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17.アリアナ編 精霊の力

「どうだ?怪我の具合は?」


 怪我の具合を聞かれ、(くじ)いた足を動かしてみる。先程かけてもらった魔法の力でどうやら治ったみたいである。


 うん!痛くない。


「あっ、ありがとうございます。見ての通りすっかり治りました」


「それは良かった。ついでにそこの傷も直してやる」


 そう言って老人は私の体のあちこちに出来た傷を治してくれた。そして、私の治療が終わると次にノーラン達の元に向かう。


「ふむ。彼女達も怪我をしているな。どれ、治してやろう………ヒール」


 一人一人にさっきの様に傷がある所に手をかざす。すると、あっという間に傷が癒える。それは服で隠れた傷も同様だ。


 この老人は先程の私が足を(くじ)いた事も察知していたし、どうやら見えない怪我もわかる様でそれも含めて全て完治させていた。


 回復魔法を目の前で何回も見ていたアリアナ。彼女はとても興奮をしていた。


「何度見てもすごい!傷が……こんなに綺麗に治っている」


「これで大丈夫じゃ」


「ありがとうございます」


 皆の怪我を治してくれた老人にお礼を言うと、私は本来の目的を思い出し早速核心に迫る。


「あの、ここに精霊がいると聞いてきたのですが……もしかして?」


「精霊?あー。それはワシのことだ」


 やっぱり!でも改めて彼の姿をよく見ると伸びた白髪、長い髭。そしてローブを見に纏った、ただの老人。強いて言えば精霊ではなく、仙人の様な気もしますが……


「ワシに会いに来たのか?」


「ええ、実は……」


 リディアの病の事を話そうか一瞬悩んだが、一応それが今回の目的だ。結果は分かっているがその精霊という老人もとい……ケルザラに彼女の事を話してみる事にした。


「実は不治の病で苦しんでいる者がおりまして。その者の病を治すために貴方様を探していたのです」


 仮病ですが、一応(やまい)ということにしておきましたわ。


「病とな?はて?その者はどこに?」


「あの方なのですか?」


 私はリディアを指さす。


「あの子か?さっき見たが病など患ってはおらん。強いてゆうならとても元気じゃ。心配する事はない」


 ケルザラは彼女を見ると、予想通りの答えが返ってきた。


 やはり……!?


 でも、この結果を皆へどう伝えたら良いのでしょうか?さっきはリディア様がどうするか楽しみで仕方ありませんでしたが、いざとなるとちょっと困ります……


 アリアナが皆へどう説明をしようか考えていると、ケルザラは不思議なことを言い出し始める。


「それより、さっきからちと気にはなっておったんじゃが?」


 私の体を下から上へと舐め回す様に見つめるケルザラ。


「なっ何でしょうか?」


「お主からワシと同じオーラを感じるな?」


「オーラ?」


「ちなみにそこに倒れている彼女二人からも同じオーラを感じる。こう、三人も同時に揃うとはとは驚きじゃが……」


 そう言って彼が指さしたのは、ノーランとリディア。


「あの、オーラって?」


「まあ、いい。ちょっとこっちへ来なさい」


 アリアナの問いかけを無視しながら湖の目の前まで誘導すると、少し待つ様にと言われた。ケルザラはアリアナの前で、湖に向かって呪文の様な言葉を唱え始めたのだ。


 彼が呪文を唱えると湖の穏やかに揺れていた水は風がないのに少しだけ荒れ始めた。そして、私達のいる少し先に水の中からオーブが浮き出る。


「これは??」


「これは、わしがが作り出したオーブ」


 オーブがフワフワとケルザラの手元まで移動して来ると、彼はそれを手に取り私に見せてくれる。


「このオーブを手にすることで、ワシの力を引く継ぎ事ができるのじゃ。どうだ?お主、精霊になってはみないか?」


 えっっ!?急にそんな提案をされましても……かなり驚きです。


 ちなみに、オーラとは人間が秘めた力が体の外に漏れ出たものだそうだ。私達普通の人間には見えないがケルザラの様な精霊には見えるらしい。

 そして、私達から出ているオーラ。これが何と彼と波長が同じだという事だそうです。


 精霊とオーラの波長が合う者など普通はそう居ないとのことですが、ここには何故か三人も揃ってしまったとのこと。もしかすると、何かお導きがあったのかもしれません。



 それに……とケルザラは言った。

 これは何かの縁。もし、私達の様な同じオーラを持つ者が現れた時、彼は自分の力を他のものに託し、精霊職を引退してのんびりと隠居生活をしたかったのだと話してくれた。


 だが、こんな所に人はそう来やしない。ましては同じ波長のオーラを待つ者など……

 だから、私達が訪れたことをチャンスだと感じたそうだ。


 はたして、精霊というのは職業に値するものなのでしょうか?


 でも精霊になるということは人間では無くなるということ。せっかく転生して侍女となったのに、人間辞めるのはちょっと嫌です……


 私の嫌そうな表情が顔に現れていたのか、ケルザラは慌てて言葉を訂正する。


「そんなに不安がらなくても大丈夫。人間のまま精霊の力を宿すだけなのじゃよ」


 精霊の力を引き継げるのは精霊と同じオーラを(まと)っている者のみと彼は言う。


 私にくれようとしている力とは、さっきケルザラが使っていた回復系の魔法とかが使える様になるらしいのですが。


 但し、彼は精霊で私は人間だ。私が力を引き継いでも体の能力に準じて魔法の力は落ちるそうだ。もちろん彼が使えて私が使えない呪文も出て来るわけで……

 それでも、人間を助けるには十分な力だと言ってくれた。


「ワシだけがこの能力を持っておっても宝の持ち腐れ。かといって、今更表舞台に立つのもな。もともとわしゃ、人見知りなんじゃよ。だから、こうやって山の(ふもと)の奥深くに引きこもっておるんじゃ。だからお主にこの力を託す。お前の好きなように使うといい」


 そう言われてしまいました。でも、オーラを纏った者ということは……


「もしかして、今あちらで気を失っているお二方にも精霊の力を分け与えることができると言うことでしょうか?」


「彼女達もワシと同じオーラを持つ者。もちろん分け与えることは可能じゃ。だがこの力を渡せるのは一人。力を分散して渡すことは不可能じゃ。まぁ、分けることが出来たとしても、力もかなり半減して使い物にならないじゃろうがな」

 

 そっか……


 私はケルザラの話を全て聞き終えた後考えていた。


 もしかしてこれがイベント?

 私達が一緒について行かなかったらリディア様だけに、精霊の力が授与されたのかもしれない。そしてその力を宿した彼女は精霊の化身と崇められて、グラン様にもかけがえのない人となるのは確定であろう。


 良かった一緒にここへ来ることができて。


 アリアナはちょっとホッとするのであった。


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