2.転生者ミドナ2
「あっ!スライムを、倒してくれたのっておっさ……いや、貴方ですか?」
俺はおっさんに助けてもらったお礼を言った。どうやらこのおっさん……もとい、ザズ=ナルディはこの大陸にある王国の騎士だそうだ。
「先程こちらの方に流れ星が落ちたみたいでな。この辺りを警備していたんだよ。それで、声が聞こえて急いで来てみればお前が襲われていたって訳だ。お前も見ただろ?さっきの流れ星」
流れ星が?俺さっきここの地面に落ちてきたよな……?もしかして俺のことっ?
「えっ……ええ。本当に近くに落ちたみたいでびっくりしました。それに、助けてもらって本当にありがとうございます」
「それにしても……子供がこんな夜更けにここで何しているんだ?」
「いや、ちょっと迷子で……」
実は転生してきました。なんて言ったってどうせ笑われるに違いないし。前の世界でも同じこと言ったら大爆笑だったよ。だから、今回は隠しておく事にする。
「おーいっ!誰かいたのか??」
おっさんの同僚か?同じ鎧を身に纏ったおっさんがまた増えた。
「子供だ!迷子になったらしい」
「こんな所に子供が??」
そう言って俺をしばらく見つめたおっさん、もといナラス=ナルディが膝をついて俺の頭を撫でた。名前からしてどうやらザズと兄弟みたいだ。
「坊主!大丈夫だったか?此処のスライムは足が速いからな。とりあえずここはまたスライムが出るかも知れないから場所を移そう、このマントを羽織っておけ。坊主立てるか?」
やっぱり、あのスライム足が早かったのね。
俺の手を掴んで立たせてくれた上にマントも貸してくれたナラスに礼を言い、俺はザズとナラスの後を付いて行った。
少し歩くと馬2頭が主人の帰りを待っている。
俺は頭を撫でてくれたナラスの馬に一緒に乗せてもらう事になったのだ。
「おい、坊主!」
「いや俺の名前、ミドナです」
「そいつは悪かったなミドナ!お前迷子って言ってたけど、一体どこからきたんだ?この草原地帯にはスライムの巣があることで有名なのにそこで迷子って?まあ、しかし、よく今まで生きてたな」
「あっ、いや、巣の事は知っていたのですが、知らず知らずのうちに迷い込みまして。たまたま遭遇しなかっただけですよ?さっき遭遇したのが初めてです」
スライムの巣?へー、あいつらも巣なんて作るのか。
ん?おっさんが何か変な目で俺を見つめてるな。
「なあ。ミドナ。本当のことを言えよ?」
本当のこと?俺が転生者ですってことか?
「ザズはああ見えても優しいからな。お前には何も言わなかったかもしれんが。俺は違う。白黒はっきりさせたいタイプでな」
何言ってるのこのおっさん??
「お前奴隷だろ?」
「えっ!?いや僕は奴隷なんかじゃ……」
「お前の服装。それは奴隷が着る服だ。契約の印が無いからまだ主人が決まる前に逃げてきたんだろ?だから知らずにスライムの巣に迷い込んだんじゃないのか?」
なんとっ!まさか小汚い服とは思っていたけど、奴隷の服だったなんて。誰だよこの服をチョイスした奴は!?てか、俺って奴隷に転生した訳??
俺がしどろもどろになっていたら隣で馬を走らせていたザズが助け舟をだしてくれた。
「ナラスッ!まだ子供だぞ!?」
「子供だとか関係ない。この子の為に言ってやってるんだよ!奴隷が逃げたら死刑だぞ!?お前もお前だ。奴隷を助けるなんてよ」
死刑か。せっかくスライムから逃げれたのに今度は死刑なんて。何なんだこの世界。
「まだ、こんな小さな子供が魔物に襲われていたんだぞ?それに奴隷だったとしても、尊い命だ」
ザズ、熱いな。
「で、この子をどうする気だ?俺達と共に連れて行く事はできないぞ?ザズ。ただでさえ、奴隷を匿ったとなれば牢獄行きだ」
「分かっている。この子は俺達の故郷で育ててもらおうと思っている。あそこなら奴隷とバレないで過ごせるだろうしな」
「ったく、お前はどこまでもお人好しだな。まあ、それがお前の長所でもあるんだが」
何か俺の意見を差し置いて、勝手に話が進んでるんですけど?
でも、ザズのおかげで俺はどうやら命が助かりそうだ。ありがとうっ!ザズ!
そうやってやり取りをしながらザズ達が馬を走らせていると、一緒に見回りをしていた者達であろうか?他の兵達が彼らの元にやって来た。
「さっきの流れ星について、何か収穫はありましたか?……んっ?その子供は?」
「魔物に襲われそうになった所を助けてやったんだよ」
すかさずナラスが不思議そうに俺を見ていた彼らに理由を説明してくれた。
そうか。さっきマントを貸してくれたのも、他の奴らに俺が奴隷とバレない様に服を隠す為か。ナラスも本当はいい奴なのかもしれない。
「で、そっちは何か見つかったか?」
「えぇ、落ちた場所は確認できたが、地面がへこんでいるだけで、落ちてきたモノは周辺を探してみましたが、見つかりませんでした」
「そうか」
落ちて来たモノ……間違いなく俺だ。
「とりあえず俺達は王に報告しに一旦城に戻るが。ナラス。この子をお願いしていいか?」
「分かった。じゃあ後でな」
そう言ってザズは一緒に来た兵達と城に向かい、俺はナラスと共に彼らの家へ向かった。
そして、俺はザズ達の家で一時保護される事になったのだ。