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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、どんな者にでも手を差し伸べる優しいものだ
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第2章 睡蓮の浮かぶ湖で

「……うむ、ここの水は飲めるな……それどころか美味いな」


 アーサーがそう感想を述べた。


「美味いか……それは良かったな、ここの湖を中心とした都市を築くことも叶うやもしれん」


 ウォールさんは意外と先を見据えている。


「この花も綺麗だしねー!」


 今は我々アーサーパーティーが一足先に調べている。


 マロンさんが花に近づく。


「睡蓮って花だ、綺麗だろう?」


 ファーヅさんがそう教えてくれた、やはりエルフ、植物知識に関しては右に出るものは少ない。


「そうっすねー!一輪頂いて……ッ!?」


 花に近づき、手を差し伸べた瞬間、ギザギザの牙の生えた丸い魚が飛び出した。


 だが、流石はマロンさん、身を翻し、避けることに成功した。


「……睡蓮ってこんなに怖い花なんすかっ!?」


「いや、睡蓮はこんな花じゃない」


 冷静にそう告げるファーヅさん。


「なら、なぜだ?とりあえず斬るぞ?」


 両手持ちの大剣を構え、あっという間に距離を詰めたウォールさんが振り下ろす。


 湖が割れたかと思うほどの衝撃と共に血と花びらを撒き散らしながら魚は死んだ。


「……名ずけるなら『睡蓮魚』でしょうか?」


「いいね、それ」


 陸地から濡れるのを避けたミストさんの発言に同意する。


「あ、危なかったっす、危うく顔たべれるところでした」


「アンタ顔綺麗なんだから気をつけろよ?」


「き、綺麗っすか?」


「あぁ、アタシよりかは綺麗だね」


「そ、そっすか?ウォールさんに言われると照れるっす」


 あそこの2人は仲良くなれそうだ。


「つまり、あれらは全てその『睡蓮魚』という訳か……射撃の許可を」


「あぁ、よかろう、全部撃ち殺せるなら、撃ち殺せ」


「御意」


 矢を連続して3本放ち、全てに当てて見せた。


 花から血が流れ、矢の刺さった魚が浮かんだと思えば、矢を重心に沈んで行った……相当重いようだ。


「ふむ、やはり全てその『睡蓮魚』らしいな……ッ!?」


 ゴゴゴと地鳴りのような音と共に、湖が盛り上がった。


「……は?」


 誰がそういったのだろうか?パーティーの誰か?それとも陸にいる探索隊の誰か?


 それらはもうどうでもいい、目の前にいるのは山か、島か、はたまた生き物か……


「『大睡蓮魚』……!?」


 ミストさんのその声が私たちの時間をもう一度刻みさせてくれた。


「総員退避!敵は所詮魚だ!陸へ!森へ!船の方戻れ!」


「ミョォォオォォ!」


 魚が吠えた……大睡蓮魚が、あの規格外の『ナニカ』が、『生物』であることを証明する産声を上げたのだ。


 即座にUターン……はできない、皆が逃げ切るまでの時間稼ぎ程度はするつもりだ!


「アーサー!」


 今は緊急事態だ、丁寧に指示を出してやるつもりは無い!


「!なんだ!?クライン!」


「我々はここで退避までの時間を稼ぐべきと判断!

故にあの大睡蓮魚を、足止めすることにする!」


「!?し、正気っすか!?」


「正気だ!逃げたいなら逃げろ!私は相当のことでは死にはしない!置いていっても構わない!」


「っ!!その言い方は卑怯っす!置いてけません!」


「アンタ!漢気のあるいい『漢』だね!アタシも手伝うよ!」


「……あんたに死なれると、結構残念だ、手助けしよう、事の発端は俺でもある」


「なら、指示を出した俺もだな」


「わ、私は魔法で皆さんを支援します!」


「とりあえず、私は目を奪いに行く!異論は!?」


「ない!行けっ!」


「了解した!風魔法〈水翔みずかけ〉そして〈早翔はやかけ〉!」


 水の上に風の膜を貼り、その上を走る。


 風を強く起こし、加速もする。


「おぉ!凄いっす!」


「だがあの山のような敵を追えるか?」


「風魔法!〈空駆そらかけ〉!」


 私が『不死身』と呼ばれた理由、それは私を殺す術を持つものを私の敵として現れたことがないからだ。


 空中で超高速、高機動力のもと駆け回る。

私のもつ、最大の才能だろう。


「目潰しを……っ!?危なっ!?」


 目ということは口が近くにある。


 その図体に似合わない鋭利で素早い『水刃すいじん』の魔法。


 風を起こし、ありえない動きでそれを回避する。


 初めにやつの向いていて方向とは180度違う方向を向かせ、仲間の逃走を手伝う。


 この魚も私も見くびっていないからか、目を離してくれない。


 その間にも何度も魔法を繰り出してきた辺り、この魚は戦い慣れているのかもしれない。


「おぉぉい!皆逃げれたぞ!!!」


 ウォールさんがそう大声で伝えてくれた。


「わかりました!!!」


 私も飛び去り、湖を離れ海へ戻った。


 私ひとりで事足りたようだ……良かった。


「ミョォォオォォ!!!!」


 逃げる私を恨めしそうに背中に叩きつけられる怒号。


 大睡蓮魚というヌシの存在が顕になった。

【睡蓮魚】


 本の内容にのみ存在されるいわゆるフィクションの生物。

 睡蓮の花に擬態した凶暴な肉食魚

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