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5.ミドナ編 ザズ達の故郷へ

 ザズ達の家に1日……いや2日程泊まらせてもらった次の日、彼らが話していた故郷に俺は連れて行かれる事になった。


 故郷まで連れて行ってくれるのはザズ。俺の為に仕事を休んで連れていってくれることになったんだ。本当は助けられた翌日に連れて行ってもらう予定だったが、準備があると言うことで今日出発する事になった。


「おーい!準備はできたか?」


「はーい!出来ましたっ」


「おっ!サイズもピッタリだし、似合っているじゃん!」


 ザズは奴隷の服を着ていた俺の為に服を新調してくれ、さっそくその服を見に(まと)っていた。勇者の服装には遥かに劣るが、奴隷の服に比べれば全然マシだ。


 ――なんて言いながら案外気に入っている。上下紺色のシンプルな服だがこのさりげないラインがカッコいい。


 ちょと恥ずかしいが、鏡の前でファッションショーばりのポーズも決めてしまったのは秘密だ。鏡越しに転生した自分の顔を見てみるが、前世より少し劣る。だが、大人になればそこそこイケているだろう。


 力も欲しいし、早く大人になりたい……。


 ナラスは俺が起きた時すでに仕事へ出かけた後だった。

 俺に元気にやれよっ!と俺宛にザズヘ伝言を残してくれていた。


「じゃあ出発するか」


 俺達が家の外に出ると、そこには馬車が用意されており、

 荷台にはたくさんの荷物が乗っていた。この荷物は俺を連れて行くついでに故郷まで運ぶそうだ。


 彼らの故郷は決して裕福とはいえない貧しい村だそう。だから、ザズ兄弟は自分の親族やその村の人々にこうして定期的に食べ物や生活必需品などの物資を提供していたのだ。


 彼らがこの国の兵士になったのも、もちろん強いってのもあるのだが、兵士になれば賃金も高い。だからそのお金で自分達の故郷で暮らす人々が少しでも豊かに幸せになってくれればとの思いで物資を提供しているそうだ。


 酔っ払った2人がまだ出会って間もない俺にペラペラとそう話してくれた。


「おいっ!さっきから何ぶつくさ言っているんだ?早く乗れ!置いていくぞ?」


 おっと、俺のナイスなナレーションを遮られてしまったので、彼らの話はこれ位にしておこう。置いてかれても困るし……


 ザズの故郷リントガルは馬で二日走った所にある。途中、村に立ち寄り休憩を取りながら目的地まで行く計画だ。


 そして出発してから馬車で走る事数十分。目の前には広大な草原地帯が広がった。


「ここはお前を助けた場所だ」


 そう言ってザズは草原地帯を指差した。


 昨日ここにいたのは真夜中。月の明かりで広いとは思っていたが、明るい場所で改めて見ると広大さを実感する。


 草原の向こうの方では青、赤、黄色をした何かが草の上から顔を出したり消えたり。ぴょんぴょん飛び跳ねているのか?あの色、まるで信号機だな。


「あれは?」


 その得体の知れないモノに指をさした。


「あれはスライム達だ」


 そうだ。ここはスライムの巣と言っていたな?


 ふと、俺を襲ってきたスライムが足が速かったのを思い出した。いや、足なんてないけど。


 ザズにスライムの動きが早すぎてビビったことを話したら笑われてしまった。


「何を言ってるんだ?確かにここのスライムは他のスライムに比べて動きは速いが、他のスライムも中々の速さだぞ?」


 ほぅ。ここの世界のスライムは足が速いとな?


 まさかな。そう思いもう一つ聞いてみた。スライムはやっぱ弱いですよね?と。


「ははははっ!お前面白いな?まあ、奴隷だったんだから、外の状況はあまり分からないのもしょうがない」


 そう笑われてしまいました。


 そうなんです。俺はこの世界に来て間もない為、無知なのです。でも、奴隷のフリをしておけば常識的な事を知らなくても奴隷だからと誤魔化せる。ある意味、奴隷に転生してラッキーだったのかも知れない。


 ちなみにザズが言うにはスライムはCランクの冒険者が相手をする程の実力を持っているらしい。


 前世での魔物の知識は通用しないな。


 おっとそうだ。忘れてはいけない事があった。この世界について聞いておかなくては。


 ザズ達の家にお世話になっている時に聞こうと思っていたが、彼らは日中は兵士として、夜は酔っ払いとして任務をこなしていた為、とても聞ける雰囲気ではなかったのだ。


 だから聞けるのは今しかない。どうか無知な俺の為に知識を下さい。


「あの……俺奴隷だったからよくわかんないんだけど、この世界の事教えてもらってもいいですか?」


「ん?この世界のこと?」


「はい。大陸の名前とか、国の名前とか……魔物がいるならもしかして魔王とかもいるのかなとか……?」


「おまえっ!!?そんな事も知らないのか??そうか……生まれた時から一歩も家からだしてもらえなかったんだな……それに何も教育もさせてもらえなかったなんて。さぞかし今まで辛かっただろうに……」


 ザズは目を潤ませながら俺の両手を手に取った。


「任せろ!俺がお前に生きていくのに困らないように色々教えてやるよ!」


 ザズ熱い、熱すぎる……


 でも、ザズのその熱さのおかげでこの道中、いろんな話を聞くことが出来た。


 まあ、無知な俺が魔物、魔王という単語をうっかり言ってしまったが、ザズは気づいていない様なので俺も気にしないでおくことにする。


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