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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、どんな者にでも手を差し伸べる優しいものだ
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30層へ足を運ぶ

「……よし、今日も行くか」


「行ってらっしゃい、カルカトスさん」


「はい、行ってきます、アリーさん」


「行こっか、カル」


『あぁ、行こう』


 いつも通り、宿から出て、ギルドへ向かい、名前を書いて迷宮へ向かう。


 迷宮に行く前に皆最寄りのギルドへ『迷宮探索へ行く』ことを紙に書いている。


 帰ってこなかったりした場合、誰が帰ってきていないかのチェックの為だ。



「……やっぱりこの剣重いな……」


箱舟の破壊剣(ノア・ブレイカー)』は、俺が思うよりも何倍も重かった。


 持ち上げると言うよりも引きずるようにしか動けない。

振ることが叶ったとしても、その勢いに肩が外れそうになる。


「レベルがもう少し上がってからだな」


 また『鑑定所』へ向かうのもいいかもしれないな。



「……さぁ、着いたぞ、暗い森」


 本物の彼女たち2人のクイズを答え、答えると直ぐに次の階へ行けた。


「ここは王都?」


 街並みを眺めながら、歩き回る。


 憧れの本の世界を今歩いている。

エンも連れて来たかったな。


 本当に何も無いまま、30層へ到達出来た。


「……来たね、名乗らなくても大丈夫、私には『解る』からさ」


 1人の可憐さを感じる女性が待ち構えていた。

光り輝く金色の髪、水のように透き通った青い目。

耳には黒の中に赤い竜……まるでクロンのダガーの模様のようなピアスを両耳に着けた女性がいた。


「……私から名乗らせてもらうね、私の名前は『マイン ウェイパー』君が、クロンさんを超えた英雄だね?」


「……はい、俺の名前は『カルカトス』20層の守護者を超えた、冒険者です」


「……彼の願いは叶ったってことかな?」


「そういう事ですね、彼の息の根は止められてませんから」


「……そう、ありがとうって私が言うのもおかしいけど、お礼を言わせてね『ありがとう』」


「……どういたしまして」


「そんな君にまたひとつこの迷宮の、我々について教えてあげよう」


「……なんですか?」


「私達が何かしらの未練があってここにいるのは聞いただろう?」


 確かに聞いている。

無言を肯定とし、目を見つめ返す。


「なら、もしも未練があるまま命が尽きたら?」


「……?蘇るとか?」


「うーん、まだまだ優しい答えだね……正解はモンスターになる、だよ」


「モンスター……?」


「未練と欲に飲み込まれた、ただ敵を殺すだけのモンスターだよ」


 彼女の未練は恐らくクロンを……いや『英雄』を超えること。


 そして、彼女の『英雄』を超えた俺が彼女の言う『英雄』になるのだろう。


 ……あれ?つまり彼女に殺されたら、未練は解消され相打ち、殺されなかったらモンスターになった彼女に殺される……?


「詰んでる?」


 同じ思考が頭を巡っていたのか、シガネがそう問いかけた。


『……多分』


「……ま、私の未練はクロン ウェイパーに出会えなかったこと、かな?」


「……ほ、他になにか未練は?」


「え?……物語の最後を書けなかったことかな?」


「……あ、なるほど」


 なら、彼女と戦い、その物語の先を見ることが出来れば……未練は解消され消える……

いや、そんなに上手くいくか?


「……あ、そうだ、握手してください」


「ん?あぁ、いいよ、是非是非」


 ニコニコと俺の要望に応えて、握手をしてくれる。


 女性らしい小さくて、綺麗でスベスベの手。


「私のファン、かなりいてくれてるんですね」


「同じぐらい、クロンも有名ですよ」


「ははっ、ならこの迷宮のギミックバレてましたか?」


「まぁ、俺がマインさんの本を愛読してるからわかったのかもしれませんけど……俺には簡単にわかりましたね」


「なるほどなるほど……ところでカルカトス君」


「?はい?」


「やろうか?」


 黒と白が螺旋状に描かれた剣を抜く。


「……っえ?」


「私の名はマイン ウェイパー。

30層の守護者であり英雄の背を未だ追い求めるもの!

私の綴る魔法と世界に勝るもの無し……!」


 剣を構え、そう声高らかに名乗りを上げた。


「すみませんが俺は逃げますからね!」


 流石に1人で守護者クラスの相手に勝てると思うほど愚かじゃない。


「それを、許すとでも?『大地の障壁』『行く手阻む地の盾』自然魔法〈大地の壁(アース・ウォール)〉」


 あぁ、この光景、初めてアライトさんと戦った時と同じ感じだ。


 だが、ここは30層、助けを求めるにはあまりに深すぎる。


「やる気になってくれたようで何よりです

それでは始めましょうか、英雄」

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