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第3話 特に影響なく

 私は、屋根裏部屋のベッドの上で寝転んでいた。

 今日は、第三王子のフリムド様がこの屋敷を訪れることになっている。

 しかし、そんなことは私にはまったく関係がないことだ。この部屋から出ないように言われているが、それはいつものことである。

 つまり、私の日常には何も影響がない。そういう意味では、屋敷にいる他の人々よりも気楽だといえるだろう。


「はあ……」


 ただ、日常に変化がないということは、私にとっていいことばかりではない。

 この慣れ親しんだ屋根裏部屋でできる暇潰しなど、私は既にやりつくしている。つまり、いつも通り暇なのだ。


「あれ……?」


 そんな私の耳に、人の声が聞こえてきた。

 その声は、幼い男女の声である。この屋敷にいる幼い男女といえば、次男のケルヴィル様と三女のコーリエ様だろう。

 その二人の声が、窓の外から聞こえてくるのだ。今は王子が訪問しているはずなのに、庭で遊んでいるというのはおかしな話である。


「あれは……」


 そう思った私は、窓から庭の様子を窺ってみた。

 すると、窓の外には確かに二人が確認できる。ただ、二人は庭で遊んでいるという訳ではなさそうだった。

 なぜなら、コーリエ様が庭の木に登っており、その先に子猫がいるからだ。恐らく、下りられなくなった子猫を助けようとしているのだろう。

 だが、少し雲行きが怪しい気もする。庭の木は、それなりの高さだ。一歩間違えれば、コーリエ様も只事では済まないだろう。

 その高さ故か、コーリエ様はかなり怯えている。それできちんと登れるのか、少し心配だ。


「コーリエ、大丈夫?」

「う、うん……」


 ケルヴィル様は、そんなコーリエ様の様子に焦っているだけだった。

 大人を呼んだりすればいいと思うのだが、それもできない程に焦っているということなのかもしれない。


「あっ……」

「コーリエ!」

「なっ!」


 その瞬間、恐れていたことが起こった。

 コーリエ様が、木から落ちそうになっているのだ。

 あの高さから落ちれば、ただでは済まない。なんとかして、それを止める必要がある。

 しかし、この距離からは普通の方法では彼女を救えない。そもそも、物理的に受け止めると受け止めた人間も大変なことになってしまうだろう。

 とにかく、ここは普通ではない方法を使うしかない。魔法を使って、彼女の動きを止めるのだ。


「はあっ!」

「えっ!?」

「きゃああ……あれっ?」


 私は魔法を使って、コーリエ様の体を止めた。

 距離が離れていたため、かなり不安だったが、なんとか止めることができたようだ。

 ケルヴィン様とコーリエ様は、この現象に驚いているようである。それも当然だろう。いきなり空中で体が止まるなど、何が起こったか理解できる訳がない。

 とりあえず、私も外に出た方がいいだろう。遠くから体を止めておくのは大変だし、二人に状況も説明したいし、それに子猫も助けたい。

 こうして、私は外に出ていくのだった。

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