商業ギルドに行こう!
牧場や養鶏場は街の外になるので、あとは商業ギルドの登録だけかな?
他の店は次回にしよう。
体力の数値は無限大なので疲れはしないが一日の時間は無限じゃないからね。
もう、お昼を過ぎたから、さっさと登録して牧場に行かないと、色々と見たり聞いたりする時間が無くなってしまうかもしれない。
マップを確認すると2軒ある。
街の正門を抜けたすぐと商業区の奥まった場所にある。
貴族向けと庶民向けに別れているのかと思ったけど説明文を見る限り特には分けてはいないようだ。
それに街の正門側にある方が商人にとっては何かと便利だと思う。
その証拠に正門側は大きくて綺麗な建物で街に入った時に見てはいたけど、てっきり美術館か博物館だと思っていた。
5階建てだし。
従業員は全部で50人程いるようだ。
商業区奥にある方は建物が小さい。
マップで見る限り正門側の5分の1くらい?で二階建て。
従業員は3人。
正門側だけでも十分そうだけど、態々小規模のギルドを作っているのだから何かしら利便性があるのだろう。
大勢の視線が怖いので小さい方のギルドに行くことにした。
もしかして、私みたいな人用だったりして。
小さな町の郵便局という佇まいだった。
中に入ると3人の目が一斉に私を見た。
窓口は3つ。
向かって右に60代くらいの女性。
真ん中に20代ぐらいの女性。
向かって左に30代くらいの男性がいた。
「こんにちは。何か用かい?」
60代ぐらいの女性が話しかけてきた。
「こんにちは。ギルド登録をしに来たの」
「登録だね。年は幾つだね?」
微笑みながら登録用紙のようなものをカウンターの上に置いた。
「5才」
と答えると体が、ふわりと浮いた。
振り返ると左端に座っていた男性が私を抱き上げていた。カウンターの上にある紙を見やすくしてくれたようだ。
「字は書けるのか?」
落ち着いた低い声だ。
「書けるよ」
答えてカウンターの上の紙を見た。
一番上にあるのは名前の欄。
名前か。
人と会うことも無かったから付けるのをすっかり忘れていた。
うーん、リィーンで良いかな?
鈴の音が大好きだし。
家の中で振って聞いていると煩いと怒られるから通学の時に態と鳴るように歩いて、その音に耳を傾けていたなと思い出す。
何かのオマケで貰ったような気がするが、遠い昔過ぎて覚えていない。
ただ、その音色に慰められていたことは覚えている。
貸してもらったペンで名前を記入する。
「リィーンか。可愛い名だな」
「お兄さん達の名前は何て言うの?」
「俺の名前はジーク。目の前にいるのがステラさんで左に座っているのがエレナだ」
「ステラさんとジークさんとエレナさん」
年齢の順に聞いたばかりの名前を呟いた。
名前の次は年齢と性別。
「商業形態?」
「どういう商売の仕方をするのかということだな。例えば旅をしながら、あちこちで商品を買付、卸すのか、屋台で何かを売るのか店舗を作って何か売るのか。あるいは依頼されて何かを買付けに行くかとかだな」
基本的に引きこもりだから屋台も店舗もやるつもりは無いので何かを仕入れて卸すという形態かな?
商業形態は後からでも変更出来るそうなので、とりあえずはそれにすることにした。
登録するだけなら年会費は必要ないそうだ。
実際に取引をし始めると年会費が発生する。
仕入れて卸すのと屋台で販売の場合は年会費は小金貨一枚。
店舗を構えると金貨一枚。
それに加えて利益の二割をギルドに納るそうだ。
高いと思うか安いと思うかは様々であるが、商売の相談にのってくれたり、人を雇いたい時に紹介してもらえたりと色々とサポートをしてくれるのだとか。
仕事を探している人は審査を受けた上、ギルドで求人登録するそうだ。
もちろん、仕事を探している人は登録料を、人を探している人は仲介料は取られるそうだけど。
「どんな物が売れますか?」
「違法商品でなければ何でもだね」
ステラさんが微笑んで答えてくれた。
「野菜とか果物とか薬草等を売るとしたら?」
「実際の商品を販売する人に見せて商談が成立すれば売れるよ」
「料理は?」
「屋台か店舗を構えないと難しいな」
ジークさんが答えてくれた。
そりゃあ、そうか。
「料理の作り方とかは?」
「そういうのはギルドで審査して値段を決めてギルドの窓口で購入してもらうのよ」
エレナさんが答えてくれた。
今は誰もいないせいか3人で接客してくれる。
「そうなんですね。例えば、こういう加工品も料理と同じで屋台か店舗を構え無いといけませんか?」
私は試しにクッキーとジャム各種を鞄から出したふりをして無限収納から出した。
ついでに味見をしてもらって売れるような質なのかを判断をしてもらおうかと考えた。
クッキーは【卵の要らないサックサククッキー】という作り方を見つけて作った物だ。
あとは、畑で採れた果物で作ったジャムと牛乳と生クリームで作ったミルクジャムだ。
これはキャラメルを作ろうとして、包む紙が無いと悩みながら検索していたら見つけたものだ。
ミルクジャムを更に煮詰めればキャラメルになるらしい。
3人は興味津々で味見してくれた。
「「美味しい」」
「美味い」
と絶賛してくれた。
私が子供だからお世辞も入っているかもしれないけどね。
「ジャムはクッキーに付けても美味しいし、紅茶に入れても美味しいですよ」
そう言うとエレナさんが私の分も含めて紅茶を入れてきてくれた。
場所も端にあるテーブル席に移った。
時間のかかる相談等はこっちでするそうだ。
私の背が低いからだろうけど、何故だか当然のようにジークさんの膝の上に座らされた。
「好みで入れてください」
私はミルクジャムをスプーンに少し掬って入れた。
私は一杯で十分だけど、3人は全部の味を試していた。
お腹がタプタプにならないと良いけど。
「見本に幾つか欲しいのだけど、あるかい?」
ステラさんに言われて5個ずつ出した。
「値段を考えたり卸先を考えたりしたいから、暫く時間を貰って良いかい?」
「はい」
試しに出しただけが、話がどんどん進む。
「販売先が決まって卸すとして数は確保できるかい?」
「クッキーとミルクジャムは大丈夫ですけど、果物のジャムは収穫の兼ね合いがあるので、たくさんは無理です」
普通は季節に関係なく果物を大量に手に入れることはできないもの。
「それに私1人で作っているので」
そう言うと3人はビックリした顔をした。
まさか5才児が作ったなどと普通は思わないか。
中身が20代だから失念していた。
「じゃ、厳選した店かギルドの窓口で限定ものとして販売するかだね。とりあえず1週間ほど時間をもらうね」
「はい」
5才児の作った物でも商品と認めてもらえるんだとビックリしつつ返事をした。
この結果次第でのんびり今後を考えれば良いか。
「あの、それで登録は…」
何か思っていた以上の食い付きで、私の登録をすっかり忘れられている気がする。
「ああ、ごめんよ」
3人は慌てて動き始めた。
元の場所に戻って、ステラさんはパソコンのような機械?魔道具?で必要事項を入力し、エレナさんは奥から冊子を持ってきてくれた。
ジークさんは私を抱きあげてくれてる。
今更ながら触れ合って誰かの温もりを感じるのは何時ぶりだろうかと、ふと思う。
「これで登録は終わり」
登録が終わるとキャッシュカード大のプレートが出てきた。
さっき私が書いたことが書かれてある。
これがギルドカードか。
「あとは血か魔力を込めるだけだよ」
「血と魔力での登録って何が違うの?」
痛いのは嫌だなと思いながら質問する。
「基本は同じだな。魔力のある者は魔力で、無い者は血でという感じだな。魔力量が多くて魔力操作が苦手な者には血で登録してもらっている。魔力暴走なんてされたら迷惑だからな」
なるほど。
私は魔力は多いけど魔力操作は問題ない。
痛いのは嫌なので魔力でお願いして、言われたようにカードに微弱な魔力を流した。
「このカードは首から下げるか、腕に付けると良いよ」
「腕?」
私が首を傾げるとステラさんに腕を出すように言われて差し出す。
カードに腕が触れると形が変化して時計のような形になった。
私の腕にピッタリだ。
自動調節機能がついているのだそう。
文字盤の部分にあたる場所は黒い平たい土台になっていた。
「ギルドではお金を預かる業務をしている。その金額とギルド証が連動していて専用の魔道具に翳すと支払いができる」
つまり、キャシュレス決済ができるのね。
使用すると使った金額が土台部分に表示されるのだとか。
使った履歴も見られるらしい。
ギルドカードは、どのギルドの物でも同じ機能があるそうだ。
これは途中でギルドを変更する者がいるという理由もあるが、中には複数のギルドに登録する者がいるかららしい。
それ故、別のギルドに変更しても内容を書換えるだけで良いし、複数の登録をする場合は追加で情報を入力するだけだ。
支払い時にギルドを選択すれば、そこからお金が支払われる。
ギルドに加入していない人はお金を持ち歩くか市販品の時計型のお財布魔道具を買うらしい。
物凄く高いらしけど。
登録した人にしか使えないのでスリに遭う心配が無い。
紛失したり、壊したりすると再発行に金貨1枚を払わないといけないらしい。
その時にお金が無い場合は支払い機能の無い、カード型の証明証を銀貨1枚で再発行してくれるそうだ。
初回分は今後稼いでもらうことを期待して無料となっている。
専門の業者に依頼すれば好きにカスタマイズしてくれるのだとか。
ギルドの詳しい説明が書いてある冊子を受取ると一週間後に来る約束をしてギルドを出た。
次回はお買物の続きです。




