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7.ミドナ編 謎の声

 俺はキレ気味の声に話しかけてみた。


「お前は誰だ?」


『あっ!やっと気づいてくれた』


 いや、今まで気づいていたけど?


『まあ、いいわ。普通に話さなくても大丈夫よ?心の中で私の声に意識を向けて話してくれればこちらにもその声が届くから』


 そいつはありがたい。今、お前は誰だ?と言葉を発してしまった時に、俺の前を通りかかった奴が「俺っ??」ってちょっとびびっていたからな。


『コホンッ!じゃあ改めまして。その魔法使いたいですか?』


(だーかーら!!まず名を名乗りやがれって言ってるの!なんだよ、魔法を使いたいですか?って)


『ちょっとあんた!さっきから何なのよ!普通こういう時は使いたいです!でしょ?貴方達はいまピンチなの!私に構っている暇があったら取っとと返事しなさいよ!!』


 いかん。声の主が本当にキレ出した。得体の知れない奴だが、ここは1つ大人の対応を見せてやるか。


(あぁ。使えるなら使いたい。でも、こんな子供の俺にその魔法が使えるのか?)


『やっと、まともに話す気になってくれたのね。まあ、今回は優しい私に免じて許してあげる。じゃあ聞くわよ??貴方はその魔法使いたいですか?』


 めんどくさい奴だな……


(使いたい。この俺でも使えるのなら……)


『YESorNO?』


(くっ………………yes)


『わかりました。一瞬殺意がある言葉が混じった気がしましたが……。まあ、気づかなかった事にしてあげましょう。では貴方にこの魔法を使えるチャンスを与えましょう』


 そいつの話が終わると俺のズボンのポケットが膨らむのを感じた。


『貴方のズボンの右のポケットにとあるペンダントを入れておきました。後はこのペンダントの導くままに…………』


(おい!ペンダントが何だって?)


『……………………』


(おいっ!返事しろっ!!)


『プツッ…………………』


 そのまま、名前も分からない得体の知れないやつと交信が途絶えた。てか、今何か回線が切れた音がしたよな??……まあいい。


 確かズボンの右のポケットに……。


 さっきの会話を思い出しながら、手を右のポケットに突っ込んでみる。すると、アイツが言っていた通りペンダントが入っていた。


 それをまじまじとみて見たのだが、おぉ、何かゴージャスな宝石みたいなのが付いている。


 そのペンダントは大きな青い石を取り巻く様にシルバーの小細工が施されていた。女性が付けても男性がつけてもカッコいいやつ!やるな、アイツ。


「おい!ミドナ!」


 アイツと交信をしていた為、ずっとその場に立ち尽くしていた俺をザズが心配して駆けつけてくれた。とりあえず、このペンダントは後で誰もいない所で確認しよう。そう思いまたポケットに戻す。


「ちょっとバタバタしててお前を放置してすまなかったな」


「いや、大丈夫です。俺に出来ることなんて何もないから」


「ん?本当に大丈夫か?そんな辛気臭い顔をして……あっ!もしかして……すまないな。お前にまで心配かけちまったな」


 ずっとアイツと交信し続けた結果。ザズはアイツとの会話に疲れた俺の顔色を見て、魔物に襲われた村を見てショックを受けていると勘違いしていた。


 いや、俺は勝手に交信しときながら、自分の都合で交信を切るアイツのせいで違う意味でショックを受けています。


「とりあえずひと段落したから皆に挨拶をしよう。洞窟の中に入るぞ?」


「はい」


 ザズの案内で洞窟の中へと入ると狭いかと思いきやそこは案外広かった。村人の総計50人すっぽり入る大きさだ。洞窟の壁には所々にランプが設置してあり中は結構明るく、それに奥に続く道もある。


 どうやら以前から何か起こった時に避難できる様にと少しずつ穴をほって作られた洞窟らしい。


 でも、こんな所に洞窟を作ったら魔物が入って来るのでは?と思ったが、魔物が入らない様に入り口を岩で防ぎカモフラージュして見つからない様にしているそうだ。


「皆聞いてくれ!」


 ザズの言葉に洞窟内のあちこちに散っていた村人達が集まり始めた。


「実は皆に紹介したい奴がいる。ミドナこっちへ」


 名前を呼ばれ俺ははザズの隣につく。


「こいつの名はミドナ。実は孤児でな。皆こいつを村に受け入れてやってくれ」


 ザズは俺が奴隷だと言うことを隠して孤児だと言ってくれた。どうやらこんな小さな村でも奴隷を差別している奴もいるらしい。この村に馴染むためにあえて身分を隠したそうだ。


「ミドナ!改めてよろしくな!」


 そう言って一番乗りでルーは俺に挨拶をしてくれた。

 ルーはザズの幼馴染ということは聞いていたが、彼はザズに匹敵する位の力の持ち主で、この村を先頭に立って守っているそうだ。


 本来であればザズとナラスと共に兵士になれるほどの実力者。だが、みんな出て行ってしまうと村を守るものがいなくなるということであえて此処に残った勇敢な者。


 その後も村人達は次々に俺に挨拶をしてくれた。


 俺が一通り挨拶を済ませると、ザズは改めて両親の元に俺を連れて行った。


「大体察しはついていると思うけど……」


「分かっているわ。私達の元で面倒を見ましょう。ミドナ?私達の元でも構わないかしら?」


「全然構いません。逆に俺がお世話になっても大丈夫ですか?」


「あら、中々いい子じゃない。ザズ?ミドナの事は心配しないで。ちゃんと面倒を見るから」


 実はザズ、以前から孤児など身寄りが無い者、虐待を受けて家から逃げ出し行く先が無い者を見つけては、この村に住ませていたそうだ。

 だから、ここの大半はそんな奴らばかりだと教えてくれた。


 ちなみにルーも孤児でその時はザズの両親が保護をしたらしい。そんな両親の背中を見て育ったザズ。きっと彼もご両親の血を受け継いで同じことをしているのだろう。ナラスはどうかわかんないけど。


 こうして世も更けてみんなが寝静まった後。俺はこっそり起きていた。あのペンダントをずっとポケットにしまいっぱなしだったからだ。アイツは確かペンダントが導いてくれると言っていた。


 今いる場所ではみんなが寝ている為、洞窟の更に奥へと続く道に行ってみる。ちょうど道が曲がっており、その先はまだ掘っている途中なのか行き止まりだった。


 その行き止まりには俺達が持ってきた物資が積んである。俺は皆が寝ている場所から死角になっている所で改めてペンダントを確認した。


 ここにもランプが設置されているが数が少なく薄暗い。朝になるまで待てばいいのが、ペンダントの事が気になって早く確かめたかったのは言うまでもない。


 早速俺はペンダントをズボンのポケットから出してみる。


 んー。どうやったら導いてくれるのか?とりあえず青い石を触って見る。だが反応しない。もしもーし?そう小声で問いかけて見るがやはり反応しない。


 オイっ!ちょっとイラつきついつい大声を出してしまったが、それでもダメだ。俺はどうやらアイツに踊らされていたようだ。


 イラつきながらペンダントをポケットにしまおうとしたその時に青い石が光り出したのだ。


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