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4.転生者アリアナ2

「グラン様っ!」


 女性は急いでやってきたのか、美し顔に汗が光る。ブロンズ色の髪に青色の瞳の彼女。その女性が部屋に入ると香水を付けているのだろうか?ふわり良い香りが漂った。


「突然の訪問をお許し下さいグラン様。砂浜で倒れている少女をお救いになったとお伺いして、急いでやって参りました」


 ほう?グラン様のお口が(ほころ)んでいるわ?この方はグラン様と恋仲かしら?


「貴方がグラン様が救った少女ね?大丈夫?怪我はしていない?」


 彼女はそう言ってアリアナの前にやってきた。


「ご心配ありがとうございます。私の名前はアリアナ=ルージェントと申します」


「あら、まだ小さいのに礼儀作法がしっかりしているわね?私の名前はリディア=カルナーラですわ。宜しくね!アリアナ」


 リディア様とても良いお方ですわ!


「リディア。すまんな。今日は一緒に出かける約束をしていたのに」


「いえ、私は気にはしておりません。何よりグラン様は尊いお命を救われた。とても良いことをなされたのです」


「リディア……」


「グラン様……」


 おっと、私の前でいちゃつくのは辞めて頂きたい。


『バタンッ!』


 何?また誰か来ましたわ?


「グラン様っ!」


「ノーラン!?何しに来たっ!」


「グラン様突然の訪問をお許し下さい。先程侍女からグラン様が少女をお助けになられたと聞き、急いでお伺いに来ました」


 黒色の髪に黒色の瞳の女性。ノーラン=デュカノンが侍女を引き連れて現れた。


「少女は元気だ。心配要らん。用が済んだらさっさと出て行け」


「グラン様っ!?」


 この展開。もしかして、リディアがヒロインでノーランが悪役令嬢かしら?


 グランと話していたノーランはリディアがいることに気づく。


「リディア!?なぜ貴方がここにっ!?」


「ノーラン様……」


「辞めろ!ノーラン!」


 ノーランがリディアに睨みを効かせているわ!やっぱり!!


 三人のやりとりを楽しそうに見ていたアリアナだったが、グランはアリアナが自分達のやり取りを見ている事に気づいた。


「お前達、子供の前だぞっ!?」


 他の二人もあっ……と言う顔をしてアリアナを見る。

 あらあら、せっかく盛り上がってきた所なのに残念です。


「この子ですか?グラン様が助けたと言う少女は?」


 このくだりは?また挨拶ですね?この世界は挨拶ばかりで大変ですわ。


「初めまして。私、アリアナ=ルージェントと申します」


「あら?可愛い?私はノーラン=デュカノンですわ。ここにいるグラン様の婚約者ですわ」


 ノーランはさっきの剣幕だった顔とは思えないとても優しい顔で挨拶をし、そして自分が婚約者だと言う事をリディアに聞こえるようにさりげなくアピールした。さすが悪役令嬢。


 グランはアリアナとの挨拶が済んだのを確認すると、ノーランをさっさと部屋から追い出そうとした。でも、それをアリアナが全力で引き止め、仕方なくその場にいる事を許す。


 そんな顔をしないでくださいグラン様?だって。ノーラン様が居なくなってしまったら、せっかくの修羅場が終了してしまいますわ!


 あら?

 アリアナは頭が急にクラっとすると、足元がふらつき倒れそうになった。だが、グランがそれをキャッチする。


「アリアナ?君はまだ目が覚めたばかりで体調が万全ではない。ベッドで休んでいるんだ」


「はい……」


 もっと間近で三人のやりとりを見たかったのに。しょうがないですね。


 アリアナは大人しくベッドに入り安静にしながら聞き耳を立てる事にした。


 グランはアリアナがベッドで横になったのを確認すると、コホンと咳払いをして、アリアナの今後のことを相談した。


「実はアリアナは記憶喪失らしいんだ」


「「!!?」」


「自分がどこから来たのかも分からないと言っていてな?どうしたものか……。記憶が戻るまで私の城で保護しても良いのだが、もしこのまま記憶が戻らなかった場合、同じ女性と一緒に暮らした方がアリアナも安心するかと思ってな?」


 グランは自分の考えていた事を二人に伝えた。


「でしたら、グラン様。私の家に侍女として、アリアナを迎入れましょうか?」


 リディアはスプーシル王国の中でも地位が高い公爵家の娘。

 屋敷も広いし、使用人の数も多い。教育環境も整っているので、自分の屋敷なら快適に暮らせると申し出た。


「何を言いますの!?貴方がそう言うなら私の屋敷の方がアリアナも快適に暮らせますわ?それに私はグラン様の婚約者。グラン様の悩みは私の悩みと同然ですわ!」


 ノーランも負けじとリディアの提案に噛み付く。彼女の家系もリディアに引けを取らない公爵家の娘だった。


「まて、二人とも。俺は……できればリディアにお願いしたいと思っているのだが?」


 そう言ってリディアを見つめる。


「グラン様……」


 リディアの頬がほんのりと赤くなる。

 それとは逆にノーランは悔しそうに歯を食いしばる。


 だめ!私はノーラン様のところへ行きたいっ!折角だから同じ悪役令嬢としてノーラン様の生き様を見届けたいのです!


 布団の中で聞き耳を立てていたアリアナ。彼女はノーランの所に行くために一芝居を打つ事にした。


「グラン様……」


 アリアナはベッドから上半身を起こしてグラン達に声をかけた。


「アリアナ!無理をするな。横になっているんだ」


「だいぶ楽になりましたので、大丈夫です。それに……グラン様。盗み聞きをして申し訳ございません。ですが、私はノーラン様の所でお世話になりたいと思っております」


「なぜだ?リディアの方が……」


 グラン様、どうしてもリディア様の所に私を行かせたいのですね?でもそうはいきません!


「リディア様もとても素敵なお方です。でも、ノーラン様に初めてお会いした時、記憶の奥底にある姉の顔を一瞬ですが思い出しました。もしかすると、ノーラン様は私の姉と顔が似ていたのかもしれません。だからこの先、ご一緒すれば、私の記憶が蘇るかもと思いまして」


「何?そうなのか?」


 グランの問いかけにアリアナは頷いた。


 さあ、後一歩です!これで勝負にでましょう!!


「グラン様お願いです……どうか、ノーラン様の所へ」


 アリアナは涙を流してグランを動揺させた。


「グラン様!アリアナもこう言っています。だからぜひ私の元へお預け下さい」


 ナイスアシスト!ノーラン様!


「アリアナ……分かった。お前をノーランの元へ預けよう。ノーラン、しっかりと世話を頼むぞ!」


 やりましたっ!女の涙は最大の武器ですわっ!!


 こうしてアリアナは無事ノーランの侍女として彼女の下で働くことになったのである。



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