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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、絶望を切り捨てるものだ
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〈20層の守護者〉クロン ウェイパー

「……よぉ、約束通り来てくれたかい」


 ニヤリと片手を上げながらそう告げた。


「あぁ、久しぶり……なのかな?クロン」


「……槍じゃないんだな」


「あぁ、剣の方が、俺にあってるからな……行こうか、皆」


「……いいだろう!『20層の守護者』がお前達を倒そう」


「〈20層の守護者(セカンドガーディアン)〉って巷では呼ばれてるんだぜ?」


「!〈20層の守護者〉か……悪くないねぇ、なら、俺はその肩書きを借りるとするよ

さぁ、来い探索者、俺の名はクロン ウェイパーだ、ウェイパー盗賊団団長にして、最後の団員」


 片手剣を抜く。


「あぁ、俺はカルカトス!ただの冒険者だ」


 剣を抜く。


「やろうか、英雄《死霊乱舞(ネクロパレード)》」


 地面から手が飛び出る。


「『死霊(アンデッド)』!」


「……まぁ、そうかもな」


 少し物悲しげな顔で、そう答える……?

女が1人、男が2人の人型のモンスター。


「……なるほどねー、こりゃああの人も苦労するわな」


 頭を押え、苦い顔をする。


「?何の話だ?」


 フウボクが問いかける。


「んや、こっちの話さ、フウボク……おらぁ!行くぜ!お前ら!」


 死霊達に声をかけるも帰ってくるのは静寂。


「……何やってるのかな?」


「……スノウ……だったな、竜のお嬢ちゃん、悪いが秘密だ」


 地面に腰を下ろし、低い目線からこちらを眺める。


「……本当に何やってるの?」


「わからんが、とりあえずこの死霊達を倒そう」


 彼らはそこまで強くはなかった、なんというか……動きが単調?いや、死んでるから当然かもしれないが。


「……あー……やめたわ」


 死霊達が、地面に溶けるように消えた。


「何がしたいんだ……?」


「……俺はどうも、誰かに指示をするのは得意でも、その結果を見るのには慣れていないらしいわ」


 片手剣はもういつの間にか収めている。


「だから、俺は、俺の相棒達の力を借りる《真実の瞳》《過剰な悪戯(トラップマスター)》さぁ、来い」


 やはり、クロンは後方支援や援護が得意らしい。


 近接戦が得意なら、さっさと来ればいいものを、ああやって攻めあぐねているじゃないか。


「……どうするの先輩?攻めるっ!?」


「グリム!?」


 彼女が俺の方に近付いた瞬間、地面が爆ぜた。


「……まぁ、こういう能力さ、昔は……これを簡単に打ち破ってきた2人の敵がいてな」


 こっちの事などそっちのけで、語り始める。


「やっぱり威力は微妙だな……かすり傷が限度……ドッキリグッズじゃあるまいし……お前の力も、弱くなってしまうんだな『アイン』」


 『アイン』とは誰だ?グリムの怪我は大したことは無い……本当にかすり傷程度だ。


「あの2人は強かったよ、白い魔族に赤い鬼……今思い出しても、恐ろしく強かったよ」


「拙者らは無視か?」


「まて、フウボク、忘れたか?クロンは心を読める、罠の設置先なんていくつだって用意できるんだ」


「よく覚えてるな、昔、その2人は自分の心を偽って俺の罠を避けた……はー!有り得ねぇよなぁ!」


 心を偽る……!?そんな芸当どうやって?


「さぁな?俺にもわからんわ」


 そうか、読まれていた……隠せ隠せ。


「うーん……さて、君たちも、どう動く?」


「この罠について、対策がないとでも?スノウ、行け」


「……了解『山を剥ぐ豪雨』『地を飲む大波』〈衝撃波(ウェーブインパクト)〉!」


 無属性魔法が、この世には存在する……が、彼女のソレは、水魔法で再現したオリジナルだ。


「……なるほど、罠ごと地面を剥いで……フウボクが詰める……うんうん、悪くないね」


 クロンの言う通りだ、だが、奴は心を読む時、いつもこちらと目を合わせていた。


 あれだけの凄い能力、デメリットがあるとすれば『目を合わせる』こと。


 地面を剥いで巻き上がる砂埃、姿は確認し難い。


 仮説でしか無かったが、今、現に奴はひとつ読み間違いをしている。


「『光は優しくあなたを照らす』『光は闇をも顕にす』『全てを包み込む時』『光は狂気と化す』『そして敵を突き穿つ』〈狂気の光線サンライトバーンレーザー〉!」


 迷宮に響く、グリムの詠唱。


「んっ!?」


「……や、やりました!?」


 見事な魔法だ、前の無差別広範囲から、局所的に敵を攻撃する、団体戦でも扱える魔法だ。


 おかげで、フウボクにも当たってはいない……そう、クロンにもだ。


「いやぁ、中々いい攻撃だね、生きててホッとしてるよ」


 砂埃の向こうで、立ち上がっているクロンが服をパンパンと叩いている。


「……嘘……避けた?」


「……まぁ、感で動いたんだけどね?『グウェル』の奴の感が鈍ってなくて何よりだよ」


「……やばいな」


「次はどうする!?探索者!」


 今の状況を一言で表すなら、そう『絶望』


「絶望……?それを乗り越えての英雄だ!なると誓ったのなら、貫き通せ!それだけで、それを見ただけで俺は十分さ!」


 絶望が心底楽しみそうに笑うのだった。

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