そちらのコーリエ様と子猫を助ける様子は、全て見ていました。コーリエ様の体を空中に留めて、屋根裏部屋から出て、子猫を助ける。見事な手際でしたね」

「あ、はい……」

「あの距離から、子供とはいえ、人一人を留めておくのはかなり大変でしょう。あなたは、かなりの魔力を持っているようですね」

「えっと……そうなのかもしれません」


 フリムド様は、私のことを褒めてくれた。

 確かに、屋根裏部屋から人一人の動きを止めておくのは大変だった。私も、自分ですごいと思っていたくらいだ。


「あなたには、魔法の才能がある。もしよかったら、魔法学校に入学してみませんか?」

「え? 魔法学校?」


 そこで、フリムド様はいきなり変なことを言ってきた。

 魔法学校とは、魔法の扱い方など習うための学校である。私に魔法の才能があるため、そこに入れと言うのだ。

 ただ、それは無理な話である。クーテイン家の人々が、私を魔法学校に入れてくれる訳がない。

 興味がないという訳ではないが、それは恐らく無理な話である。


「その子に、魔法学校など無理な話です」


 そう思っていた私の耳に、聞き慣れた嫌な声が聞こえてきた。

 どうやら、騒ぎに他の人々が気づいてしまったようだ。これは、かなりまずいかもしれない。

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