〈21層〉美しいこの世界
「……凄いな」
偽の太陽には温かみを感じる。
地上が身を切る寒さなだけに身に染みる。
垂れ下がった樹木、透明で美しい湖、浮かぶ花。
地上には青く美しい、水面には薄い桃色の花々が。
「だけど……」
「「あの花も偽物だね」」
シガネと同じことを言う。
「やっぱりそうだよね」
「……精霊がいない、つまりあれは造花みたいなもの……?」
「偽の自然……?」
「そこまで来ると自然と言えるか怪しいけどね」
「あ、確かに」
だが、この幻想的で美しい世界を……見たことがある気がする。
「どうしたの?カル」
「いや、なんでもないよ」
「?そう?ならいいわ」
そういったシガネの横を通り、湖の浅瀬に足を踏み入れる。
「……カル?」
「………」
ザブザブと音を立てながら、花に近づく……その瞬間、その花が魚になり、顔に目掛けて襲いかかってきた。
「カル!?」
そんな声をシガネがあげた瞬間、その魚を切り落とす。
「……睡蓮魚……討伐」
「か、カル……?知ってたの?」
「……?なんで知ってるんだ?」
「……へ?」
「いや、なんかわかったんだよ、この魚がどんな生き物なのか、どこに隠れているのか、どういう名前なのか……この生き物にあったことがある……?」
「ど、どういうこと……?」
「わ、わからないよ」
そして、睡蓮魚を後3体狩った。
目の届く範囲にいるのはあの1匹で最後だが、手は出さない。
「……あれは倒さないの?」
「うん、あれを倒したらダメだからね」
「……なんで?」
「……分からない」
「……後で街に戻ったら調べ直そうね」
「……だね」
その後も何故か見た事があるおかげでトントンと進めた。
22層は山岳地帯、23層は水の無い砂漠、24層は鬱蒼とした森の中、25層は魔界のような黒い森。
今日行けたのはここまでだ……随分進んだ。
何故か、各階層の『禁止事項』を理解しているおかげで本当に楽だ……
いや、そもそもこの階層ごとに『禁止事項があること』を知っている時点で幾分かおかしい。
「さて、図書館に行こうか」
おおよそ宛はついている。
きっとあの本だ。




