表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、どんな者にでも手を差し伸べる優しいものだ
84/499

第2章 大睡蓮魚

「……ど、どうする?あの化け物」


「……スルーして欲しいな、あの化け物は結構戦い慣れてそうだよ、こことは違う別の場所へ行くのがいいと思う、幸い地上にはやって来ないみたいだからね」


 実際に戦った私がそう言ったのなら異論などはなかった。


「……なら、そうしよう、俺としても、この盾で止め切れそうにないからな」


 縦に長い盾を持つ男がそういった。


 彼のことをバカにする訳では無いが、あれじゃ受けられない。


「……わかった、あの湖は避けるとしよう、なら、どうする?」


「……また、私が先を見てこよう」


「んー?どうしてです?皆で進んだ方が安全じゃないですか?」


 ミストさんがそう質問をして、何人かが頷くのが見えた。


「1つは大睡蓮魚の諦め具合を見ること、最後に奴が見た人間は私だからね、その私が通れるかどうか

そして、もう1つが、先がどうなってるかの確認だ、このままだと今夜の野営先も上手く定まっていないだろう?」


「な、なるほど?皆さんいいですか?」


 ミストさんが皆に聞くと結果私一人で行く事となった。



「……?無反応……か」


 嬉しいことであるが、少しばかり拍子抜けと言える……


「この湖の外に出た訳でもないし……また睡蓮は浮かんでいるのか」


 ふむ?まるで分からない



「……ははっ……なんの冗談だい?」


 誰かに言った訳じゃない、むしろ、誰かに言っているのならどれほど良かったか。


「何だこの険しい山道……!?」


 別に私が登る分には大したことは無い……()()()()()()()()()だがね。


「……と、とりあえず戻ろうか」


帰りに見えたひとつの影で、また1つ私は心が折れかけた。



 というわけで戻ってきたが……


「おかえり、クライン、どうだった?」


 アーサーが迎えてくれた。


「あぁ、そのとこだが1つ目に大睡蓮魚は襲ってこなかった、まぁ、それは君たちにもわかっただろう?」


「まぁ、あんな化け物がいたらすぐにわかるからな」


「もう1つが……その、山岳地帯だ」


「……なに……?」


「?それのどこがそんなに大変なんですか〜?」


 マロンさんが軽い調子で聞いてくる。


「……我々がもしも、このアーサーパーティー1組なら大したことは無かっただろうね

だが、今、我々は団体で、100を超える人数での行動をしている、山岳なんかの険しい山道では休むのですら一苦労、それに……なぁ、皆『勇者ココア』の英雄譚を読んだことはあるか?」


 一見なんの意味もなさそうに聞こえるこの質問に、皆は首を傾げていた。


「……『ホークレイン』って、知ってるかな?」


 その言葉を聞いて、察しの良い者達は顔を青ざめさせた。


「ま、まさかっ!?」


 誰かがそう声を上げた。


「そのまさかだ……帰る途中に確かに見た、あれは間違いなく『ホークレイン』だ」


 勇者ココアの英雄譚に出てくる山岳地帯の強大な鳥『ホークレイン』は勇者ココア一行を大いに苦しめた敵だ……我々が戦えば間違いなく損害は免れない。


「……さ、山岳地帯もパスだ……!」


「俺も、そうして欲しいな」


「私も!」


「……うん、俺としても、そこは通れないな」


 アーサーがそういうと皆安心したような顔で息を吐いた……私もだ。


「……なら、今日はここで簡易的なキャンプ地を作り、ここで泊まるとしよう」


「……あの山の先に、果たして明るい未来は待っているのか?」


 ファーヅさんがそう、深刻そうな顔で聞いてきた。


「……わからないが……エルフなら知っているだろう?勇者ココアの話は」


「……あぁ、我々の先祖であるミーヤ ノエルもまた、魔王討伐に参加をした1人だからな……」


「なら、迂回をする私の判断は間違っていないはずだ……」


「あぁ、どんな未来でも、お前を呪ったりはしない」


「ありがとう、ファーヅさん」


「……例には及ばない」


 やはり、彼とは仲良くなれそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ