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幕間 エミール・クライン

お久しぶりです。

ネタが無くなって書く速度が遅くなっており、申し訳ないです。

今後もボチボチという感じでの更新となりますが 、お付き合いいただけると幸いです。

僕の名前はエミール・クライン。

クライン伯爵家の長男だ。

最終学年になった僕は学園の寮にいた。

いつもは試験の為に数日間滞在するだけだったけど、今回は卒業までの1年間使うことになる。

ソファーに座り、ぼんやりとここ数年を振り返る。

2年前、15才の頃に重度の魔力欠乏症になった時は僕は絶望した。

完治するのは難しい病気だからだ。

この病気は元々の魔力量が多いほど症状が重くなりやすい。

身体中の魔力が、ほぼ0になってしまう病気だからだ。

魔力は血と同じようなものだと例えられる。

魔力が少ない者は少し出血したぐらいのものらしく、普通の生活をする分には支障が無い。

僕のように魔力が多い者は大怪我をしたようなもので、魔力が減っていく速度によっては失血によるショック状態のようになり最悪の場合、死に至る。

魔力回復薬を飲めば症状は緩和されるが、僕の場合は体から魔力が減る速度が早いので日に何本も飲まなくてはいけない。

苦い薬を大量に飲む為、お腹はいつも満腹で口の中はずっと苦い。

当然食欲も無い。

段々と体力は無くなっていき筋力も低下した。

発病から1年が経過した頃には一日中ベッドで過ごす日も多くなっていった。

そんな状態で何とか学園の課題をクリアーできているのは皆の協力と記憶力が良かったおかげだ。


ある日、僕は夢を見た。

ずっとずっと昔の夢。

僕がエミールとして生まれるよりもずっと昔の前世と言われる頃の夢。

僕の名前も家族の事も殆ど何も覚えていないけど、日本という国で生きていた。

小さい頃から病気知らずで食べるのが大好きだった。

少しポッチャリ体型だったような気がする。

突然病気になったのは今生と同じく15才。

既に手の施しようが無く、あっという間の死だった。


今生の病気も気をつけないと死に至る。

また若くして死ぬかもしれないと毎日ぼんやりと考えていた。

特に夜は寝ている間に死んでしまうかもしれないと怖かった。

それは昼間に寝てる時もだが日中は侍女か侍従が様子を見に来るので問題無い。

夜も交代で様子を見に来るが、もしも眠り込んで来なかったら……。

瀕死状態になっていても僕が眠っているだけで問題無いと誤認したら……。


そんな時、ヴァルトにある商業ギルドのギルドマスター、ステラが家を訪れた。

商業ギルドには年の離れた従兄弟が働いているので何度か行ったことがあってステラとは顔見知りだ。

今までに無かった商品の値付けの相談にのってほしいと相談に来たのだ。

それに僕に役立つ商品かもしれないと……。

その商品はジャムとクッキー。

鑑定器具による簡易鑑定によると、魔力を回復する効果があり、それを食べることで僕の症状が和らぐかもしれないという話だった。

父上がスプーンに少しのせたジャムを横たわったままの僕の口に入れてくれた。

食べた瞬間、口の中に甘さが広がるのと同時に、すっと体が楽になった。

父上の話では食べた瞬間、青白かった僕の顔に朱がさしたと言っていた。

クッキーは寝たまま食べると噎せるかもしれないと上半身を起こしてもらってから食べた。

サクサクとしていて美味しい。

久しぶりに咀嚼した気がする。

クッキーが喉を通る辺りで更に体が楽になった。

ジャムは紅茶に入れても良いと言われ、久しぶりに紅茶を飲んだ。

甘くて美味しい。

掌を見ると血行が良くなったのか、少し赤味がある。

気力も回復してきた気もする。

僕のそんな姿に父上もステラも安堵の息を吐いて笑った。

後から入ってきた母上や弟妹も喜んでくれた。

その日は久しぶりに美味しくご飯を食べた。

まあ、胃に優しいパンのミルク粥だったけど。


時間毎に魔力の減り具合を観測した結果、魔力回復薬よりも少量であるのに回復が早く、魔力が抜けていく速さが緩やかになるということが分かった。

ジャムとクッキーを詳しく鑑定した結果、スプーンに1匙で中級回復薬と同等の効果があると分かった。

これならば日に何度か間食程度に食べれば回復薬を飲まずとも1日普通に過ごせるようになるという結論に至った。

寝る前に食べておけば、夜も安心して寝れる。

僕にとっては救世主のような食べ物だ。

しかも美味しい。


数日後、父上は作り主が(ヴァルト)を訪れたタイミングで商談に出かけ、追加でジャムとクッキーを手に入れてきてくれた。

付けた値段には吃驚したが、効能を考えれば納得だ。

平民では無く父上の息子で良かった。

そうでなければ、遅かれ早かれ僕は死んでいたと思う。


ジャムとクッキーを作ったのはリィーンという名の5歳の女の子なのだとか。

平民では生活の為に小さい頃から家事を手伝う子が多いので料理ができること自体は驚かないが、リィーンは魔力量も多いようで魔力を満たした畑で作物を育てているらしいと聞いて驚いた。

それに料理の時に無意識に魔力を付与しているらしい。

普通、魔力量の多い幼子は魔力暴走を起こしやすい。

僕も習い始めた頃に暴走させた。

幸い近くに父上や魔法を教えてくれていた先生がいたことで被害は最小限ですんだけど。

習っていても起こりうるというのにリィーンは誰に習うことも無く魔力をコントロールしているらしい。

その上、自分の作る物は高すぎて食べられる人が限られるので、普通のジャムとクッキーを作る事業を始めたらどうかと提案したらしい。

ジャムの為の果実作り、クッキーの為の小麦作り、バターの為の牧場作り、商品を作る為の料理人等、雇用が増えて領地が更に潤いそうだと父上もやる気を見せていた。


父上やステラが知らなかったジャムとクッキーのことは前世の記憶を思い出した僕は勿論知っていた。

それとは別に我が家に代々伝わる初代領主である勇者タケルの日記に書いてあるのを読んだことがある。

日本語で書かれてあるので他の人は読めないから父上も知らない。

僕も教えていない。

前世の記憶があることを打ち明けていないからだ。

いつかは話そうと思うけど、踏ん切りがつかない。

家族は受け入れてくれるとは思うけど、もし、おかしくなったと思われたら怖い。


タケルの日記には日本とこの世界の違いに驚いたことや食べ物が口に合わないことが書かれてあるばかりで、他国や魔王の侵略を防いだ話は出てこない。

領地を下賜されてからは領地の開拓と開発、料理の開拓をしたことが書かれてある。

領地開拓は上手くいったようだが料理開拓は苦戦したようだ。

前世の僕は食べるのが大好きだったけど、料理の作り方など知らなったから、タケルもそうだったに違いない。

それに日本と同じような調味料を探すのも大変だったと思う。

馴染みのある物を見つけて嬉しかったという内容も何度か書かれてある。

知っている料理に近い物ができて嬉しいというのもあった。

ただ、甘味(おかし)に関してはかなり苦戦したようだ。

そもそも当時は砂糖が貴重だった為、試行錯誤するだけの余裕が無かったのかもしれない。

甘味(おかし)の多くは分量や手順を間違えると失敗しやすいと前世で誰かから聞いた気がする。

砂糖の代わりとして養蜂始め、蜂蜜が手に入りやすくした。

森を伐採している時に蜜の木を発見して樹液を利用したが砂糖よりも甘味(おかし)に使うには使い勝手が難しかったようだ。

ケーキを作ろうとして甘食というパンよりは柔らくて甘い、ボソボソとした食べ物が完成した。

クッキーは物凄く硬いものしかできず、携帯用の非常食となった。

クッキーと味は似ているが、とにかく硬い。

水でふやかして食べるのが一般的だが子供や女性は牛乳や果汁でふやかして食べる者もいる。

歯が丈夫な人は、そのまま齧って食べる者もいる。

あくまで携帯食なので普段食べる者は、そう多くはない。

ジャムは出来なかったようだが果物を砂糖で煮て作る甘露煮が完成した。

ただ、態々果実を高価な砂糖で煮て食べる発想は平民には無いし、貴族も旬の物を旬で食べることを良しとしていた。

何より、タケルが命じて品種改良した果実は糖度が高かった為、広く広まることは無かった。

知る人ぞ知る甘味(デザート)という感じだったようだ。


リィーンは記録に無い召喚者の子孫か僕のように日本からの転生者かその子孫である可能性が高いと思う。

そうでなければ味や形、名前が一致するわけが無いと思うからだ。

どんな人物なのか、とても興味があった。


僕の体力と筋力が戻ってきた頃にリィーンと会う機会を得た。

5才と聞いていたが随分と小さい。

ジークさんによると出会った頃は、もっと痩せていて小さかったらしい。

病気をしていたか家庭環境が悪かったのだろう。

ニコニコと笑う顔は悲壮感が無いので、今の暮らしは辛いものではないようだ。

リィーンが土産にと持ってきた肉をのせて巻いたクレープ巻きとオニオンスープは熱々(・・)で美味しかった。

僕にとっては懐かしい味だった。

そう言えば前世の母が時々オニオンスープを作ってくれたような気がする。


リィーンは高性能の魔法鞄(マジックバック)を持っているらしく、聞いてみれば冒険者をしていた祖父の遺品なのだとか。

両親も亡くなり今は一人暮らしだという。

孤児院に入ることは考えなかったのかと聞いたら、なかなかしっかりした返事が返ってきた。

これで5才とは信じられない。

やはり僕と同じく前世の記憶がある可能性が高そうだ。

その後も色々話していた物は前世では普通に売っている物だった。

タケルとは違って器用に何でも作れるタイプのようだ。

商品の販売はステラに任せておけば心配無いだろう。

僕や父上も後ろ盾になるつもりだ。

世の中には良い人間ばかりでは無い。

前世の記憶があっても(仮)大人びていてもリィーンは小さな子供だ。

守る大人が必要だ。


そんな経緯を経て、僕は遅い学園生活をスタートさせた。

リィーンのジャムとクッキーも忘れずに持ってきたし、おやつ用の普通のクッキーも持ってきた。

来月には(ヴァルト)に店がオープン予定だと聞いている。

次の長期休暇に戻ったら、今まで以上に活気のある状態になっているに違いない。

リィーンの新商品が出ている可能性も高い。

今から帰るのが楽しみだ。



期間が長いと細かい設定が抜け落ちることが多々あり、矛盾があるかもしれなせん。

寛大な心で読んでいただけたら思います。


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