23.カルマ編 自己紹介
「はぁ……」
食べ終わった後の食器を洗いながらカルマはため息をついていた。
私は一体この先どうなってしまうのかしら……
今は目の前にある仕事を淡々とこなしていく事しかできないカルマ。
その目には光はない。ただ、この先自分にとっていい未来だけは絶対にやってこないであろうと確信はしている。
――魔王と呼ばれる少年から配下にされたカルマ。
魔王の配下にされたその後、他の配下との顔合わせが改めて行われていた。
「じゃー誰から紹介しようかな?んーまずはリズか?」
そう言って少年が指さしたアッシュグリーンの髪色の鋭い目つきの人物。さっき人間だと言われていた男性だ。
私を助けてくれた……ううん。結局は助けてくれなかったけど……
リズと呼ばれた彼は改めて私に自己紹介してくれる。
「リズだ……」
ただそれだけの言葉だった。
そして次に紹介してくれたのはマルジェル。この女型の魔物は知っている。私を刺して、自らの命を分け与えてくれたと言っていた魔物。
さっきは暗闇の中ではっきりとは見えなかったが、彼女は胸が異様にデカく服装もセパレートタイプの水着の様なもので、いやらしい雰囲気を醸し出していた。
「私はマルジェルよ。貴方のことは正直嫌い。貴方の存在自体嫌いだわ!」
……私をなぜか、すごく毛嫌いしている様だった。
そして、さっきまでマルジェルと言い合いをしていた鳥の魔物。名前をギルン。
鳥が主体となっている為、体全体に真っ黒な羽が生えている。まるで人型版カラスの様だ。
「お前が次に会う時まで生きてたら、よろしくやってやるよ」
……なんかとても怖いことを言われました。
そして、残りの魔物ニ体はと言うと。
一体目の魔物の名前はロックゾン。体は石の集合体できているそうだ。体、手、足全てがダークグレーの石でできていた。目だけは宝石だろうか?赤く光輝いている。体も私の三倍はありそうだ。
「………………………………」
「ロックゾンは言葉を話せないから」
そう少年に言われた。
二体目の魔物の名前はアーラン。竜が主体となっている様で体は鱗で覆われていた。ギロリと睨む目はとても冷たく、恐ろい。少し見られただけで、鳥肌が立ったのを忘れない。
――以上が自分の配下だと少年は紹介してくれた。
「で、僕の名前はネオだ。宜しくね!カルマ」
黒髪の焦げ茶色の目をした魔王の少年……もといネオは改めて私にそう挨拶をした。
全員の紹介が終わると、早速ネオは私の面倒見役を選定する。
「カルマはまだ配下になったばかりだから、誰かにしばらくは面倒を見てもらいたいんだけど……そうだっ!リズ!君が彼女の面倒を見てよ?彼女も元は人間。リズと一緒の方がきっと安心すると思うからさ」
そうネオからいきなり話を振られたリズ。
少し目を見開いて驚いていたもののすぐ様、平常心に戻りネオにお辞儀をした。
どうやら、受け入れたということみたいだ。
「じゃあ、話は終わり!次回の会合はまた追って知らせる。いいかい?皆?」
「「はっ!おうせのままに」」
こうして、初見の顔合わせは終了したのである。
◇
「ついて来い」
顔合わせが終了すると同時に、私にそう言って話しかけてきたリズ。
私はリズが発したその言葉に従い、彼の背中を追う様に城の外へと出て行った。
無言で森の中を歩くリズ。
彼の後ろを歩いていた私は配下達に囲まれて緊張していた気持ちが解き放たれ、そしてこの今起こっている現実が受け入れられずに涙が溢れ出した。
彼はそんな私を無視して先にどんどん進んでいく。
「待って……」
私のかける弱々しい声にも耳を貸さず、私の方も気にかけず、ただ前だけを向いて歩いていく。
そんな状況が続く中、城を出てから魔の森をしばらく歩いた後、リズは森の中にある洞窟の前で足を止める。
「こっちだ」
私は彼に導かれてその洞窟に入っていった。洞窟に入る瞬間、ふっと何かをすり抜けた気がするがリズはそれもお構いなしに進んでいく。
暗い暗い洞窟を二人で無言で歩いて行くと、奥に光が見えた。出口だろうか?光が灯る方へどんどん進んでいく。そして、ついに洞窟を抜けたのだ。
そこで見た光景は先程とは違う別世界に来た様な景色だった。
暗い洞窟から外に出たせいで太陽の光が目に馴染まず、目の前が白く見える。
だが、段々と視界が太陽の光に慣れてきた時、目の前の光景に驚きを隠せなかった。
「キレイ……」
さっきまで居た薄気味悪い森とは違い、目の前には草原が広がっている。太陽も空に昇り暖かい光が肌を貫く。
さっきまで地獄にいた感覚だったのに。これはまさに天国だった。
「こっちだ」
リズは立ち止まってこの光景を感動しながら見ていた私に声をかける。
私はそれに答える様にまたリズの後ろを付いて歩き、そしてようやく彼の寝床に到着したのである。
目の前には一件の可愛らしい小さな家。
「ここが、俺が寝床としている所だ」
「ここが……?」
「あぁ、ネオ様が俺が住みやすい様に魔法で作ってくれたんだ。……中へ入るぞ」
「……はい」
リズに再び導かれて、彼の家へと向かう。
だが私はその後に発した彼の言葉を聞き逃さなかった。
その声は小さく、ボソッと一言だけ聞こえてきた。
「守ってやれなくてすまない」
えっ??
もしかしてリズは本当に私のことを守ろうとしてくれていたということ?
そういえばマルジェルに出会うまでの間、リズは私を助けるかの如く、急いで森の外へ出そうとしていた。
マルジェルに見つかって助けれなかっただけ?
私は家へ向かって歩いて行くリズの背中を見つめた。
もしかしたら彼はそんなに悪い人では無いのかもしれない……
そう思えた瞬間だった。




