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髪を切る場所は、意外な場所でした。

今回は短めです。

「街の人はどこで髪を切るの?」

と、帰りにエレナさんに聞いてみたら病院だと言われた。

病院?

正確には病院で働く新米の人が病院内にある理髪店で髪を切るのだそうだ。

医者は、時には手術等で人体を切る事があるので、体の一部を切る事に慣れるためというのが表向きの理由。

本当のところは、新米の時は給料が少ないので小遣い稼ぎができる場所として作られたそうだ。

もちろん、最低限のカットが出来るようになった人が切る。

中には気分転換になるからと、ベテランになってからも理髪店で仕事をする人もいるのだとか。

前世のようにパーマや髪染め等は無くて、カットかバリカンを使ったものしか無いようだ。


商業ギルドを出てからマップで確認すると、病院の説明のところに【理髪店併設】と書いてあった。

体力は無限大だし、物理防御も魔法防御もあるから病院に行くことは無いと思っていたけど、髪を切るために行くことになるとは思わなかった。


病院は貴族用と庶民用が1つずつあるようだ。

こんなに大きな街なのに大丈夫なのかな?

流行病や伝染病でもない限りは大丈夫なのかな?

大きな事故があったら?

まあ、私が心配しても仕方がないか。

病気は無理でも回復ポーションとか回復魔法があれば、怪我には対応できるもの。

医師の数は10人、見習いの数が5人いるようだ。

十分なのかどうかは分からないけど、きっと優秀な人が多いのだろう。


病院の近くに転移した。

中に入って右側に理髪店はあった。

中を覗くと白衣で髪の長い若い男性がいた。

若いけど髪は白髪で瞳が赤い。

肌も日に焼けてなくて色白だ。

アルビノなのかな?

前世の理髪店の人も白衣だったから違和感は無いけど、髪も白いから全身白くなっている。

それで瞳が赤いからウサギさんみたい。

新米の医師なのだから20代前後くらい?

この世界の学校事情が分からないから、何才ぐらいが新人なのだろう?

当然、医師の資格試験があるだろうから、中々受からなかった人は少し歳が上の人もいるのだろうな。

そんな風に外から中を覗いていたら手招きされた。


おずおずと中に入ると、ニッコリと笑顔で迎えてくれた。

「いらっしゃい」

そう言った後、ウインクした。

うーん、美人さんだけど、男性だね。

背は高いけど、線が細い。

それでも男性に見えるって不思議。

骨格のせいかな?

それとも胸が無いから?

顔立ちかな?

そんなことをボンヤリ考えていたら、怖がって固まっていると思ったのか、頭を撫でてくれた。


「あ、ごめんなさい。ちょっと考え事をしていました」

笑って誤魔化すと、前髪と後ろの髪を揃えて欲しいとお願いした。

シュシュとパッチンピンを外してから椅子を見る。

前世の床屋と同じような椅子だ。

足元のペダルで高さが変えられるようになっているようだ。

今は一番下の高さになっているが、5才児が1人で座るのは難しそうだ。

男性が慣れた手つきで抱き上げて座らせてくれた。

目の前には大きめの鏡が嵌められていた。

おお!今の私って、こんな感じか。

今は前髪で目が隠れていて野暮ったい。

「前髪はどれくらい切る?」

切った髪が服に付かないように布を掛けてくれた。

「目のすぐ上辺りで」

後ろも揃えるだけなので、短時間で終わった。


おお!可愛いかも!

切り揃えたことで現れた瞳の色は琥珀だった。

目が大きい。

色白で痩せすぎ感はあるけど、かなりの美幼女だ。

銀の髪と相まって、何だかちょっと神秘的?

自画自賛になるけれど、自分で作った服もよく似合っている。


最後にサービスで髪を結んでくれるというので編み込みができるか聞いてみた。

たまには気分を変えて髪型を変えたいけれど、手が小さい為に編み込みやシニョン等、凝った髪型にするのが難しい。

「編み込み?」

首を傾げられた。

「三つ編みは知ってますか?」

「三つ編みは知っているわよ。こういうのよね?」

と、自分の髪を三つ編みにして見せてくれた。

「そうです。それを少し複雑にしたものなのですけど」

「教えてくれたらやってみるわ。ちょっと待っていてね」


しばらくすると同じく白衣を着た黒髪の女性と一緒に戻ってきた。

黒髪の人もいるのね。

前世が黒髪だったので親近感が沸く。

瞳の色も黒で美人だ。

この世界の人は綺麗な人が多いのね。

「同僚の女性に手伝ってもらおうと思ってね」

男性は女性を私の隣の席に無理矢理座らせ、奥にあった脚立をその傍らに置いた。

「ちょっと、ラルフ!」

「まあまあ、アンジェ。で、どうするの?」

ラルフさんは脚立の上に私を立たせた。

私は落ちないようにラルフさんの肩に掴まった。

「えっと、この部分をまず一掴みして、三つに分けて…」

ラルフさんは私の説明した通りに編み込んでいく。

初めてなのに綺麗に編めている。

器用なのね。

アンジェさんは後ろが見えないから不安そう。

「頭の下まできたら、そのまま結ぶか、三つ編みにしてから結ぶの」

ラルフさんは三つ編みにして紐で結んだ。

「完成よ。どう?」

ラルフさんは手持ちの鏡で後ろを映し、前の鏡で見えるようにした。

「可愛いかも」

アンジェさんは嬉しそうに笑った。

「左右を分けてやっても良いし、一部だけにしたければ、片編み込みをすれば良いですよ」

「片編み込み?」

「片方だけ髪を足して編み込んでいくの」

「なるほど。お嬢さんはこれと同じで良いのかしら?」

ラルフさんって、声のトーンは普通に男性なのに、言葉だけオネエぽいのね。

何故そんな不思議な話し方なのかしら?

「私は頭の下まで編んだらシュシュで結んで下さい」

さっきまで着けていた青いシュシュを渡した。

椅子に戻してもらって髪を編んでもらう。

今度はアンジェさんが傍に立って、その様子を見ていた。


「これ、可愛いね」

ラルフさんはシュシュを着けながら言った。

「編み込みをしてくれたお礼に1つあげる」

腕に付けていた緑色のシュシュを渡した。

「髪が邪魔な時につけて」

男の人にシュシュは可笑しいかもしれないけど、今まで無かった物みたいだし、髪が長いならあっても良いよね。

ラルフさんはさっそく着けてくれた。

単色で緑のせいか男性でも違和感は無いかな。

でも、瞳が赤いから、赤色でも似合いそう。

「作り方は商業ギルドで買えるので、良かったら宣伝してください」

「しっかりしているね」

ラルフさんは笑いながら椅子から降ろしてくれた。

アンジェさんがラルフさんの着けているシュシュを羨ましそうに見ていたけど、気が付かない振りをした。

だって、もう手持ちが無いもの。

次に髪を切りに来るときに、覚えていれば作って持って来ますと心の中で思った。

その時は、ついでにラルフさんの分も赤でカッコイイ感じなのを作ろうかな。

古代の欧州では医者と理髪師を兼業した理髪外科医という職業があったと読んだことがあったので、まだ薄給の新米医者の副収入先として理髪店で髪を切る仕事があるという設定にしてみました。

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― 新着の感想 ―
[一言] そーいや、理容店のサインポールは血液と何かの循環を現しているとか聞いたことがあるなあw
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