第1章 旅立ち【クライン】
私の名は『クライン ウォーカー』24歳の盗賊だ。
まぁまぁベテランと言える力は持っている。
先日【ガルワール王国】の国王が、こんな事を民草に伝えた。
ある日を境に国の様々な街に看板が建てられた。
『この地位外の新天地へと歩を進める
新天地の開拓、及びその地の状態や安全確保の為の人材求む
参加者には多大なる報酬と名誉を与える
国の聖騎士も数名参加する』
この話を聞いた時、この看板を見た時に、私は参加することを即座に決めた、なぜか?
それは私が生存に向いていたからだ。
『盗賊』という職業は主に息を潜めて敵の隙を着いたり不意打ちを狙うものだ。
時に斥候としても、力を尽くす。
そんな鉄砲玉と言っても過言ではない私の職業で、どうやら私は生き延びることにとてつもない才能があった。
新しい世界、未開の地、何よりも金、それらに興味を示し参加の旨を国に伝えた。
「ここに集まったものたちが!今回の遠征に参加するものだ!
これより我々は東へ海を越え、その先の大陸の調査を行う!
今日の今より!我々は一蓮托生の身となり、お互いに支え合うのだ!」
「「「おおおぉーー!!!」」」
大勢の参加者が『聖騎士長』である『アーサー グラウンド』の激励の言葉に歓声や雄叫びをあげた。
彼は聖騎士団団長であるから参加しないと思っていたがまさか、聖騎士長サマまで参加しているとは。
参加者人数158名
その中には有名人なんかもちらほら見かける。
私もまたそんな有名人のひとりだ。
どんなに大変な戦場でも、1人生き続けていたことから『不死身』と呼ばれている。
まぁ、普通に死にはするよ。
長い長い船旅のその先、東の大陸が見えた時には、この探索隊で『初めまして』の言葉はなかった。
大陸が見えた日の夜、我々は皆、いつにも増して酒を飲み交わした。
女も男も関係なく、飲み散らかし、素面のものは片付ける。
女性陣も男性陣も別々の場所で眠り、その間には『聖騎士長サマ』が夜這い等を起こさないように監視している。
まぁ、お互いが恋仲であることを知っていれば、彼はいい笑顔で
「行け……人の恋路を邪魔する趣味はないからな」
と言っていた。
国と同じで聖騎士達は大変そうだった。
巨大な戦鎚を持つ大男も、ヒョロりとした眼鏡をかけた男性も、男に勝る意思の強い女も、静かな女性も、あの聖騎士長は、話しかけて仲良くなっている。
彼はいわゆる『主人公』というものだろう。
私はいつも通りお酒を飲んでるさ。
「おーい!ヴァルガの奴18人抜きだってよ!誰か行かねぇのか!?」
若い剣士が食堂……いや、今は酒場だな、そこでみんなに声をかけると、ざわめきの後何人か立ち上がり戦いに行った。
ヴァルガと言うと巨大な戦鎚を持つ大男だ。
『島割りのヴァルガ』なんて2つ名があるほどの怪力の持ち主だ。
私か?私は行かないとも、あいにく今日は素面掃除当番に当たっているからね。
初日っからたらふく飲んでいるのに酒が無くならないのは、個人的に何リットルも持ってきている奴がいたり、そもそもたらふく船にあるからだ。
素面掃除当番とは、初日の荒れ様を見かねた聖騎士長サマが少し焦った顔で
「……え、えぇーっと……掃除は日替わりでしてもらう!そのものはその日酒の飲み比べ等に参加することは許さん!」
と言っていた。
そんな話を聞いた後、皆でこう名付けた『素面掃除当番』と。
そして、私が今日の当番なのだ。
「ウォーカーさん、掃除面倒っすね〜」
この男はさっき皆に飲み比べの現在状況を伝えていた若い剣士、名前は『ワイル ワーク』
彼もまた大飲みではあるが、今日は素面掃除当番に当たっているため、観戦や先導に勤しんでいた。
そして、今は手袋をつけて落ちた食べ物なんかを拾っている。
「あぁ、そうだね、まぁ、やらなくてはならないからね、あ、そっち頼むよ」
「了解っす、にしても、明日でこの船旅も終わりっすね〜」
「そうだね、長いようで短かったよ」
「本当にその通りっすよね」
「だが、明日からは貴殿らにも頑張ってもらうぞ!」
後ろから聖騎士長サマがガシッと肩を掴み声をかける。
「えぇ、斥候なら、任せてください」
「あぁ、期待しているぞ『不死身のクライン』」
「や、やめてくださいよ……普通に死にますからね?」
「ははっ、なら尚更すごい事じゃないか、君を『不死身』と比喩する他なかった訳だ」
確かに、物は言いようだ。
「お!確かにっす!アーサーさんいいこと言いますねぇ!」
「そうだろう?とりあえず、掃除だ掃除!」
「うーっす!」
「はい」
明日、我々は東の大陸へ……足を踏み入れるのだ。
【ガルワール王国】
この本の架空とされている国の名前。




