8.ミドナ編 デーモン襲来
ペンダントが光るとすぐ上に小さな窓が開いた。
おぉ。なんかとても最先端な道具の様だ。
窓を改めて確認すると、そこには何やら文章が書かれている。
なになに……こんな夜更けにペンダントに話しかけるな?
おいおい。どうなっているんだこれ?
文章も文章だが更に驚いたのは日本語で書かれていることだった。疑問に思う事は沢山あるがその日本語を見てとても懐かしんでいる俺もいた。
さて、改めてウィンドウを見てみる事にする。
ーーーーー
こんな夜更けにペンダントに話しかけるな。
↪︎
↪︎
↪︎
このペンダントを受け取りし者よ。
お前の望みを叶えたければ、
我のクエストをクリアしてみよ。
↪︎
クカラ草を50株集めよ。
そうすればお前の願い聖なる壁を
3回だけ使えるようにしてやる。
ーーーー
はぁ?何だよクカラ草って?これは朝になったらザズに聞く必要があるな。
というか、この文章かなりの上から目線。
一行目の文章といい……間違いなく絶対アイツだよな?それにこの矢印。これは改行の矢印では……?
遠隔操作かなんかで、このペンダントに文字を送信でもしているであろうか?
そうやって考えていると、ウィンドが閉じてペンダントの光りも消えてしまった。自動で閉じるようになっているのか、アイツが眠たくて閉じてしまったのか……まあ、考えるだけ時間の無駄だ。
とりあえずその草がどんなものか分からない事には話にもならない。このまま起きていてもしょうがないので、元の場所に戻り朝になるまで眠りにつく事にした――
――そして朝。
「えっ?ザズさんはいないんですか??」
「ええ、ルーと一緒に村に出かけているわ。村が安全か確かめに行っているの」
目を覚ますと、すでに村人達は活動を再開していた。俺の隣には昨日の夜洞窟の入り口で見張りをしていた奴らがいびきをかいて寝ている。寝ていたのは俺と怪我をした者、そしてそいつら位だろう。
しまった、寝過ごした……。
しょうがないので、話しかけたザズのご両親にクカラ草の事を聞いて見る事にした。
「クカラ草?その草は草の先端に小さな黄色い花が咲いているからすぐに分かるわ。ここの洞窟の少し先に沢山生えているわよ?でも……」
なんと!そんなに簡単に手に入る草だったとは。アイツ。俺の為にクエストの難易度を下げてくれているのだろうか?中々いい奴じゃないか。なんてちょっと見直した。
何かを言いかけたザズの両親にお礼を言い、俺は急いでその場所に向かったのだが……
「全然無いじゃん!!」
誰かの仕業か。あるいはアイツの仕業か、ザズの両親の話を頼りに草が生えていると言われた所までやってきたのにクカラ草は一本も生えていなかった。もしかして、さっき何かを言おうとしていたのは、もう無いと伝えようとしていたのか。先走りすぎた俺にも落ち度はある。
もしかすると、どこか片隅にでもひっそりと生えているかもしれないと最後の願いを胸に、クカラ草が生えていると言われた場所からちょっと範囲を広げて探していた。
「んー。これはただの草だよな?黄色い花なんて咲いてないし」
そこな辺に生えている草を隅々まで調べて見るがただの草しか生えていない。
やっぱりないか。いや、もしかするとここ以外にも生えている場所はあるはずだ。俺は一旦洞窟に戻り、改めてザズの両親にクカラ草が他に生えている場所があるか聞くことにしようと思ったのだが。
――ん?何か聞こえた気がする。耳を凝らして辺りの音を聞いて見るが、特に何も聞こえない。空耳か?
しばらくすると、今度ははっきりと声が聞こえた。それは、洞窟がある方向から聞こえたのだ。
「まさかっ!?」
嫌な予感がする。そう思いながら急いで村人達がいる洞窟に戻ると、その予感は的中する。
目の前には二体の魔物が村人達を襲い、それに剣を手に持ち立ち向かう者達の姿があった。
ちょうどそこへ、洞窟の近くまで帰ってきていたザズ達も悲鳴を聞いて急いでやってきた。
「何故ここにデーモンが!?」
その姿は名前の通りまるで悪魔の様だった。漆黒に染められた体。見るだけでも恐ろしい顔立ち。
襲撃してきた魔物がデーモンだということに驚いてたザズ達だが、すぐさま奴らに立ち向かう。どうやら村を襲撃した奴らではないらしい。それに、この山にそもそもデーモンは生息していないそうだ。では何故にここに奴らは出現したのであろうか?
「ここは俺達が引きつける。皆、洞窟の中に避難するんだ!」
「戦える者は武器を取って前へ!」
ザズとルーがデーモンを相手にしながら皆に指示を出す。
「ミドナッ!!お前も早く洞窟の中へ!!」
ザズの視界に入った俺にそう叫ぶ。
だが俺は目の前の光景を見て思う。
前世の俺であれば、ザズ達と共に戦えるのに……。その悔しさからか自然と拳に力が入る。
俺はこのままザズ達に任せて大人しく身を潜めててもいいのか……?いや違う。こんな子供の姿では力も無ければ魔法も使えない。でも……今まで培った剣の技術は衰えていないはず!?
「ザズさん!俺も……」
俺が最後まで言葉を言おうとする前にザズの言葉が遮った。
「何してるんだ!ミドナッ!!誰かアイツを洞窟の中にっ!」
「ザズさっ……」
その場からずっと動かない俺をザズの言葉を聞いた男が無理やり洞窟の中に連れて行く。
「お願いします!俺にも剣を……剣をくれれば戦えます!!」
「大丈夫。洞窟の入り口は俺達が守る。だから心配いらないよ?奥で皆と待っているんだ」
子供の姿の俺に心配をかけない様にそう優しく言ってくれた。子供だから……子供だから戦えない?
「ミドナッ!」
ザズの両親が俺の名前を呼ぶ。だが、俺は彼らの言葉が頭に入らなかった。そんな俺を彼らは皆が集まっている洞窟の端まで連れて行く。
悔しい、悔しい、悔しい。何もできない自分に腹が立つ。連れられた場所でうずくまりながら何度も自分を責めた。
「ぐわっ!?」
「グギギギギ……」
洞窟の入り口から聞こえた恐ろしい声と共に現れたデーモン。
洞窟の中にいる皆は同じ事を思った。ザズ達はやられてしまったのか?と。
でも、それは違った。もう一体デーモンが現れたのだ。ザズ達はそれぞれデーモンを相手に戦ってた。それはザズ達だからこそ対等に戦える。だから他の加勢した者達では手に負える相手ではなかったのだ。
次々に倒される加勢した村人達。そして、ついに洞窟の中へ侵入を許してしまった。