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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、どんな者にでも手を差し伸べる優しいものだ
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〈30層の守護者〉マイン ウェイパー

「……やる気になりましたとも」


 剣を抜く。


「……っふふっ!いいねぇその目!覚悟がある!『勇ましい者』の目だ!『危険を冒してでも』戦う者の目だよ!」


 俺の目に、随分と買い被ってもらってるね。


「君が、黒髪赤目の『人間』であること、あと、彼女が言うには精霊が見えるらしいね

うーん!特別だっ!素晴らしい!世界に祝福されているね!」


 俺の事を随分と知っているな。


「黒髪赤目のどこが祝福なんですかぁ!?」


 剣を構え、飛び出す。


「いいねぇ!《心象詠唱》発動……『湖に浮かぶ山』『かのもの達の父』『飲み込む体躯と全ての根源』〈湖の再襲来(リコール・スイレン)〉!」


 そう告げると、この馬鹿みたいに広いフィールドに水が生まれた。


「わぷっ!?ぁあ!?」


 溺れるっ!?水!?


「ミョォォォォォン!」


 頭が割れそうなぐらいの大声が水の中にいるのに嫌という程響く。


 その大声は衝撃波のように水を弾きながら鼓膜に届く。


「っぷはっ!……溺れかけた……」


 だが、ここから反……撃……


「嘘……だろ……?……『大睡蓮魚』……?」


「……へぇ、やはりこの子もご存知ですか!

さぁ!今ばっかりはこの子は私の呼んだ召喚獣!行きますよ!」


「ミョォォ!」


「……はははっ!ふははははっ!なるほどなァ!!わかってきましたよ!貴方の戦い方がァ!」


「!……ふふっ、その荒々しい口調、素敵ですねぇ!」


 仮面とマントは邪魔だ。脱ぎ捨て、アイテムボックスには……容量はあと1か……マントだけ入れよう。


 仮面は顔の横につけて、前が見えるようにしておこう。


「……さぁ、始めますか……」


 左に小さい小島が見える。

その島の周辺は比較的浅いはず!


「それも知ってますか」


 泳いで行くと、俺の意図に気づいたみたいだ。


「やっちゃって、大睡蓮魚ちゃん」


「ミョオ!」


 応じる声と共に水の刃が形成された。


 あぁ、見たことがある、クラインが顔の付近に近づいた時に咄嗟に放ったあの一撃だ。


「……あぁ、避けられるな……」


 うん、まだまだ見える範囲だ。


「ヒュウ、そのステータスで器用に動きますねぇ」


 嬉しそうに口笛を吹かせながら次の指示をするように手を振った。


「……あっぶなっ!?」


 下から飛んでくる刃を避けていると、のしかかってきた。


 ゴロリゴロリとそのフィジカルを存分に使いこなしたいい一撃だ。


 横をギリギリすり抜けて言ったその瞬間、確かに違和感を感じた。


「……?」


「……魔力が抜けてる?」


「……え?」


 シガネには俺の違和感の正体がわかったみたいだ。


「魔力が抜けてるよ!カル!存在がゆっくりと希薄になってる!」


 シガネが弱点を見つけたとばかりに俺に知らせる。


「……あぁ、避け続ければいいんだな」


「多分ね、頑張れカル」


 いつもは素っ気ないシガネから出た言葉とは思えないほど簡素だか優しい言葉だ。


「……私のこの魔法に気付きましたか……うふふっ、凄い制度の魔力感知能力です

それに免じてこの子は終いとします」


 ヒュンと消えた。水も消えた。


「うわぁ!?」


 水がなくなってそのままペタンと地面に落ちた。


「ふふっ、それでは次の魔法です《心象詠唱》『迫る断崖絶壁』『初代勇者をも苦しめた山の王者』『今この地に見参せよ』〈山脈の再襲来(コール・ホーク)〉」


「ケェェェエン!!!」


「……『ホークレイン』!」


 声が震える、身も震える。なんなら戦いたくないぐらいに強いのはココアの伝記で知っている。


 山がこのフィールドを侵食する。


「ホークレインは有名ですからね、それでは、やってくださいな」


 ホークレインの攻撃を避け続けることは出来なかった。


 何本もの羽が刺さり、致命傷は回避出来たが……他はダメだった。


「……なかなか辛そうですね」


「……まだ、負けん!」


「いい気概です、気に入りましたよ」


「……っ……まだ消えないのか……?」


「もう、時期に」


 そう言って、数分後に確かに消えた。


 消える前の最後の一撃は太陽が爆ぜたような凄まじい威力の一撃だった。


「さて、私が召喚できそうなのはこれが最後ですかね《心象詠唱》……『照りつける熱砂の大地』『至高の種もまたここで潰える』『己の意志のみで動く竜が骸』〈砂漠の再襲来(コール・ボーン)〉」


 フィールドはまた形を変えた。

砂漠地帯、熱い太陽、そして、竜の骸。


「やっぱり『骸骨竜(スカルドラゴン)』……か」


「もう、バレちゃいますよね」


「……もちろんですよ」


 心臓部の紫の魔石を壊せば勝ちなんだ……!


「さぁ?頑張ってくださいね」


 竜と戦うのはこれで2度目、竜が戦うのを見るのはこれで3度目。


「だからといって勝てるわけじゃないけどな……」


 だが、相手は脳のない骨なんだ。


 それに、壊さなくても逃げ回ればいずれ勝手に消えてくれる。


 幸い遠距離攻撃も無いようで、受け流し、だましだましポーションを飲んでやり過ごした……が、やはり傷を負ってしまった。


 もうポーションも使い切ってしまった。

ここまで来るのにもいくつか使ってしまったし……クソっ!


「……さすがです、英雄を超えただけのことはあるようですね」


 満足気な顔で、剣を片手に俺のもとにやってくる。


「……っふぅ……ぜェ……フゥ……」


「……息も絶え絶えですね、まだ、私の攻撃は続きますよ」


 あぁ、どんな攻撃を仕掛けてくるのだろう?


「《心象詠唱》発動。

『私はもう何も失わない』『私はもう何も諦めない』『私はもう戦いから目を背けない』『私はもう憧れた存在に届いたのだから』〈追い求めた英雄の背(クロン ウェイパー)〉」


「……最悪だ……ははっ」


 見覚えがある顔が頭の中にチラつく。


『英雄様?』


 そんなことを言ってこの世を去ったあの盗賊の顔がチラつく。


「……もう限界なんですか?」


 ニヤリと笑う彼女に返す言葉もない。


 『限界』だ、もう俺の体はまともに動いてはくれない。


「シガネ、俺から離れて、1人で森へ帰っておいて」


「へ?何する気なの……!?」


「いいから!魔力は十分に託したでしょ!?早く!」


「……生きて帰ってきなさいよ?」


「死ぬ気はない!」



 その後、しっかりと離れてくれた。


「……精霊さんかな?何をする気かな?」


「指輪を……外す」

《アイテムボックス》

・第10層の輝石

・第20層の輝石

・箱舟の破壊剣

・パックのローブ

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