第5章 遥か世界の彼方で
「『暗き森の戸』」
「正気!?」
「『その戸の先へ私は行けぬ』『声を上げ私は願う』『命を守れと』〈暗き森の盾〉」
黒く薄暗い夜のヴェールが私を纏う。
襲いかかる木の根を全て弾き飛ばす。
「…………は?」
ニーナが訳が分からないという様子でそう言った。
「この魔法は、私だけの、この場所でしか使えない『逃げ』の魔法だ、さらばだ、私たちは帰るとするよ」
「……その魔法、いや、この森の仕組みにいつ気づいたの?」
「別に、何も気づいてないよ、ただ、なんて言うのかな?なんで君たちは襲われないのかな?って、ペナルティなしになんで戦えるのかなって?」
「そ、そんな拙い情報から命を賭けたの?」
「?さては賭け事した事ないな?賭け事って言うのはな、賭けるものが大きければ大きいほど、得られるものが大きくなる」
「そ、それぐらい知ってるわよ!」
「そして、本当に度胸がある奴には、不思議と運が回ってくるわけだよ」
「……ここは魔法を産んだ森よ」
降参といった様子で説明を始めた。
「なるほど、それでこんなにふざけた魔法が使えるのか、魔力の少ない私でも扱える良い魔法だ」
「……この後、どうするの?この先へ行くの?」
「いや、他のみんなはおそらくこれに気づけないからね、1度帰るよ」
「どうやって?」
「『思い出の世界』『未知の大陸』『世界がずれる』『足を揃え』『家へ帰ろう』〈多重瞬間移動〉」
「……なるほどね、コツを掴むの早いわよ」
その悔しそうな顔をしてい彼女の勝ちなのだがね。
さて、ここからは後日談となる、私たちは国へ帰り、2桁となった我々を見て、国王は大陸への進出は早いと判断した。
彼らとは今でも時々出会い、仲良くしている。
あの扉の先が何なのか、私は知らない。
恐らく生きている間に見ることは無いだろう。
だから、私はこの本を未来へ残す。
「この本を読み終えた君へ
読んでくれてありがとう、そして、続きは君が紡いでくれ」
上手く魅せきれず若干歯痒い。




