約束の時間【カルカトス】
「……ふー、読み終わった見終わった……あ、もうそろそろ時間だな」
「?何か用事あったの?」
図書館の掛け時計を見ながらシガネがそう問いかけた。
「うん、ギルドマスターに、少し呼ばれててね」
本を戻しそそくさとギルドへ向かう。
「……お、来てくれたか、まぁ座ってくれよ」
「失礼します」
「……さて、君を呼んだ理由だけどね、君は随分と頑張って迷宮攻略をしてくれているみたいだよ」
「は、はい」
「そんな君にご褒美だ」
「……ご褒美、ですか?」
「あぁ、これさ」
小さい小袋、お金を入れる財布より少し大きく、腰に着けて薬草を入れる小袋に似ている……が、1つ、この形に見覚えがあった。
「……こ、これ『アイテムボックス』……!?」
「!へぇ、知っていたんだね、そうそう、アイテムボックスさ、話が早くて助かるよ
……とは言っても、あまり希少なものでは無いんだけどね」
アイテムボックスとひとくちに言ってもかなり種類は存在する。
数種類しか入れられないものや、何種類でも入れられるものなんかもある。
だが、容量は殆ど無限に等しい。
「だいたい4種類しか入らないけど……まぁ、魔石を拾ってくる分にはきっとそう不便はないだろう」
「そ、そうですね……ありがとうございます」
「うん、これからも攻略の方に励んでくれ」
「はい!」
「あ、あと、もう少しの間このギルドに残っていてくれないかな?」
「?はい」
ラッキーだ、いいものを貰った。
ホクホク顔でギルドマスターの部屋を出てギルドのアリーさんや、他の冒険者がいる受付に行くと、何やら人が集まっている。
「……なぁ、聞いたか?」
「ん?何がだよ」
「あの、迷宮調査パーティーの『シーカーズ』が、30層の守護者をみつけたってよ!」
「!まじか!じゃああの人集りって!?」
「あぁ、かもな!行こうぜ!」
そんな話を都合よくしている人たちの話を聞き、ある程度察した。
流石は『シーカーズ』主に盗賊なんかの身軽なもの達で組まれたパーティーで、魔法使いもいるが、並の剣士よりも動けるなんて言う、速さを売りにしたパーティーだ。
週間冒険者の人気ランキング『迷宮探索部門』でも、何度か1位や、それに近い順位を維持している。
彼らの人相もよく、人気のひとつと言えるだろう。
その掲示板の紙を見る……のは難しそうだ。
少し時間が経って人が減った頃に見に行ってみる。
『30層の守護者、名はマイン ウェイパー
彼女はシーカーズいわく人と見て良い存在
みんな知ってる通りの有名な小説の著者
彼女は20層の守護者を超えたものとしか戦わないそうだ』
時間潰しに見てみる、そして、恐らくこれは俺の事を指している……
あの、憧れのマイン ウェイパーに俺が、俺だけが戦うことを世界で唯一許された。
頬が緩むことを許して欲しい。
ニヤニヤしてると扉が開いたので顔を背ける……仮面付けてるのにな。
「おい!あれみろよ!シーカーズだぜ!」
「うお!本当だ!」
その言葉に首がもげそうな勢いで開いた戸の方を向く。
「いでっ!」
「な、何やってるの……カル」
「やぁやぁみなさん、お?もしかしてあの件についてみんな知ってるのー?」
「もちろんだぜ!」
「見た見た!すごいよ!シーカーズ!」
「あっはっは、ありがとありがと、実はね〜今日はちょっととある人物に用があってね〜……カルカトス君いるかな?」
「……カルカトス……?あ!10層と20層の守護者を倒した新人?」
「そう、それそれ、いるかな?」
シーカーズからの名指しだ、手を挙げて答えよう。
「ここに、いますよ」
「おー!君が仮面の剣士、期待の新人なのに謎に包まれてる面白い男、カルカトスだね!」
「肩書きそんなに多かったですっけ?」
「ははっ、有名になったら増えてくものさ、自己紹介しようかな?俺は」
「シーカーズのリーダー『クリーズ』さん、そしてあなたが盗賊兼弓術士の『フェルズ』さん、そっちの女性は盗賊兼魔法使いの『ツェヅ』さん、それとフードを被っている人が盗賊兼調教師の『ワイマ』さん、それと、白い衣服のあなたが盗賊兼白魔法使いの『フルーナ』さんですよね、知ってますよ!」
「わーお、私たちのこと良く覚えてるね」
「ファンですから!良かったら握手してください!」
「ははっ、俺でよければいくらでも」
快く手を差し出してくれるクリーズさんの手を取り固く握る。
「ふふっ、なんというか嬉しいな」
「そうねー、こんなに若い子にも私たちのこと知ってる子いるんだね〜」
「それな」
ハッハッハと笑うシーカーズ。
仲がいいのも彼らが人気の理由だ。
「っと、本題に入らないとね、よければギルドマスターの所に行こう」
「あ、待っておくように言われてたのはそれが理由なのね」
シガネが納得したようにそういった。




