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商業ギルドで商談です。

更新が遅くなりました。

細かいことを考えて、ウンウン言いながら書き直していたら、10日もすぎてました。

ジャムとクッキーの販売方法や値段を考えてくれるって言っていたけど、どうなったのかな?

この間試食してもらった時の様子を思い出す。

美味しいとは言ってもらえたけど、珍しくもない商材だと思うのよね。

材料費は無料だし、錬成を使えば手間も時間もほぼかからない。

だから、売れればそれだけで利益になる。

確か、安いジャムだと小瓶で100円くらいだったかな?

高いのだと500円ぐらいする物もあるらしい。

私は食べた事は無いけど、妹が食べてみたいって母に強請っていたのを聞いたことがある。

強請っている時の妹の声って大きいのよね。

近所迷惑になるからと母が焦るぐらい大きくて、離れた私の部屋まで聞こえてきたのよね。

私がジャムを入れるのに使っている瓶は大人の女性の掌の半分ぐらいで高さが6cm前後。

前世でもよく見かけた八角形の物。

容量は180㎖。

1個300円~500円ぐらいかしら?

前世の、昔の時代のように砂糖が貴重品なのだとしたら、もう少し高いかもしれないわね。

1日に3個くらい売れたら何とかなるかな?

家賃は要らないし、服もたくさん要らないし、一番かかるのは食費だけよね。

まとめ買いをするけど、食べる量は少ないから、すぐには無くならないし、作物と卵があれば何とでもなる。

まあ、あまり期待せずにいましょう。


商業ギルドの前には立派な馬車が停まっていた。

御者が退屈そうな顔で溜息をついていた。

主人が長い時間戻って来ないのかな?

そんなことを考えつつ扉を開けると、ジークさんとエレナさんの視線が集まる。

ステラさんは不在のようだ。

「ようこそ、商業ギルドへ」

どこか疲れた顔でジークさんが挨拶してくれた。

エレナさんも何だか疲れているみたい。

「こんにちは。ステラさんは留守ですか?」

「いや、上の部屋で客の相手をしているが、リィーンにも関係のある客だ」

「私に?」

この街に親しい知り合いはいないし、私のジャムやクッキーを置いてくれる店の人かな?

「詳しいことはステラさんに聞いてくれ。部屋に案内する」

ジークさんは私を抱き上げると、カウンターの中に入り、奥にある階段を上がって突き当たりの部屋の扉をノックした。

「ギルマス、リィーンが来ました」

ギルマス?

ラノベで時々見る単語だな。

確か、ギルドマスターの略だったわよね。

ステラさんはギルドマスターなのね。

少しの間の後、入室を許可され、中に入った。

部屋の中には仕事用の重厚感のある机と、その前に黒一色の応接セットがあった。

壁は白で小さな窓が1つ。

良く言えばシンプル、悪く言えば味気ない部屋だ。

ソファーにはステラさんと、その対面にジークさんより年上っぽい男性が座っていた。

30代後半か40代前半か…。

ジークさんは一礼してから私をステラさんの隣に座らせた。

不安そうな顔をしていたのか、ジークさんが私の頭を優しく撫でてから部屋を出て行った。

しばらくして、ワゴンと一緒に入ってきたエレナさんが3人分の紅茶を入れて部屋を出た。

ステラさんと会うのは、まだ2回目だし、知らない男性がいるので落ち着かない。

今のこの空間が前世で働いていた会社の応接室を思い起こして少し気分が沈む。


「リィーンちゃん、こちらの御方は領主様だよ」

ステラさんの言葉に顔を上げ、男性を見る。

濃い茶色の髪と赤い瞳をしていた。

整った顔立ちで落ち着いた感じだ。

服装は派手では無いが上質そうだ。

ギルドの前に停まっていた馬車は、この人の物のようだ。

「領主様?」

領主様が私に何の用なのか?

首を傾げてステラさんを見上げた。

「私はジェラルド・クライン。ステラが言ったように領主をしている。爵位は伯爵だ」

「私はリィーンです。えっと、私に何か御用ですか?」

上司や会社を訪問された取引先の人と話すことはあったけど、地位のある人と話すのは初めてで、言葉遣いが合っているのか不安になる。

「実は、君の作るジャムのことで聞きたいことがある」

「はい」

美味しくないから苦情を言いに来たとか?

あ、でも、まだ販売していないのだから、それは無いのかな?

それともこの領地で新規で商売するには領主の許可が必要とか?

「君の作るジャムを鑑定させたところ、魔力の含有量が多いことが分かった」

「???」

魔力が多い食品は売っては駄目だってこと?

「その上、食べた人間の魔力が少し回復することが分かった」

「つまり?」

「その原因を知りたい」

原因は分かりきっている。

私の魔力を含んだ土で育てたことと、錬成で作っているからだろう。

錬成のことを言うと話が大きくなる気がしたので、魔力の含んだ土で育てたことと、美味しくなるように心を込めて作っていると答えた。

「魔力の含んだ土で育てるとは興味深いな。それに、作る時に君の魔力が含まれた可能性もあるわけか。錬金術で作る薬に似ているな。薬だと苦いが、食べ物だと美味く摂取できる」

後半は、ほぼ呟きだ。

「実は、私の息子が魔力欠乏症という病気でね」

唐突なカミングアウト。

ここから話が長かった。


要約するとこんな感じだ。

まずは領主の息子が魔力欠乏症であること。

魔力欠乏症とは魔力を使っていなくても常に消費され、魔力が枯渇状態になる病気であること。

症状は倦怠感、眩暈、吐き気、頭痛、食欲減退、無気力になること。

元の魔力が多いほど、深刻な状態になること。

魔力回復薬を飲むことで一時的に症状が緩和すること。


回復薬は質によって一度に飲む量が変わるそうだ。

種類はどの回復薬も下級、中級、上級の3種類に別れる。

その中で品質が普通、良品質、高品質に別れるので厳密には9種類になる。

摂取量は普通で500㎖、良品質で250㎖、高品質で100㎖。

品質の良い物ほど量が少なくてすむけれど、高くて苦いらしい。

領主様の息子さんの症状は重く、6時間毎に中級の回復薬を飲まなくては日常生活もままならないそうだ。

1日に4回、苦い薬を飲まなくてはいけない為、ますます食欲が減退して、すっかり痩せてしまったとのこと。

そこで私のジャムらしい。


なんと、この世界にはジャムが無いのだとか。

それどころか砂糖を使った甘味類が、ほぼ無いそうだ。

甘味と言えば、熟した果物かドライフルーツか蜂蜜。

それと、小麦粉に卵とバターと蜂蜜(若しくは砂糖)に少量の牛乳を混ぜて焼いた甘食という、この世界のパンよりは柔らかい食べ物だけだそうだ。

何でも、砂糖は50年ぐらい前までは、かなり高級品で、ふんだんに使うという発想が無かったそうだ。

今は比較的、手に入れやすい値段だそうだが、使い方が分からない人が多いらしい。

味見してもらった時は、そんな話は聞かなかった。

確かに、紅茶を入れて試すのに全種類を試すほど食い付きが良かったけど、まさかジャムが無いなんて思わないよね。


ステラさんはジャムやクッキーが、どれくらいの値段で、どこで扱うのが良いのかの判断を領主様に相談しに行ったそうだ。

領主様はステラさんから食べ方を聞いて、家族で味見をしたのだとか。


「君のジャムやクッキーを食べた息子は顔色が良くなり、症状が緩和したのだ」

その理由が何であるのかを調べるために、私のジャムを鑑定してみたところ、中級の魔力回復薬と同程度の効能があることが分かったらしい。

その上、疲労回復効果と果物を使っている為か、美容効果もあったそうだ。

それも、ティースプーン1杯分ぐらいで症状が安定したそうだ。

クッキーは3枚程度(美容効果は無し)だそうだ。

過剰に食べても害は無いそう。

まあ、食べ過ぎれば太るという弊害はあるだろうけどね。

だって、砂糖がたっぷりだもの。

でも、そんな効果があるなんて我ながら凄いね。

なんて呑気に思っていたら、領主様が身を乗り出して、私の手をガッシッと掴んだ。

ちょっと痛いです。


「君のジャムは物凄い価値がある」

「えっと」

私は困ってステラさんを見上げた。

もう、何回目かな?

そろそろ首が痛い。

「中級の魔力回復薬は高品質の物で銀貨3枚なの。だから値段もそれと同等か、それ以上での販売になると思うわ」

えっと、瓶の容量が180㎖。

ティースプーンだと36杯程度。

ティースプーン1杯が銀貨3枚だから金貨1枚と銀貨8枚。

10万8千円。

うわー、高い。

「いくらなんでも、そんなに高いジャムを買う人はいないと思うのですけど」

気軽に買って食べられる値段じゃない。

ティースプーン1杯で3千円って……。

それだけあれば、物凄く贅沢な(私比)食事ができる。


高品質なのに安くすると皆がジャムを買って、本来の魔力回復薬が売れなくなる可能性があるので高い方が良いのだと言う。

それに苦くないのに回復できるという点で、高くても人気が出ることは確実だという。

いやいや、そんなわけないでしょう!

1瓶、10万円以上だよ。

それに人気が出ても、多くは納品しないよ。

一般的に考えて5才児の作れる量なんて、たかが知れてるもの。

まあ、やろうと思えばできないこともないでしょうけど、生産に追われるのは嫌だし、今世はスローライフをすると決めているのだから。


それにしても本当に売れるの?

高くて二の足を踏むとか、そんなに量の要らない人もいるでしょう?


「瓶を小さくして買いやすい値段にしたらいけるのかな?」

私の独り言を聞いてステラさんが、良いアイディアだと言ってくれ、きっと物凄く売れるよと笑った。

あれ?

自分の首を絞めた?


小瓶は容量が70㎖。

ティースプーンで14杯程度だから小金貨4枚と銀貨2枚の4万2千円。

極小瓶は容量が30㎖。

ティースプーンで6杯程度だから小金貨1枚と銀貨8枚の1万8千円。

瓶の大きさを変えてみても、1回が3千円という事実は変わらない。

やっぱり高いよ!


「それぐらいの大きさなら回復薬を持ち歩くよりも軽いし、値段も出せない金額じゃないから冒険者にも売れるだろう」

マジですか!

恐らく、買うのは冒険者ランクがC以上。

ランクCなら、ちょっと頑張れば元が取れる。

それ以上のランクなら、強い魔物を倒せるので、すぐに元が取れるらしい。

Cランク以下でも御守りがわりに持つ人間もいるかもしれないと。

ティースプーン1杯で中級でも、それより少量を食べれば下級回復薬の代わりになるからと。

回復薬だと、開封すると、どんどん効力が減っていくのだそうだけど、ジャムやクッキーだと開封しても効力が減ることは無かったそうだ。

時間ごとに鑑定して調べたそうだ。


「とりあえず、試しにギルドの窓口のみで販売して様子を見てみるのはどうですか?」

ステラさんが、そう提案した。

信用のおける店を、じっくりと吟味しないと指定の値段以上で販売しようとする可能性があるとのこと。

それに生産者が5才の私だと知られたら、良からぬことを考える人が、何かしてくる可能性があるので情報は最小限にしておくべきとのこと。

そこまでしても、何としても生産者を知ろうとする人間もいるので、ギルドマスターと領主の公認商品とすることになった。

2人が後ろ盾と示すことで抑止力に繋がるのだとか。

まあ、それでも探ろうとする馬鹿は出るだろうということだった。

困ったことがあったら、すぐに相談して欲しいと言われた。

とりあえず返事はしたけど、さっさと転移してしまえば良いし、念の為に悪意のある人に触れられないように自分の周りに結界を張っておこう。


「領主様が事業としてジャム作りをしてみてはどうですか?」

効果の高いジャムだと手軽には食べられない。

美味しい食べ物と考えれば、手頃な値段でたっぷり食べられる方が嬉しいに決まっている。

いや、そもそも美味しい食べ物でしか無かったはずなのよね。

それに、もっと回復率の低いジャムを作れば、野宿やダンジョン内で手軽に食べられる携帯食にもなるから冒険者に人気がでるはず。

だって、この世界のパンは硬くて味気ないもの。

成功すれば、かなりの収入になるはずだ。

その上、畑の人手やジャムを作る人手、仮に工場を作るまでになるならば、建物を作る人手、その工場を運営する人手等の雇用が生まれる。

私?

私はジャムの作り方を少し高く売れば良いだけだし、私の作ったジャムも領主様の領地で作られた、特別製のジャムだと誤魔化せば良い。

私は面倒事を領主様に丸投げしてスローライフを楽しむの。

前世みたいに大人の言いなりで自分を殺して生きていきたくはないもの。

それに、領主様の面倒事は増えるけど、領地の収入が増えるから、より良い領地にできる。

WIN WINだと思うのだけど。


とりあえず、販売するのは極小瓶に決まったので、今持っているジャムを極小瓶に移さないといけないな。

無限収納(インベントリ)内で移し変えられないかな?

リストのジャムを選択してみると『ジャムの瓶をどうされますか?』と出た。

無限収納(インベントリ)から出す。

別の器に移し替える。

と、選択肢が出た。

以前はこんな表示は出なかったのに。

いつの間にかカスタマイズされている。

常に私の使いやすいように変更してくれている気がする。

嬉しいけど、女神様って、かなり過保護だよね。

他の神様に怒られないと良いけれど。


便利な機能は使わないと損ということで無限収納(インベントリ)の中で極小瓶に移し替え、クッキーは小さい袋に詰め替えた。

ステラさんには販売候補のお店に試食用に配ろうと思って、予め極小瓶に入れた物を持っていたと誤魔化した。


販売する瓶の大きさは極小だけで良いのかと確認すると、今後希望する人がいれば別の大きさも販売することになった。


種類が多いと置く場所に困るので、今回は苺と林檎とミルクのジャムとオレンジのマーマレードの4種類とクッキーを置くことになった。

極小瓶が各30、クッキーの小袋が30。

クッキーの小袋は6枚入りで銀貨6枚、6千円。

1枚千円かぁ。

ここの商業ギルドだけじゃなくて、大きい方のギルドと、ダンジョンのある街の商業ギルドにも置くそうだ。

ダンジョンまであるなんて、大きい領地なのね。


領主様も欲しいということで普通の大きさの瓶を各3個ずつと、今回は商品としなかったけど、試食で気に入ったということで桃のジャムとレモンのマーマレードを各1個、それにクッキーの小袋を5個お買い上げ。

たくさん買ってもらったので、おまけとしてスイートポテトを6個あげた。

ステラさんが羨ましそうにしていたので領主様への仲介料と後ろ盾になってもらったので、御礼として同数あげた。

料金はギルドカードに入金してもらった。

納品した商品の売上もカードに入れてもらえるようにお願いした。

次の買い物はキャッシュレスで買ってみよう。


ジャムの作り方は今の季節に多く収穫できる林檎を使ったものだけ渡した。

レシピの値段は後日相談となった。

私以外でも作れるのかを試して、上手くいくようであればレシピの値段を決め、事業として発展させるかを考えるそうだ。


「この後はどうする予定だ?」

領主様が聞くので残りの買い物を済ませて帰る予定だと答えた。

そしたら今度、領主様の家に招待してくれるという。

うーん。

正直面倒臭い。

それに、領主様の屋敷はこの街から馬車で30分ほどの場所にあると聞いて、更にその気持ちが強くなる。

お気持ちだけでと、やんわり断った。


ステラさんと領主様は、まだ話があるということで、私1人で下に降りた。

5歳児には1段が高い。

途中でジークさんが気付いてくれて、抱き上げてくれた。

「緊張しなかったか?」

「少し。…...そうだ、こういう髪飾りの作り方って売れる?」

私は腕に付けているシュシュと髪につけているパッチンピンを外して見せた。

「可愛いわね」

エレナさんが興味を持って手に取ってくれた。

「それに着ているものも可愛いわね。とても似合っているわ」

褒められて照れる。

靴と鞄も褒めて貰えた。


「端切れで作れるから材料費はそんなにかからないよ」

「シュシュは銀貨1枚、ピンの方は小銀貨3枚くらいが妥当かしら?」

エレナさんがジークさんに同意を求める。

「とりあえずはそれに決めておいて、後でステラさんに確認するか」

「今、作り方書ける?」

そう言われたので、この間試食の時に利用したテーブル席で書くことにした。

作り方の手順と絵も入れて分かりやすくした。

上手く書けていると褒められた。

誰かに褒められるって嬉しいな。


見本に腕に着けている2色の色で作ったシュシュと予備のパッチンピンを渡した。

ジャム瓶のサイズや容量が、よく分からなかったので思わず100均で自分のイメージしていたサイズの瓶を買ってしまいました。


次は短めになる予定なので早めに投稿できるように頑張ります。

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