幕間 タケル
今年もあとわずかですねー
俺の名前は【タケル クライン】
初代クライン伯爵だった。
今はただのタケルでダンジョンマスターをやっている。
俺はこの世界とは別の世界で生きていた。
だが、この世界に無理やり召喚された。
俺を召喚したのはエルデンという国だった。
理由は近隣国とのイザコザや魔王を倒してほしいから…だとさ。
んなもん、自分達で何とかしろよ!っと正直思ったが、俺にはこの世界での生活基盤が無い。
知り合いも住むところも無ければ金も無い。
おまけに元の世界に戻るすべも無い。
何故なら、異界を渡れるのは魂の状態か死ぬ寸前の状態の者だけなんだとさ。
本来、生きているモノが行き来する事が禁じられているからだとか、悪びれることなく言い放ちやがった。
何でも遥か昔に自由に異界を渡る人間がいて、他の世界から人間を連れてきて奴隷として働かせた者がいたそうだ。
それを怒った神が行き来できなくしたらしい。
その事で召喚術が編み出されたそうだ。
先ずは条件を探りつつ召喚を行った。
始めは何も起こらなかった。
それでも根気よく続けるうちに髪の毛1本、肉体の一部が召喚されてきた。
そうして長い年月をかけて実験した結果、日食か月食の日に誰の目にも晒されない場所で瀕死になっている人間を召喚できるようになったらしい。
ただ、かなりの魔力を要するので魔力の高い人間が複数人必要なようだ。
そして、回復魔術の使える人間が必要不可欠だ。
召喚された瞬間に召喚者を癒さなければ、死んでしまうからだ。
何故そこまでして異世界から召喚するのか。
異世界から来る人間は、界を渡ると何故か不思議な力を身につけるそうだ。
好きに連れてきていた頃は相手が特別な能力に気がつく前に奴隷の首輪をつけて従わせた。
今は神の力なのか奴隷の首輪は弾かれてしまう。
そこであの手この手で懐柔し、反発する術を知らない内に神前契約をしてしまうのだ。
神前契約とは契約の神を証人とし契約する魔法で高位神官のみが扱える特別なものだ。
契約を違えると神罰がくだるらしい。
無い無いづくしの俺も仕方がなく契約した。
ただ、こっそりと「魔王を倒した後は自由を約束する」という一文を魔法で焼き付けた。
ライトノベルをよく読んでいたので、それくらいの力は使えるかもと試してみたのだ。
相手がサインした瞬間に効力が発揮されたのが分かったが相手は気が付かなかったようだ。
それにしても魔王は仕方がないにしても国同士のイザコザぐらいは自分達で何とかしろよ!
努力する部分が間違ってるだろうが!
知識や力をつけて魔王を倒す旅に出たけれど、飯が不味すぎて辟易した。
ろくな調味料も無いし。
飯と言えば外食か弁当か冷凍食品だったからなー。
料理も覚えておくんだったと何度後悔したか。
何とか魔王を倒して、倒すまでは国家間のイザコザを片付けた。
そのあとは褒美をくれると言ったので目をつけていた広大な土地を要求した。
ここは人手と資金が足りなくて建国以来放置されていた未開拓の土地なので二つ返事で了承された。
ついでに伯爵位をくれるというので取り敢えずもらった。
この時の契約書にも小さく国に納める税金は最低限で土地と爵位を没収することは未来永劫できないと焼き付けた。
この時も奴らは気が付かず。
まあ、この時点で気が付いていたとしても数人で開拓できるはずが無いと思い込んでいる節があったので何も言わなかっただろう。
10年経っても自分達が食べていくだけでやっとに違いないと陰口さえ聞こえた。
嫌味なのか、5年間の税金免除になっていた。
だが、国の予想を覆し開拓は順調。
噂を聞きつけた人間が少しづつ仕事を求めて移住してきた。
領地によっては待遇が良くない場所もあって、俺の領地で働く方がマシだという者もいれば、家族を亡くして心機一転という者や仕事を依頼して来てくれた業者が気に入って居着いてくれた者もいた。
俺には家を作るスキルがあったので無料で家をプレゼントしたのも人が集まる理由のだと思う。
税金の免除期間の5年が過ぎた頃に、税率を設定する為に使者が訪れた。
発展の速さに驚き、税がたくさん取れるに違いないと、ほくそ笑んだ。
生憎、契約は既に交わしているとシレッと控えの契約項目を見せた。
使者の顔色は青ざめた。
ざまぁーみろ!
因みにその前の契約書の細工にはまだ気がついていないようだった。
単に契約内容を忘れているのか、その頃は近隣国とのいざこざ沈静化していて俺という武力を必要としていなかったからとかだと思う。
急に武力が必要となった時に思い出して従わそうとして失敗して確認するなんてことになるかもな。
他力本願に頼りきりで脳内お花畑なんだろうな。
と思っていたが幸い? そんな機会は無かった。
5年間で俺の能力で開墾し作物を育て収穫物は売るほどあったので他領に売ったり他国に売ったりして領内は潤っていった。
因みにこの世界に来る前の俺は大学生でモデルをしていた。
名前は倉内武尊。
この世界に来た時は倉内の読み方を変えてクラインとした。
名前で縛られる恐れを考えてのことだ。
奴らは、そこまでは考えていなかったらしいが、後で何があるか分からないし無難な選択だったと思う。
大学の仲間と海へ行った時に、海の事故で人知れず海の底に沈もうとしていた時に召喚された。
最初、パートナーの聖女と2人で始めた開墾も少しずつ人が増えてきて大きな街もいくつかできた。
子供が生まれ孫が生まれて70まで生きた俺は生涯を閉じたが、何故だか出来たてのダンジョンのマスターになっていた。
初めは大きなドームのような洞窟にいて、近くにある出口を出ようとしたら出られない。
自分に鑑定をかけたら
名前 タケル
年齢 ?
種族 ダンジョンマスター
となっていた。
ダンジョンマスターって種族なの?
と思ったが神でも人間でも獣人でも魔族でも動物でも幽霊でもない。
残るのはダンジョンマスターになったという事実だけ。
ならばそれが種族と言われればそうか……な?
無限収納の中を確認すると生前持っていた物はそのまま入っていた。
俺がこの世界に召喚された時に着ていたダイバースーツとスマホも入っていた。
ダイビングをしていてなぜスマホを持っていたか。
海の中でも、そこまで深い場所ではなければ問題なく使える防水スマホケースというのがあって、それで海の中を撮影していたからだ。
界を渡る時に魔道具化したようで魔力を流すと使えたのだが、孫が生まれた辺りで壊れてしまった。
いつか修理する方法が見つかると良いなと無限収納に入れたまま、死ぬまでに見つけられなかった。
リィーンなら俺と違って好きな場所に行けるから修理できる方法を見聞きしたら教えて欲しいと、今度相談してみよう。
リィーン。
彼女は最近できた知り合いだ。
個人的には友達だと思っているが彼女がどう思っているのか分からない。
初めて会った時、ダンジョンの地下2階の浜辺の奥でバーベキューをしていた。
見事な結界をはっていたので普通の人間には姿も音も匂いもしないだろう。
だけど、ダンジョンは俺の体の一部、否、俺がダンジョンの一部なのかもしれないが、ダンジョン内の事なら何でも分かる。
俺の耳には美味しそうに焼ける音が、俺の鼻には美味しそうな匂いが、俺の目には美味しく焼けて食べ頃になっていく食べ物が見えた。
思わず声をかけて参加させてもらった。
次にあった時には15階層の宿の食事改善をお願いしたら快く引き受けてくれた。
交換条件は俺のダンジョンで手に入る物は何でも無料で譲るというものだ。
無限にいくらでも増やせるから問題無い。
調味料も譲って貰ったし、酒類も譲ってもらった。
前の世界ではお馴染みの料理の数々もだ。
その殆どが、この世界では、どんなに金を出しても手に入らなかったものだ。
態々街を経由して来るのも面倒だからと俺の住居の1部屋とリィーンの家と繋いだら俺も行き来できるようになった。
リィーンの家から外には出られなかったが、ダンジョン以外の場所に移動できたことが嬉しかった。
たいした本は無いけれど、それでも良いなら書庫の本を勝手に見てもいいし、好きに風呂を使ってもいいという許可も貰った。
今度、クリスマス会に招待してくれるというので何かプレゼントを考えないと。
料理のリクエストをしても良いと言うのでベタなクリスマス料理をお願いした。
数百年ぶりのクリスマス料理!
楽しみだなぁー。
クリスマスネタまで書きたいけど間に合うかなぁー
最悪、クリスマス後か年明けになりそう:( ;´꒳`;):




